落下の王国 4Kデジタルリマスターのレビュー・感想・評価
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隠れがちな背景に想いを馳せると…
作品の背景に色んなことが隠れているような気がして、パンフが欲しかったんだけど残念なことに売り切れだった。
設定が1915年だそうで、主人公が再起不能とも言える大怪我を負った映画のスタントマン。同じ病院に手の骨折で入院しているのがルーマニア移民の女の子。この2人の病院のベッドでの交流が愛くるしい。
この時期の映画産業は前途洋々らしく、そんな希望ある時代に大怪我を負って生きる気力を無くしつつある主人公と、もしかしたら母国での生活苦から生きる為に移民となって渡って来た少女の交流…死にたい男と生きたい活力の少女の対比があるとしたら、一緒に紡ぐシンプルなストーリーも実に多面的に見ることができそうだ。それこそが鮮烈な色彩となって映像に現れている気もする。後半の妄想は男の負のイメージに傾き悲劇に終わりそうになるが、少女の生きる活力がアメージングを起こす。終始落下の恐怖に付き纏われていた妄想は、最後水中から跳ね上がって救われるのだ。明るすぎるほどの少女の胸の内には悲惨な過去を思い描くことができる。もし、現実を生きる延びるための必死な想いを、映画という虚構の愉悦に挫折した男が感じることになるとすれば…。2人の妄想は健気で心打つのではないだろうか。
1915年と言う設定とも相俟って、CGを使わない驚愕の映像が圧巻で、石岡瑛子氏のコスチュームがそれに全く負けていないことに二度驚愕。勿論挿話の中にはスタントが散りばめられている。
15年前の初見の感動はなかった
15年前、大学生の時にTSUTAYAでレンタルしてたやつを借りてみて、「これは傑作だ!!」と思っていた作品。自分史上トップ5にはいると思っていた。再上映の話を聞きつけ観覧。期待値が高すぎたのか、私が年を取ってしまったのか、あの時感じた感動はそこになかった。少し残念でした。
圧倒的な映像美は素晴らしかった。これは一切衰えていなかった。きれいだなぁーって感じ。深夜のバーで音無しで流れてたら最高の酒の肴になる映画だと思う。
一方で、ストーリーが全然感情移入できなかった。おとぎ話、作り話だからしょうがないんだけど、脈絡のない白昼夢を見せられている感じだった。
直近、こんな気持ちになった映画が一つあった。「君たちはどう生きるか」だ。作画、映像は素晴らしいが、話が脈絡がなさすぎて、「(宮崎駿も旬を過ぎちゃったなと)少し残念な」気持ちになったあの映画。
映像自体の工夫はいっぱいあって面白い。病院に出入りするいろんな人々がお話の登場人物になってるし、鍵穴の光からお話の象が見えてたり、女の子が左目と右目で指を交互に見るシーンとか、作り込まれた面白い映像はたくさんある。結婚式のシーンとか美しすぎてハゲた。
きっと、自分の感性が変わっちゃったのかな。そう思うことにしよう。
20年近く経っても色褪せないチョー名作。
当時マイベスト作品の1本だった。
ミニシアターだったからか周囲に作品名を告げても?な人が多く、かつどんどんマイベストが上書きされていったこともあり、しばし記憶から遠ざかっていた。
ドラキュラやザ・セルで衣装を担当していた石岡瑛子さんが参画していることは鑑賞の大きなモチベーションだった。
スタントで怪我をし入院しているロイの心境を反映させた壮大な叙事詩を、チャーミングで感情豊かな演技が魅力のアレクサンドリアが病院やその周辺の人々を頭の中で出演させ物語を描く世界を映像化。
世界遺産をはじめとした世界中のどこかを舞台に圧倒的なスケール感で描かれる。そこにひときわ存在感を放つ石岡瑛子さんの衣装。スクリーンで鑑賞すれば、その熱量や感動はひとしお。特に引きの映像にはため息が漏れる。
壮大で豪華絢爛な映像美とロイが活躍していたサイレント映画の隆盛期の対比によって映画の原初体験から、この作品のような究極の発展形が体験できる。
公開から約20年。当時の衝撃のままに今年一番の作品になりました。
私にはダメでした(というより私がダメな奴かもです)
映像ソフトは廃版で再販無し、配信無し、だけども非常な高評価の貴重な映画。
チネチッタのLIVEZOUNDが連日ほぼ満員だった事から、これは是非見なければと思い鑑賞。
変に小難しく気取った芸術作品でもなく、理解できない内容でもなく、エンタメ映画としても楽しめそうな内容でしたが、冒頭から最後まで、物語も映像も私には全く刺さりませんでした。
皮肉ではなく、これだけ人気があり高評価な映画を楽しめない自分を少し不安に感じます。
他のお客さんは、良かったねと満足げでしたので、自分には何かが欠けてるかも・・・と、映画館を出るときにかなり考え込んでしまいました。
評価の星の数が少ないですが、あくまで映画を見終えた私個人の感想という事でご容赦ください。
映像と衣装を楽しみに行ったら、内容が想像以上に刺さってしまい、久し...
