コート・スティーリングのレビュー・感想・評価
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アロノフスキーの変化球、判定はストライク
オースティン・バトラー、猫、90年代……私の好みど真ん中です。
アロノフスキーのコメディ(っぽいスリラー?)というのが意外だった。ドンパチとゆるめの会話劇の緩急などはちょっとタランティーノっぽくもある。
バトラー演じるハンクは、とにかく痛い目に会う。隣人ラスのトラブルに巻き込まれて暴力を振るわれ、手術を受け、拷問でその傷を抉られ、満身創痍で駆けずり回る。逃亡劇のさなか、友人を死なせメジャー行きの夢が潰えた自動車事故のフラッシュバックに襲われる。
こういったトラウマを持つキャラが主役だと得てして作品のトーンが暗くなりがちだが、本作は全くそんな気配がない。明るい話だとまでは言わないが、湿っぽさがない。そして、要所要所でネコチャンと、ハンクのジャイアンツファンぶりに癒される。「かわいい」と「推し」は希望であり、救済である。
(ハンク同様ジャイアンツファンの彼のママ、途中はずっと声だけだったが、演じたのがローラ・ダーンだと最後に分かってびっくり。贅沢なキャスティング)
中盤以降、容赦なく人が死ぬ。イヴォンヌの早すぎる死、それもハンクのトラウマに塩を塗るような死に姿が辛すぎた。
ハンクは彼女の死について自責の念を持っていたようだが、彼にそれほど落ち度があったようにも思えない。とにかく、全部ラスが悪い。
そのラスも、なんだかよくわからない死因で退場。終盤、彼のパスポートがアップになった時一瞬「お前生きてたんかい」と思ったが、そこにはモヒカンヘアのハンクが……。これで空港の審査を通ってしまうというガバガバ描写が、90年代の映画っぽくていい。なりすましがいつまで通用するのかといった野暮なツッコミはナシだ。
監督の過去作、「ブラック・スワン」や「ザ・ホエール」では、主人公の肉体や精神が極限まで追い込まれる様が描かれている。
本作も、主人公が限界まで追い込まれるという点は共通している。肉体は痛めつけられ、トラウマや恋人の死が心をえぐる。
だが、物語の印象は随分違う。ニナやチャーリーが追い込まれた末に辿り着いた境地は狂気か幻想か、救済か悲劇か解釈の余地を残す描写で、鑑賞後の余韻は重かった。
一方でハンクの突破方法は単純かつ爽快だ。暴力的な相手を暴力で叩きのめし、彼らの虎の子の札束を奪い去る。その過程で、トラウマから避けていた車の運転をし、友人を死なせた事故と同様のクラッシュでユダヤ教徒コンビを倒した。イヴォンヌを殺されたことへの怒りが暗い過去を凌駕し、自分をさいなんだ過ちの記憶が復讐の成就というカタルシスで上書きされたのだ。
ラストでハンクが見せた笑顔は、トラウマを克服して前向きに生きる彼の未来を想像させた。爽やかな余韻と、じっくり読ませる気のないエンドロール(笑)。
アロノフスキーの変化球。何故かもう一度過去作を見直したくなった。
「ブラック・スワン」の監督による初のエンタメ作品。映像✖️脚本✖️演技がレベルの高い相乗効果をあげているアクション・クライムムービー。
タイトルの「コート・スティーリング」とは、野球用語で「盗塁失敗」のことで、一般的には「チャンスを掴もうとして失敗する」ことを意味します。
本作は、この原題の小説の実写化で、野球が好きで野球での成功を夢見ていた主人公ハンクが人生で上手くいかないことを表しています。
主人公が隣人のネコの世話を頼まれただけなのに、日常が一変していく様を描いていて、展開の読めない怒涛の「アクション・クライムムービー」。
本作で最も注目すべきは、アカデミー賞において「作品賞」「監督賞」「主演女優賞」「編集賞」「撮影賞」の5部門でノミネートされ、ナタリー・ポートマンが主演女優賞に輝き日本も含めて世界的に大ヒットした「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督作品であることでしょう。
しかも、これまでは一貫してダーク目であったり小難しい作品を作ってきていたのですが、初の「純粋に楽しめるエンタメ作品」となっています。
アクションシーンは、これまでの作風の延長線上で多少は過激なシーンもありますが、「エルヴィス」(2022年)でエルヴィス・プレスリーを演じアカデミー賞で「主演男優賞」にノミネートされた主演のオースティン・バトラーが全てのスタントを演じていて、「リアリティーのあるエンタメ作品」でもあります。
原作者自らが映画用に脚本を書いたことで映像、脚本、演技のどれもが上質なレベルで相乗効果をあげていて、見ておきたい1作に仕上がっています。
個人的にはラストのエンドロールの遊びは趣味趣向が合う人と合わない人が出るかと思いますが、「せっかくの楽しめる作品なんだから最後まで徹底的に」といった、監督のクリエイターとしての矜持のようなものを感じます。
いやいや盗塁失敗どころか!
