群衆のレビュー・感想・評価
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祭り上げられ型ヒューマン・ドラマ‼️
アルフレッド・ヒッチコック監督が「三十九夜」「逃走迷路」「北北西に進路へ取れ」などの「巻き込まれ型サスペンス」を得意としたのと同じように、わが敬愛するフランク・キャプラ監督も、ある立場に祭り上げられた男が、ヒロイン(原因)と恋に落ち、自分を利用しようとする悪党どもに立ち向かう、いわゆる「祭り上げられ型ヒューマン・ドラマ」を得意としました‼️「オペラ・ハット」「スミス都へ行く」は、そんな「祭り上げられ型ヒューマン・ドラマ」のみならず、映画史に残る名作なんですが、今作「群衆」もその二作に負けず劣らずの名作だと思います‼️リストラになった女性記者が「社会に抗議して飛び降り自殺する」と、ジョン・ドウ名義でコラムを投稿。コラムは大評判となり、編集長は復職を条件に彼女に続けて記事を書かせ、マイナーリーグの野球投手をジョン・ドウに祭り上げて販売成績を伸ばす。煽動された群衆は、偶像=ジョン・ドウに熱狂するが・・・‼️今作はメルヘンであり寓話でありファンタジー‼️SF要素は皆無なんですけど、ファンタジーっぽいんですよね‼️そこで描かれるのは、あおられた群衆やメディアの暴走と、人間の誠実さや信念、そして愛‼️ゲイリー・クーパーの誠実な演技はもちろん、ヒロインを演じるバーバラ・スタンウィックの魅力が絶大ですね‼️代表作である「深夜の告白」のファム・ファタールぶりとは正反対‼️悪役のエドワード・アーノルドの憎たらしい存在感も素晴らしい‼️そして、雪降るクリスマスの市庁舎を舞台にしたクライマックスも忘れられないです‼️「庶民の力をあなどるなよ」‼️
マスコミの政治利用の凄まじさ、熱しやすく冷めやすい大衆、されど米国の民主主義を信じたい・信じられる
少々口惜しいが、最後見事に泣かされてしまった。
新聞がでっちあげで、隣人を愛せという草の根運動のヒーローを作り出す様は、今でもさもありなんで恐ろしいとともに、これを題材にする目の付け所がとても良い。
主人公ゲーリー・クーパーは、この運動の政治利用が分かって反抗するも、でっち上げがバラされ詐欺師裏切り者と攻撃されてしうまう展開が落差があってとても良い。誠実で裏表が無く、でっち上げ記事書いたヒロインのバーバラ・スタンウイックへの打ち明けられない恋心が、不器用に立ち振る舞うクーパーにはとてもお似合い。
バーバラ・スタンウイックも、有能でお金目的と自ら言うタイプの女性記者であるが、クーパーの誠実さに惹かれて愛していく様に意外と説得力が有る。また演説原稿作成に苦しんでいる時、亡き父親の手記をネタにして名演説を創作できたエピソードは興味深い。多くの人間が欲する様な、言葉にパワーが有るスピーチであった。キャプラ作品の常連、脚色のロバート・リスキンの力量が最大限に発揮か。
最後クリスマス夜のビルの屋上、ハッピーエンドは分かっていても泣かされる要素として、敵方集合及びヒロイン登場にプラスして、詐欺師と糾弾した一般人たちが飛び降りないでと訴えたことがある。移り気で頼りにならない群衆であるが、数は多く政治的パワーは有り、彼及び彼女らによる民主主義の威力をもう一度信じたい、信じることができるとの監督らの思いに涙が誘われる。マスコミの政治利用も凄まじいが、この時代(1941年公開)の米国の大衆、そして民主主義への信頼を羨ましくも思う。
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