映像と衣装を楽しみに行ったら、内容が想像以上に刺さってしまい、久しぶりにべしょべしょに泣いてしまった…
圧倒的な映像の美しさの中に、心の傷、死、搾取構造みたいなものが描かれていて、物語を通して救済、再生する展開にグッときてしまった。
現実が変わるわけではないけれど、光を感じられる作品だった。
アレクサンドリアの無垢で子供らしい可愛さも堪らなかったし、子供との会話ってこんな感じだよなとか、子供の頭の中の世界ってこんな感じだろうなというのが映像化されてたのも良かった。
ロイの背景だけでなく、5歳のアレクサンドリアが抱えているものや心の傷についても、映画が進むにつれて少しずつ点と点が繋がっていき、終盤は本当にグッときてしまって涙が止まらなくなってしまった。
内容については合わない人もいるとは思うけど、私にとっては大切な映画のひとつになった。
配信もないし、円盤もプレミア価格で、公開当時見逃したのをずっと後悔していたので、映画館で観られて良かった。
予告編観て引き込まれた…
落ちても落ちてもすくい上げられる物語
物語への愛
この作品については既に多くの素晴らしい批評や考察があるので簡単な感想のみに留めたいと思います。
まず未見の方にお伝えしたいのは、この作品は難解で高尚なアート映画などでは決してなく、どこまでも純粋で物語への愛に溢れた真の意味でのエンターテイメント作品であるということです。
映画を映画館で観るということを愛している人になら必ず伝わるシンプルで美しいメッセージで溢れていて、私は不勉強ながらこの作品は初見で前情報をほとんど入れずに鑑賞しましたが後半から涙腺が決壊してしまい自分でも驚くほど心が揺さぶられて劇場を出ることになりました。
私が訪れた回では入場制限がかかりパンフレットも売り切れる程の盛況ぶりで、もし未見で少しでも気になる方いましたら劇場で観られるうちに行かれることを心からおすすめします。
正に『圧巻の映画体験』!!
