「傑作です!カーレースものならこれを観て無ければ話になりません」グラン・プリ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
傑作です!カーレースものならこれを観て無ければ話になりません
映画にはジャンル毎にこれ!という代表的な作品があります
SF映画なら2001年宇宙の旅、戦争映画ならトラ!トラ!トラ!という具合に
カーレース映画なら本作がそれだと思います
カーレースものは、とにかく車が主人公
猛スピードでのカーアクションシーンが迫力ある映像でなくては話になりません
かといって、カーレースシーンを延々と垂れ流されても退屈してしまいます
そこにドラマが無ければなりません
ドラマには二つの物語が考えられます
一つ目はレースの勝ち負けに関わる駆け引きと、スタッフ達との物語
二つ目はレーシングドライバー達それぞれが個人的に抱える悩みなどの物語
特に男と女の物語がレースの進展と絡んでいく話でないと、女っ気がなくつまらないものになってしまいます
スタイル抜群の美女がお洒落な衣装とヘアスタイルで、それぞれにいくつかのタイプで何人も登場してくれないと困ります
本作はそれらを全て満たしています
それも高いレベルで
シネラマの広い視界
明るいレンズと照明、シャープな焦点
車載カメラのドライバーの視界での走行シーンがすごい!
今なら普通の映像でしょうが当時のことですから画期的な映像だったと思います
21世紀の現代でさえこれはもの凄いと感嘆するものです
ちょいとレトロ風味のあるF-1マシン
初代ルパン三世が乗っているのはこういうレースカーです
それがとてもカッコイイ!
コースもモナコ・モンテカルロの市街地コースとか、ゲームの画面で観たことのある風景の本物が実写で楽しむことができます
素晴らしい音響!
大馬力大排気量のエンジン音、排気音、200キロを超える走行音が、家のAVシステムから気持ちよく爆音をだして鳴り響きます
近所迷惑になりそう!ヤバい
物語も面白く飽きません
F-1レースは世界各地を転戦するので、そのたびに場面展開できるので栄光ル・マンみたいに飽きが出にくいです
俳優達も良い
イブ・モンタンが渋くて印象的
主要な四人のレーサードライバーもキャラクターがしっかり描き分けられています
それぞれに絡む美女達も美しい
3時間は長いようで、観終わってみるとそう長いとは感じません
ホンダがモデルと思われるヤムラチームの活躍が日本人としては特に嬉しく楽しい!
オーナー役の三船敏郎だけでなく、通訳、ファクトリースタッフ達、着物姿のマスコットガール達などの無名の日本人達も沢山登場します
彼等彼女達の顔を観てるだけで楽しい
傑作です!カーレースものならこれを観て無ければ話になりません
1966年公開
本作がブームを作ったのか
ブームがあったから本作が撮られたのか
それは浅学で分かりません
しかし当時は大変なカーレースブームだったのは確かなようです
スロットカーレースという今のミニ四駆レースのような遊びも世界中で流行したそうですし、プラモデルも沢山発売されて子供達の憧れだったそうです
アニメのマッハGoGoGoも本作の日本公開の1967年2月の直後4月の放映開始です
そういえば、クロード・ルルーシュ監督の名作の「男と女」のジャン・ルイもレーシングドライバーで劇中にモンテカルロラリー出場シーンがありました
それも1966年の公開です
当時のブームの過熱ぶりが伺えます
21世紀の現代の視点で本作を観ると気付く事があります
これが20世紀型の文明の頂点だった
本作はそれを記録していた映画だったのだと
ガソリンを大量に消費する燃費の悪いエンジン
もうもうと立ち込める大量の排気ガス
他人より少しでも速く、長く走る
そのためににはどんな危険にも立ち向かっていくスピリッツ
何十万人もの観衆が密集して騒いでいる
みんな若い
戦後のベビーブーマー、日本でいう団塊世代は20歳になった頃です
エネルギーが有り余っているのが伝わってきます
21世紀、しかもコロナ禍にみわれた世界から見れば遠い遠い昔の栄光の日々
失われた世界そのものです
21世紀の現代では、環境問題、温暖化ガス削減、排ガス規制対応エンジン、低燃費、ハイブリッド車が優先される時代なのです
それどころかEVに全面的に置き換えすべきとかまで叫ばれたりしています
本作公開のあと、ホンダはカーレースから一度撤退しました
カーレースよりも、排ガス規制に対応する事が急務であるとかの理由でした
その後の世界の環境優先の潮流を先取りした素晴らしい経営判断であったと言えると思います
つまり本作のころを境目にして、20世紀型の大量消費、環境破壊型の文明は頂点を迎えていて、潮目が変わっていったのです
それに気付かされました
その後、世界はオイルショックを経験し地球の資源は有限であること
地球の環境は、文明化による二酸化炭素ガスで温暖化の危機にあること
そんなことが明らかになって行き21世紀の今日を迎えたのです
ここが21世紀型の文明への転換点であったのです
本作は20世紀型の文明のピークを記録していたのです