面白かったがもうちょっと野球要素を活かせたんじゃないか。
タイトルの意味は盗塁失敗で主人公ハンクがチャンスをつかめそうなところで逃すことを、主人公の不運を象徴しているらしいが。盗塁失敗どころか割と数々のラッキー要素で進むことができてる!
不運要素
- ハンクは過去に野球でドラフトで選ばれそうな日に車の事故を起こして友人を死なせて自分は野球人生が絶たれる。これを伏線にしてラストでユダヤのマフィアを車ごと柱衝突させて殺している。
- 恋人はユダヤマフィアに殺された。これも終盤にユダヤマフィアが恋人の拳銃ライター持っていたことで発覚。
- 世話になったマスターはひどい刑事とロシアンマフィアに殺された。
主人公は確かに不運なんだ。それは強調されている。しかし同時に結構幸運展開もあるんだ。
幸運要素
- そもそも野球人生は挫折してもバーで働けているし美人の彼女がいる。
- 腎臓摘出手術後にも関わらず結構動けて傷口をマフィアに開けられたにも関わらず恋人の接着剤の応急処置だけで割とすんなり動けてしまうタフネスぶり。
- ユダヤマフィアに見つかっても街中を逃げることが出来るくらい足が速くて元気。しかも運良く逃げ成功。
- 猫のトイレのうんこおもちゃから運良く鍵を見つけることができる。
- マスターが地下で戦った際マスターは撃たれて死んだが主人公はいつの間にか普通に逃げることができた。
- モヒカン野郎のラスはうまい具合にハンクを金のある場所まで案内してくれてなんだかんだで車運転してくれてちょうど敵をまいた後の電車内で安らかに死んでくれた。
- ラスと逃げる際にちょうどよく球場を通りちょうどよくロシアンマフィアが野球帽をかぶっており「あの帽子の野郎がこちらチームの悪口を!」という感じのこと言って周囲の観客に乱闘してもらえて足止めできた。
- ロシアン頭突き野郎と終盤でタイマンになった際に運良く頭突き野郎が武器を持たずにパンチでやり合いしてくれて運良くパンチを当てて倒せた。
- 麻薬捜査官の女刑事をバットで銃を跳ね除けて折れたバットで足を刺せた上に最後はたまたま来たユダヤマフィアが始末してくれた。
- ユダヤマフィアがたまたま安息日で運転できないからハンクに運転を任せてくれたことでハンクの必殺柱衝突ができた。
- 顔が似てないのにモヒカンにして服までかっぱらってラスになりきり空港検査を運良く通れて海外に逃げるのに成功のラスト。
という感じで実は幸運だったろな!展開も多い。
ただもしかすると「いい彼女がいる」「回復が早い」「足が速い」「パンチが強い」「バットで敵の拳銃を手から飛ばせる」などは「ハンクが過去に野球の有望選手になれるくらい真剣に野球をやっていたから」の可能性がある。作り手はそれを踏まえてのキャラ作り、ストーリー作成をしたつもりかもしれない。
だからもっと分かりやすく「ハンクは野球を頑張っていたから体力もあり足も速く盗塁できるくらいの観察力と判断力がある」くらいのことを示してくれた方が良かったように思う。「盗塁失敗」のタイトルに引っ張られて「不運な主人公」を描いたつもりが「割とラッキーも重なる主人公」になっているように見えるから。
マスターが店を荒らされ友のおデブを殺されて怒りの発砲をする展開なんかは良かった。あれももうちょっとマスターに見せ場を作ってラストに「お前は野球で鍛えた観察力がある」「今度は盗塁失敗すんなよ!」くらい言い残してもらいたかった。野球に絡めて欲しかった。
というかショッキングな展開を作る為に過去の友人もマスターも恋人も死ぬけれど。こんだけバカみたいなラッキー要素を散らすならそんなに悲惨な展開にしなくてもいいんじゃないかとも思った。
ただこれくらい登場人物のほとんどが死ぬ展開だからこそ先が読みにくい話になった感もある。
ダーレン・アロノフスキー監督は『π』『レクイエム・フォー・ドリーム』『ブラック・スワン』以来。毎回「薬かそれ以外の何かに取り憑かれて頭がおかしくなる人」を描いていたイメージ。今回も薬の売買に関する話だったのでドラッグを絡めるのが好きなんだと思う。
最後のスタッフロールが音楽に合わせて文字が流れる方向が変わったり文字が揺れたりする、他ではあまり見ないオシャレ演出。しかも猫のアニメ付き。このシャレオツぶりこそアロノフスキー。毎回どこかシャレオツな感じにするのが得意。
巻き込まれ型サスペンスの典型。とはいえ、出てくる危ない奴らが半端なく、主人公は如何にして危機を乗り越える?
