ケスのレビュー・感想・評価
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踊れない『リトル・ダンサー』はこう言った人生が待っている。
『アルジャーノンに花束を』を読んでいた事と設定が『リトル・ダンサー』に似ているので、この映画が初見には思えなかった。ちょうど『小さな恋のメロディ』を見に行って、イギリスが『揺り籠から墓場まで』でない国だと気付き始めた頃の映画だ。
ところで、この映画の教師、かなりの暴君だが、僕の時代、こう言う教師は、日本にも沢山いた。
理由は色々あると思うが、戦勝国若しくは敗戦国であっても、中堅教師を30歳から35歳で計算すると、彼等や彼女達は戦争を経験している。つまり、教師が、まともな教育を受けていない。また、日本の教師は全く価値観が逆転をする。現在の日本人であっても付和雷同が多い。その国民性のDNAは、自由と民主主義しか知らない子供達を教える事なんか出来る訳がない。そして、この映画での英国人は戦勝国なので、さらにプライドが高い教師が多いと思う。但し、僕にはイギリス人の血の繋がった親戚がいないので、確信はない。
しかし、見事に何一つ救いのない映画だった。
もう一度言うが、高校までまともな教師は二人しかいなかった。勿論、僕の場合である。
そう言えば、リトル・ダンサーもビリーじゃなかったか?
炭鉱の町のビリー
体操の服をビリーだけ持っていない。「どうせ卒業するのだから服は要らない」と答えるが、卒業までは4年ある・・・
年齢ごまかしたり、体育の先生に逆らったり、純粋な少年なのだが平気でウソをつく。淡々と進むストーリーの中にも同級生と先生のやりとりが非常に面白い。トリュフォーのように少年の心情にまで深く切りこまずに、幼い少年が就職しなければならない時代背景や寒々とした雰囲気が妙な気分にさせるテクニック。3人の教師それぞれがビリー少年に対する接し方が全く違うところも面白い。
鷹の飼育について教室で発表させたおかげで、ビリーは鼻高々にもなり、自分のやってきたことに自信を持ったのであろう。この先生もなかなかのものだ。
就職のための面談から現実に戻り、やがて鷹のケスがいなくなってしまうことの焦燥感と虚無感。兄の金を使いこんでしまったことから起こる悲劇。兄貴の残酷さにも怒りを覚えるが、それよりも就職しなければならない虚しさのほうが重くのしかかる。ペットなんていつかは死の悲しみを味わわなければならないし、現実に戻されて大人の道を進むこと、この冷たさのほうが記憶に残るかもしれない・・・とはいえ、次男坊の主人公ってもともと感情移入しにくい。
人間以外の友の大切さ。
自分も、人は裏切るから信用出来ず、飼っている猫だけが大事だから、主人公の男の子の気持ちは理解できる。
キャスパー君の通う学校の先生たちは今だったら、Twitterに映像拡散されそうな理不尽な扱いを子供相手にごく普通に行う。
「昔は良かった」って言う人が居るけれど、「昔」ってこういう「理不尽」って今以上に野放しだから、今みたいに過剰に神経質なのも、どうかと思うけれど。
キャスパー君は、家族関係も酷いしでも、新聞配達をやったり中々の「苦子供」(苦学生って年ですらない)
苛酷な環境下で、孤独な心を通い合わせる唯一の相手が鳥の「ケス」
ネタばれになるから無理だけれど、この「ケス」が終盤酷い扱いを。
しかし「ケスと少年のシーン」は映画的にとても、良かった。
孤独な心と過酷な環境、時代と地域が違っても人の心の苦しみは変わらない。
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