ロード・オブ・ウォー : インタビュー
世界の紛争地域に突然現れて戦争を創り出し、巨万の富を得る武器商人たち――。武器売買というビジネスの実態を描いた意欲作「ロード・オブ・ウォー」は、人権擁護団体のアムネスティ・インターナショナルが、本作で描かれるていることに興味を持ち、ワシントンで試写会を主催するなど、各国で話題を呼んでいる。そんな本作の日本公開を前に来日したアンドリュー・ニコル監督に、話を聞いた。(聞き手:わたなべりんたろう)
アンドリュー・ニコル監督インタビュー
「この映画を作ったのは、武器商人に対して怒りがあったからです」
――タイトルバックが印象的ですが、アイデアはどこから?
「タイトルバックでは銃弾の旅を描いています。工場で作られた銃弾が、さまざまな人の手や輸送手段を渡って、アフリカの内戦で1人の若者が撃たれるまでです。フランスのコマーシャルを主に製作している会社が作ってくれたのですが、これから始まる映画の世界観をよく表していて、とても気にいっています」
――武器商人を主人公にしたのは?
「武器商人が主人公の映画を作ったのは、彼らに対して怒りがあったからです。私は今までの自分の映画の主人公を愛していますが、今回はそこが大きく異なるところですね。武器商人は殺人に無自覚で、その点にとても怒りを覚えるのですが、しかし、実際に武器商人に会ってみると、彼らはとてもチャーミングでユーモアもあり、思わず好きになってしまうタイプの人間だったのが意外な驚きでした。実に人好きのする人間ばかりでした。だから、好きにならないように気をつけましたよ。ニコラス・ケイジは決して彼らと一緒に写真に写らないようにしていたほどでした」
――武器商人に対しては、どう考えていますか?
「チェコスロバキアの武器商人はとても有能で、ニコラス・ケイジが演じる主人公の後ろに戦車が多く並んでいるシーンでは、話をした翌朝8時には実物を揃えてくれました。あのシーンはCGだと思っている人が多いですが、全て本物なんです。彼らは、この映画で描かれているように、旧ソ連で不要になった武器をアフリカで売る……といった具合に、必要なところに行き、必要とする人たちに必要な物を売っています。武器商人は資本主義の究極の体現者なんです。ただ、巡り巡って自分たちが売った武器で自国の国民が死のうが気にしないのは酷いですね。責任感がなくて、本当に金が全てなんです」
――映画の製作で大変だったことは?
「資金集めですね。武器商人を扱っているうえに、イラク戦争が始まる1週間前に資金集めを始めたので、最悪のタイミングでした。結局、アメリカ資本はゼロになりましたが」
――これから作っていきたい映画は?
「今後も単なるエンターテインメントだけでなく、観た人に何かを考えるきっかけを与える作品を作っていきたいです。ただ、今作は扱っている題材がヘビーなだけに、語り口はユーモアも入れてポップに仕上げました。映画のなかにも、アフリカにコカ・コーラの大きな宣伝物があるシーンがありますが、現代はアメリカ的なグローバリゼーションが世界中に浸透し過ぎていると思います。多様なカルチャーがあっていいのに、世界のどこにいってもモノカルチャーになりつつあり、これはとても危惧すべきことだと思うのです。『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』『シモーヌ』『ターミナル』、そして本作『ロード・オブ・ウォー』と、私が関わった作品にアメリカ的なものを批判する要素が入っているのは、私がアメリカ人ではなくてニュージーランド出身なことも関係しているのかもしれないですね。映画などのアメリカン・カルチャーを愛していますが、一方で行き過ぎたアメリカ的なモノカルチャーの浸透に対する危険性も感じていますから」