アロノフスキーがこんなブッ飛んだエンターテイメントを撮るなんて!
でも、主人公が精神的にも肉体的にも極限まで追い込まれるのは、やはりアロノフスキーか。
ちょっと汚くて、かなり痛そう…。
元ハイスクール球児で、ケガで大リーグ入りの夢を逃して今はしがないバーテンダーをしているハンク(オースティン・バトラー)が、裏社会の大金争奪戦に巻き込まれるクライム・サスペンス&バイオレンス・アクション。
つい最近『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』という長い邦題の映画があったが、こっちも負けず劣らず不運で、しかも最悪な日は1日では終わらない。
ハンクは、イカれた(ように見える)アパートの隣人(マット・スミス)に猫の世話を押し付けられる。隣人は父親が危篤でロンドンに帰省するという。
猫を預かったのが運の尽きで、ロシア人ヤクザに暴行されるわ、ユダヤ人の殺し屋に追いかけ回されるわの大災難。
恋人のイヴォンヌ(ゾーイ・クラヴィッツ)、バーのオーナー(グリフィン・ダン)なども巻き込んでしまうのだった。
1990年代のニューヨークが物語の舞台で、ロケーション撮影なのに、フラッシングメドウの公園の隣にシェイ・スタジアムが存在しているかのように演出していたり、バスの車体に描かれた広告や店舗の看板などで、知っている人には90年代だと分かる仕掛けが散りばめられている。
“地上を走る地下鉄”の高架はおなじみの風景ではあるが、『フレンチ・コネクション』(’71)を思い出させもする。
ニューヨークの場末には、あれほど反社会的勢力が闊歩しているのかと改めて身震いするが、『キング・オブ・ニューヨーク』(’90)や、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(’02)に代表されるニューヨーク・マフィアの抗争を描いた映画も少なくないので、さもありなん…か。
登場するキャラクターがどれも個性的で面白い。
特にユダヤ人の殺し屋兄弟(リーヴ・シュレイバー、ヴィンセント・ドノフリオ)が傑作だ。神を敬虔に崇拝していて、母親をこよなく愛する殺し屋は、安息日だから車の運転はしないが、殺しはやるのだ。
女刑事のローマン(レジーナ・キング)は堂々たる佇まいだ。ニューヨークの名物菓子ブラック&ホワイトクッキーを「たまらない」と言いながらもほんの先端しかかじらない。ニューヨークの多人種を比喩しているとされることのある菓子を本当に好きなのか、それが分からないのだ。
とにかく、トイレを借りる警官やゴミ置き場で寝ているホームレスという端役の端役まで、キャラクターが確りしていて感心する。
ローマン刑事が「反応を見ている」という尋問のルーティンや、ニューヨークに住みながらサンフランシスコ・ジャイアンツをこよなく愛するハンクの可笑しさなどを布石に使っているのも上手い。
なんの罪もない猫は災難だが、大人しくハンクのバッグに収まっているのがなんとも愛らしい。
主人公のハンクは酒に酔うと前後不覚に陥ってしまう欠点がある。根は真面目なバーテンダーだが、本当は自分はこんなところで暮らしているはずではなかったのだと思っていて、恋人に配慮のない言葉を浴びせてしまうことがあったりする。
それでも毎日母親に電話することを欠かさず、ホームレスにも親切な好青年なのだ。
多くの犠牲を払ってしまったハンクは、最後に自分のことばかり考えていたと反省するに至る。ここにハチャメチャな物語の教訓を匂わせるのだが、本当の教訓はただ一つ…
〝シートベルトはちゃんと締めましょう〟
巻き込まれ系全員悪い奴ムービー
今イチでした。
ほぼハッピーエンド
中盤までは、主人公は八方ふさがりで、逃れる道はナッシング。普通なら最後に主人公と結ばれてメリーエンドになるはずの女の子も途中で殺されちゃう。七割くらい見た時点で、「ここからの逆転とかありえるの(反語)」という印象で、悲惨な結末も覚悟しましたですよ。
でも、まあ、普通に主人公は障害を克服してくれて、最後はハッピーと呼んでいい結末。終盤まで「バッドエンドにならないよね? 大丈夫だよね!?」とハラハラさせてくれた脚本に拍手をおくりたい。