映画を観ているだけのはずなのに、ロイの語る物語の聞き手に自分がなっているような、また聞き手アレクサンドリアのイマジネーションによって具現化された物語の映像の生き証人となるような、不思議な感覚。そのうえ美し過ぎる世界遺産たちの登場で色んな場所を旅する感覚にもなれる言葉では表現するのが難しい体験だったー。
上映中にもう一度行きたいな……
アーティスティックな映像をそれとする大きな一因は間違いなく石岡瑛子さんの衣装。前に彼女の軌跡を追う美術展見たさに現代美術館に行ったときの衝撃を今でも覚えてる。
アート映画としても素晴らしいけどもストーリーも素晴らしい。父と娘ものに鉄板的に泣けるあたしにドンピシャ刺さる場面も。アレクサンドリアちゃんの表現力が本当に本当に素晴らしくて。
BESTIAで見て良かった☺
映像美復活
ストーリーは無いです。というか完全にない方がまだマシ。
結局のところ、監督が見せたい映像を見せられているだけで、映画である必要性を感じない。
CGのない時代のスタントを題材にした作品ということになっているが、最初と最後以外にスタントの描写がないのはどういうことか。
スタントマンであるロイが自分の理想の話を語り、自分が主人公になりたいのであれば、もっとスタントという要素が物語に組み込まれるべきではないか。あえてそこを切り離す意味がわからない。
17年も撮影場所を探したらしいが、その結果がこの程度かという印象。
舞台のシンプルさを美しさとして見せたいのだろうが、あまりに単色な空間すぎる。白黒時代だからという理屈かもしれないが、それならあのメインキャラたちの派手な衣装との整合性が取れない。自分たちを派手に見せたいなら、想像上の空間も派手になるはずだ。
結局、キャラクターの心情よりも監督の美学が優先されており、絶望している人間が語る作り話があんな内容になるのか?という点がずっと腑に落ちなかった。
何より、後半の監督の意図が見え始めたタイミングと、ラストの白黒映像の部分では、自分の大好きな『ニューシネマパラダイス』の劣化版にしか見えなくなり、「なんだこれ」と白けてしまった。
映像美が強調されるけど、物語も名作。
冒頭、
モノクロのスロー映像を背景に約3分、
ベートーヴェン交響曲第7番第2楽章が流れ、
おお、いいではないか。
ただこの曲、葬送行進曲風だから、
なにやら不穏さも漂わせ。
そのあと、カラーで、病院の風景。
病棟の2階の窓から顔を出し、
地上の看護師さんに向けて
「手紙ヒコーキ」を飛ばす5歳の少女。
あれ? この場面、見たことあるかも。
その後、その手紙ヒコーキが、
足を折ったらしい1階の若いにいちゃん(兄ではない)ロイのベッドに漂着するに至り、
いやこれ、間違いなく記憶にある。
さらには、
少女の名前アレクサンドリアにちなんで
アレクサンダー大王が妄想される場面に至って、
これ絶対見たことある、
となったんだけれど、いつどこで見たかは、全然覚えてない。
最初のモノクロは全く見覚えがなかったから、
おそらくケーブルテレビをザッピングしていて
たまたま見たんだろうと推測。
ともあれ、
断片的記憶はあるものの、
全編、新たな気持ちで楽しめた。
* * *
いろんなサイトで紹介される際、
映像の美しさばかり強調されてるキライがあるけれど、
ストーリーもまた、よいのであります。
ただでさえ影の存在であるスタントマンのにいちゃんが、
彼女を有名な役者にとられて自棄になっている中で、
アレクサンドリアに語って聞かせる荒唐無稽な作り話の
劇中劇映像が描かれる。
そしてこの映像が、構図も色彩も凝りに凝ってて美しさの極みなんだけれど、
同時に、話の途中でアレクサンドリアが
「死んじゃダメ!」とか
「爆弾は⁉︎」とか、ツッコミを入れ、
その都度ストーリーが変わっちゃうのが笑える。
隣のベッドのオッサンの患者がくどく何度も、I 'm not feeling well.と医者に訴えてる台詞が、
悪役最期の台詞になったりするし。
んだけれど、
後半になると、いろんなことがだんだん煮詰まってきて、
ロイは登場人物をどんどん死なせちゃう。
アレクサンドリアはそれに抗議するけど、抗議以上のことはできない。
だって語るのはロイだから。
そしてアレクサンドリアにも危機が。
さあどうなる。
