「家族ってなんだろうなあ」レンタル家族 肥田さんの映画レビュー(感想・評価)
家族ってなんだろうなあ
あたたかいけれどあたたかいだけじゃない、悲しいような微笑ましいような不思議な気持ちになる映画でした。
レンタル家族の名の通り、認知症の母親のために家族をレンタルするところから始まる物語ですが、いつしかその偽りの家族が自分の居場所のように感じてどこかあたたかさを感じ、思い通りにいかない本当の家族のはざまでぐらぐらと感情が動くような揺れを感じました。
認知症の母と、それに付き合う中で切なそうな父。
離婚したことで月に一度しか会えない我が子と、自分よりも我が子をよく知る元夫。
職場での期待と、帰宅する静かな家。
現実世界は厳しくて、寂しいけどどうすることもできなくて。
だけど、レンタルした家族の時間は偽りのはずなのにあたたかい。
優しい夫は、自分の母まで気にかけてくれるし、
子供は夫だけじゃなく自分にも甘えてくれる。
実家の母と父も楽しそうで、「こんな家族のかたちもありなのかも」みたいな気持ちを感じました。
だけど、一歩踏み込むとやっぱり現実は甘くなくて
同性愛や家族の歪、自由のない親子関係などそれぞれに隠しておきたい自分の家族事情があって、だけど抗いきれない自分もいて。
どこか逃げ場を欲した3人が知らず知らず少しだけお互いを支え合っていたのかなと。
家族ってなんなんだろうと思いました。
血が繋がってれば家族だけど、
洋子にとってはレンタル家族も家族だったと思います。
舞台挨拶にて上坂監督が、映画を作った背景として祖父母の話をされていました。
亡くなられたお祖父様が、生前お祖母様に「ありがとう」と思っていても直接伝えてはいなかったのかもしれない。
だから、作品内で「ありがとう」を伝えるシーンを入れて、自分にとっても大切なシーンに感じているとのことでした。
家族に対して素敵な感情とあたたかさを持っている上坂監督だからこそ
ちいさな心の動きや切なさ、あたたかさを描けるんだなと思いました。
そんな監督の今後の作品もとても楽しみです。