終盤に畳み掛けてくる映画
様々な人物の思惑に巻き込まれた主人公に
不幸が降り注ぎ続け、次々大切なモノを失っていく、
その中で自身が過去の過ちから目をそらしていたことに気づき、
最後に残った大切なモノである母だけは守るため、覚悟を決め立ち向かうという感じ、
様々なキャラクターの動きが合わさっていき、過去のトラウマと物語の解決が繋がるシーンはスカッとするものがある。
ただ、覚悟を決める部分が、
過去の回想が終わったあとに、突然覚悟が決まっており、コイツはどういった思考でこの結論に達したんだっけとなってしまった。
おそらく、もう一度見れば、理解できるかもしれないが、大切なシーンが誰にでもわかるように作れてはいない。
あと、最後に残った大切なモノである「母」が野球を挫折した息子に対してずっと野球の話を熱心に話し続けるのはデリカシーがない母親だなと感じ
「この母のために一生懸命戦うのか?」
となってしまった。
主人公が純朴な人間と意識付けるなら、
ただ連絡をこまめにして仲の良さを印象付けるだけで良かったのでは?
主人公がまだ野球に未練があるとわからせるのであれば、彼女が野球好きで良かったのでは?
まぁそれだと主人公が野球に最後の直前まで未練が残る作りにしづらいか⋯
主人公の成長に関しそこだけ引っかかった。
こういった多くの要素を詰め込んだ群像劇的要素と主人公の成長を合わせた作品は過去記憶になかったので、新鮮で面白かった。
ただ融合しきれてはいなかったので、
そういった部分の粗が逆に目立つなと感じた。
最後に時代設定について日本人だからかもしれないが、現代でなく1980年代と設定した理由がわからなかった。
野球の結果で有名なものがあった?
応援したくなる主人公
リズムの良い展開
誰が味方で誰が敵か、最後まで飽きさせない展開は良作。最後の空港カウンターのシーンは思わず笑ってしまった。
主人公が意外と不死身で後半に行くほどタフになっていく。本気を出せば有能な人の様だ。
98年のニューヨークの街感がよく出ているような感じでサラっと見られ...
ダーレン・アロノフスキーの新境地?
ダーレン・アロノフスキー監督と言えば「ブラック・スワン」では栄光を掴み取るための執着心と狂気を、「ザ・ホエール」では救いようのない主人公が徐々に人間らしさを取り戻して行く様を骨太でダークな作風を得意とする監督だと思っていました。
そして本作「コート・スティーリング」はそれとは異なるコメディ作品。
『えっ?あのダーレン・アロノフスキーがアクション映画を!?』
一抹の不安を抱えながらの鑑賞でした。
撮影が「ブラック・スワン」からタッグを組むマシュー・リバティークが担当していることもあって過去作からのテイストは失う事がなく楽しめた作品でた。
そして、なんと言っても主演のオースティン・バトラーの演技には好感が持てました!
バブル後オウム後のブルセラ子ギャルの頃。
GO!ジャイアンツ!
疾走感がすごかった
疾走感のある映画だった。
野球メジャーリーグのドラフト有力候補だった主人公。
しかしドラフト直前に車を運転してて交通事故を起こし、隣に座っていた友人が死んでしまい
メジャーへの夢は絶たれ、もう10年以上、バーテンダーとして「逃げの人生」を送ってる。
ある日、モヒカンの隣人から「猫を預かってくれ」と頼まれ
預かったことから、ロシア+プエルトリコの怖い奴らとか
ユダヤの敬虔ながら殺人にためらいのない怪物兄弟とか
色んな敵から命を狙われることとなる。
実際に、とても人間のできていた彼女は頭に銃弾を撃ち込まれ絶命。
この事件以降、「逃げていた」主人公は覚醒し生き延びるために必死になる。そして自分に襲い掛かってきた敵を全て倒し、最後は意外な展開を見せる。
「人生、逃げてちゃダメだ!」という強烈なメッセージだった。
1998年のNYが舞台ということで、当時の空気感とか、色んな人種がそれぞれにコミュニティをつくってることとかがリアルに再現されてた。
猫かわいい!!
ネコもモヒカンにしたら
海外に行く時に
あの人と見分けがつかなく....