という、なかなかスリリングな展開もあって。
何より
5歳のアレクサンドリアの
一生懸命さと賢さと天然さが
めっちゃよくって。
最後はエンドロールで
冒頭の第2楽章をフルで聴けて、
なおさら満足♪
これはまあ、
世界遺産撮影巡りなんぞしなくっても
名作だと思うのでありますが、
きっと監督が、凝り性の極みなんでしょうな。
そこにあるのは愛
美しいだけじゃない
この映画は映像はとても美しいのですが、おどろおどろしいシーンもあり何とも不思議な世界観でした。しかし、一見アートを中心に見せる映画のようで、もっと深いメッセージも感じました。
物語は自殺志願者のロイが、入院先で知り合った5歳のアレクサンドリアに、即興で作った物語を聞かせてあげるというシンプルなお話です。
アレクサンドリアの視点だと即興な物語も、壮大で美しく、わくわくしますが、ロイの心情に反映し徐々に複雑でバッドエンドに向かっていく対比が印象的でした。
終盤で父親と重ねた黒山賊を「死なせないで」と懇願するアレクサンドリアと、自分を反映した黒山賊を生かすことが苦しいロイとのやり取りがこの映画の1番の肝だと思います。
彼がアレクサンドリアに出会えて本当に良かったです。
アレクサンドリアがとても魅力的でした。愛嬌と子どもらしいピュアさがとても可愛かったです。主役のリー・ペイスも良かったです。
リバイバル上映が無ければ、この映画の存在は知りませんでした。改めてリバイバル、しかも4Kで上映してくれたことに感謝です。
圧倒的な映像美が魅力的
物語が救う、ふたつの心
具体的にふれられていない。
だが最も闇深いのは、過去、少女の家庭に起きたことだろう。
少女が物語を欲し、その結末に妥協しなかったのは、
語り部に自らを投影していたからではなかろうか。
少女は子供であるという特権の持ち主であるゆえ、作中、途切れ途切れと垣間見る不幸をしなやかと潜り抜け、今もなおおそらく戦い続けている。
だから「負ける」ことは許されないのだ。
そんなことがあっては今を踏ん張り続けることができない。
その強さがスタントマンを水の底から引きずり上げた。
ふたりは作中にもあるように、デコボコ埋め合う奇妙なコンビだろう。
だが己が人生を生き抜くための最強のバディーなのである。
また娯楽の王様となり得た映画が、当初誰のためにあったのかを振りかえらせる。
おそらく少女が象徴するように過酷な労働と貧しい生活、そんな弱者の味方であり光となるためではなかろうか。
であれば何度だろうと、命を懸けて落ち続ける価値こそあるだろう。
これはバスターキートンと関係のある物語なのか。後で調べてみようと思っている。
ロケハンの成果がすごい。
衣装も見どころと聞いていたが、ゴルチエ以来の良さだった!
会話の大部分をアドリブで撮影したというロイとアレクサンドリアのシー...
絵の力だけでは持たない
美点の多い映画だ。誰しも指摘するように映像は本当に素晴らしい。単に美しいだけではない。見たことのない「絵」が次から次へと出てくる。矢を背中から打たれてから刺さった矢がテーブルの脚のようになって身体を浮かせるのとかね。斬新だ。
また子役の演技も加点材料。ナチュラルで魅力的。いつも思うが邦画が一番差をつけられてるのは子役の演技じゃないだろうか。
細かいこと言うとラストもあっさりしてて良かった。あの女の子とスタントマンを直接再会させなかったのはうまい。会えるのはあくまでも映画の中だけという。かすかに切ない感じもgood。
じゃあ手放しで絶賛できるかというと……劇中劇がいくらなんでも凡庸すぎて退屈だった。
子供に聞かせる話なのである程度は構成上しかたないんだろう。だとしたらもっと短くしてくれないと。ダルい。
上に書いたことと矛盾するようだが、「絵」がいくら素晴らしくても、その力だけで2時間は引っ張れない。隣の観客がしきりにあくびをしてたのも仕方ないかなと。
それと話のテーマもスタントマンとはちょっとズレてたような。この話、「物語」についての話だよね。正確に言うと「フィクションを語ること」についての話であって主人公がスタントマンというのはちょっと違うような。作家とか脚本家、監督じゃないとね。
全112件中、21~40件目を表示
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