オー・ブラザー! : 特集
新作「オー・ブラザー!」公開前に
コーエン兄弟全監督作の「舞台」をチェック!
コーエン兄弟はアメリカ深部を目指す
編集部
コーエン兄弟には、東部育ちのくせに(生まれはミネアポリス)、中西部や南部のアメリカの田舎、アメリカ深部を描く、という印象がある。が実際はそんなことはない。ロサンゼルスもニューヨークも舞台にしている。しかしよく見ると、これらの都会を舞台にするときは、常に時代が現在より前に設定されている。一方、アメリカ深部が舞台のときには、とくに時代設定がされず、現在であるように見える。
これは、コーエン兄弟が常に「アメリカの原風景」を描いているからではないか。それぞれの舞台の「もっともアメリカらしい風景」が現れる時代を彼らは選んでいる。だから、彼らの作品はアメリカ深部を目指しているという印象を与えるのだ。
しかも、新作「オー・ブラザー!」は彼ら自身が「オデュッセイア」が下敷きだと発言している。この「放浪のすえ故郷に帰るヒーロー」の物語は、そのまま、彼らのアメリカ原風景を巡る旅が、総決算されて振り出しに戻ることを示しているのではないか。この仮説を確かめるために、全監督作の舞台をチェックしてみよう。マップ上の作品タイトルをクリックすると、それが確認できるはずだ。
彼らはまた、常に彼ら流の「ジャンル映画」を描いてきた。「ミラーズ・クロッシング」はギャング映画、「赤ちゃん泥棒」はスクリューボール・コメディというふうに。そして次回作「The Man Who Wasn't There」は、第1作「ブラッド・シンプル」と同じフィルム・ノワール。しかもモノクロ映像で描かれる。ここでも輪は一巡するように見えるのだ。
もともと優れた映画とは、ある種原型的な風景を映し出すものである──そう考えれば、彼らの辿る2つの道すじは、実はひとつの道だともいえるのだが。