そうはいかないか(笑)
テンポがよくて音楽センスが良い
どん底の生活からの大逆転満塁ホームランまでは、いろいろな過程があり、猫を預かることがきっかけになりますが、その猫ちゃんが幸運の天使みたいな感じですね❣️
過去のトラウマもあり主人公は最低の生活を送ってますが、彼女と覚悟を決めて生き方を見つめ直す時に巻き込まれた事件でその彼女も撃ち殺されてしまいます⁉️
これには驚きました。
そこからさらにまわりの人間が皆死んでいきます。
出てくる人がみんな悪人なので、簡単に人を殺していくのでゲームっぽい感じすらしますね。
最後に彼女を殺したのが誰かがわかるのも面白かったですね。
音楽のセンスもよくテンポも良いのであっという間の2時間弱でした。
ユダヤのマフィアがふりきっててかっこよかったです(≧∇≦)b
巻き込まれ犯罪
ちょっとクセのあるクライムコメディ
映画冒頭でアマチュア野球のホームスチールのシーンが出てくる。見事にサヨナラ勝ちを収めるのだが、主人公ハンクの人生はそう簡単にハッピーエンドを迎えない。そこに現実と理想のギャップを見てしまう。現実はそんなに簡単に上手くいかない…というシニカルなメッセージが感じられた。
ハンクはメジャーから声がかかるほどの将来有望な野球選手だった。しかし、自動車事故を起こして、その夢は途絶えてしまう。現在は場末の酒場でバーテンダーをしながら酒漬けの日々を送っている。一応看護師をしている恋人がいるが、母親共々サンフランシスコ・ジャイアンツの大ファンで生粋のマザコンでもある。そんな人生どんづまりな彼が隣人のトラブルに巻き込まれて散々な目に遭う…というのが本作の大筋である。
いわゆる巻き込まれ型サスペンスだが、そこかしこに意地の悪いブラックな笑いが仕込まれていて中々面白く観ることが出来た。
そして、一見するとスラップスティックなドタバタ騒動に見える本作だが、何だかんだ言って最後には教訓めいたメッセージで締めくくられる。ハンスは全ての原因が無責任な自分自身にあった…ということを自覚するに至るのだ。要は、苦い過去から目を背けていては前に進めない…ということなのだろう。
製作、監督は鬼才ダーレン・アロノフスキー。本作には同名の原作小説(未読)があり、脚本も原作者自身が務めている。
アロノフスキーと言えば、「ザ・ホエール」や「マザー!」、「ブラック・スワン」といったダークで悪夢的な作品が思い浮かぶが、本作はこれらとは一線を画した明快なエンタメ作品となっている。彼本来のエッジの利いた演出や幻惑的な映像も見当たらず、正直過去作を観ている者からすると生温く感じてしまった。
ただ、監督の中ではたまにはこういう通俗的なエンタメも撮りたいという欲求があったのかもしれない。実際、クライムサスペンス映画としては及第点の出来で、アロノフスキーの職業作家振りも中々板についているという感じがした。
ハンクを取り巻くサブキャラも物語を賑々しく盛り上げている。大金を巡って対立するロシアン・マフィアとユダヤ人のマフィア、事件の元凶となる隣人のラス、健気な恋人イヴォンヌ、そして大金の隠し場所の鍵(?)を握る飼い猫にいたるまで夫々に無駄のない立ち回りで物語を軽快に転がしている。
幾つか意表を突く展開も用意されており、特にイヴォンヌの退場については驚かさた。通常、この手の作品では主人公の傍に寄り添うヒロインは最後まで残すものだが、本作はそれを逆手に取っている。
一方、ローマン刑事の見顕しやクライマックスの展開はもう一捻り欲しい所である。容易に想像がついてしまった。
また、白昼堂々の銃撃戦や終盤の空港のシーン等、突っ込み所も幾つか目についた。
さて、時代背景が1998年ということで、当時のニューヨークの風景が懐かしく再現されているのも今作のもう一つの見所であろう。当時のニューヨークと言えば、ジュリアーニ市長による浄化政策で雑多で猥雑な街並みがすっかり小奇麗になっていた頃である。特に、チャイナタウンを舞台にした追跡劇はロケーションが上手く活かされていると思った。
また、劇中にはサンフランシスコ・ジャイアンツの試合が度々流れてくる。折しもシーズン終盤、チームがポストシーズンに進出できるかどうかという時期で、ハンスと母親は常に勝敗を気にしていた。最後の方に、かのバリー・ボンズの姿がテレビに流れて少し懐かしくなった。
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