劇場公開日 1988年8月20日

「「グレート」、「ビッグ」、「グラン・ブルー」の3バージョンを観て」グレート・ブルー アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「グレート」、「ビッグ」、「グラン・ブルー」の3バージョンを観て

2023年4月29日
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本邦初公開時、「グレート・ブルー」のタイトルで、当時出来てまもなかった日劇マリオンのプラザ劇場で(鳴物入りで?)公開され、自身は観る気満々だったのが、殆ど無名に等しい監督、俳優陣、音楽家だった、当時既に斜陽だったヨーロッパ映画という事で見向きもされず、あまりににも酷い不入りの洗礼を受け、アテが外れた東宝は僅か1〜2週間程度で上映を打ち切ってしまったのでした。

慌てて2番落ちした劇場を探したら、直後に同じ銀座の道路下のシネパトスに流れてるのを見付け、何とか鑑賞に漕ぎ着けた経緯がある映画。
古くから敬愛している「冒険者たち」的なテイストを予感していたので、見逃せないと思っていた作品だったので。

行ってみると、思いの外の客の入り具合だった。
自分と同じような流れでの来場者は意外と居たのだと思った。
それでも、そうした一部の映画好きの範囲は出ない程度だろう。結局は、間も無く忘れ去られて行くことに。

しかし、世はレンタル・ビデオ全盛時代を迎えたことで、事情が一変。
同様の不入り打ち切り不人気失敗作の烙印を押されてきた不名誉作品の”復権“を後押しする結果となっていった。
その頃から徐々に口コミで特にこの作品と「ブレード・ランナー」などが人気カルト作品と化していくこととなった。

っで、再上映の気運が盛り上がり、それにより後に「グラン・ブルー」と呼ばれる本国バージョンでの上映に結びついていったというのが真相。
因みに、初公開版はインターナショナル版と呼ばれる短縮されたバージョンでの公開だった。

それらと別に、実は更にもう一本存在するのが「ビッグ・ブルー」のタイトルで知られてるアメリカ公開バージョン。
先述のように、殆ど無名に等しい監督、俳優陣、音楽家ではアメリカは全く相手にされず収益も見込めないことから、「如何様にもお取り扱い下さい」とばかりの権利丸投げウリでしか相手にしてもらえずで、その結果の再編集タイトル変更が施され、制作側の意向は無視の別バージョンになってます。

が、興味深いのが、音楽が「ロッキー」などで知られる大御所のビル・コンティ氏により書き落ろされたものに全編差し替えれている事。
それと一番の驚きがちょっと悲壮感のあるような感じのするラストを好まないアメリカ向けに、「ファンタジー」っぽく締めくくった形をとっている事です。

具体的には、あの後、満月の海に浮かび上がってきて、その周りをジャンプするイルカと共に、月夜の海の彼方に泳ぎ去っていきます。
その当時の、アメリカ版のビデオ・テープとレーザーディスクで所有していて何度も鑑賞していますが、それもまた悪く無いエンディングとも。

ビル・コンティ氏のサントラも(非公式盤ながら)出回っていて所有しており、愛聴してます(笑)。

しかしまあ、色々な運命に翻弄された作品であると、つくづく思わされますね(マニア冥利に尽きるとも言えますが)…..

蛇足ながら、
先日、チェックしてみたらYouTubeにてアメリカ版のエンディング部分だけUpされているのが確認出来ましたので、ご興味ある方はご覧になってみるのも良いと思います。

アンディ・ロビンソン