「【”イスラエルは何故に極右化し、二年もの間ガザを破壊し続けたのか!”今作は序盤のネタニヤフ夫妻の汚職疑惑から発展し、急激に極右化していく様を描いた恐ろしきポリティカルドキュメンタリーなのである。】」ネタニヤフ調書 汚職と戦争 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”イスラエルは何故に極右化し、二年もの間ガザを破壊し続けたのか!”今作は序盤のネタニヤフ夫妻の汚職疑惑から発展し、急激に極右化していく様を描いた恐ろしきポリティカルドキュメンタリーなのである。】
ー 今作では、序盤はイスラエル警察による、ネタニヤフ自身や妻サラや夫妻を知る関係者、ジャーナリストの証言と共に、取り調べシーンが次々に描かれていく。ー
・最初は、”忙しい公務の合間に”と差し出された高級葉巻が一本から、一箱、二箱と増えて行き、現在の稀代の悪妻とされるネタニヤフの妻サラがおねだりする”ピンク”と称される好物の高級シャンパンや25万ドルもする宝飾品について、それを差し出したハリウッドの大物映画プロデューサーであるアーノン・ミルチャン自身及び元アシスタントの女性が証言するシーンが描かれていくのである。
・驚くのは、ネタニヤフの三度目の妻サラの権力欲と物欲と常飲するシャンパンに依ると思われる、高慢な物凄い嫌な目付きである。
近年、あのような眼は観た事が無いほどの強烈に嫌な目付きには、”人間って、こんなに醜い眼になるんだ・・。”と暗い気持ちになったのである。
更に彼女は官僚の会議でも、夫の隣で嫌らしい眼を光らせているのである。ナレーションではネタニヤフは、彼女には頭が上がらないそうである・・。
・ネタニエフの求心力は今作で描かれる2020年から始まった汚職追及の裁判により急落し、首相の座を守るために彼が取った行動は、極右のスモトリッチが所属するシオニスト党(嫌な名前である。)と、差別主義者であるベングウィルが所属する同じく極右政党の”ユダヤの力”(コレマタ嫌な名前である。)との連立なのである。
当然、イスラエルは歴史上最悪の極右の国になってしまったのである。劇中でもベングウィルがアラブの民を撲滅する発言を繰り返しているように・・。
・更に、ネタニエフは極右思想に染まる息子ヤイルに後釜を譲るのではないか、と言うインタビューも出るのである。これでは、トッチャンボーヤが統べる国と同じではないか・・。
・当然、【怒りは怒りを来す】法則により、2023年10月7日に勃発したハマスとの戦争が起こり、双方で多数の死者が出てしまうのである。
イスラエルの中でも中道左派思想を持つ政治家や、知人を多数失った今作でも強烈な印象を残すインタビューに応じたキブツ(農業共同体)で働く若きイスラエル女性が、仲間を多数失ったために、涙を流しながら口にする”ネタニエフには来てほしくない。顔も見たくない。”という言葉は、イスラエルの多くの民の声を代弁しているのではないかと思ったのである。
・哀しいのは、40台で首相に就任した若きネタニエフが、エールフランス機ハイジャック事件解決のために”エンテベ空港奇襲作戦”実行時に、指揮官であった兄ヨナタンの遺志を継いだかのような、言葉が良いのである。70歳を超えたネタニエフとは別人のような政治思想(とはいえ、右派ではあるのだが。)が立派なのである。多選が齎す弊害を如実に思ったシーンである。
■唯一の希望は、イスラエル警察がキチンと機能している事であろう。ここが、独裁者が統べる”二つの北の国”と、ムーミンが統べる国との違いである。
このポリティカルドキュメンタリー作品では、警察の取り調べシーンが多数使われているからである。
<今作は序盤のネタニヤフ夫妻の汚職疑惑から発展し、右傾化していく様を描いた恐ろしきポリティカルドキュメンタリ―の逸品なのである。>
