「“ブルズアイ(大当たり)”は見えなかった…」デアデビル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
“ブルズアイ(大当たり)”は見えなかった…
公開された2003年はアメコミヒーロー映画は『ブレイド』『X-MEN』『スパイダーマン』くらい。
今と比べると毛が生えたようなもんだが、それでも当時は最近やたらとアメコミヒーロー映画が増えたなぁ…と思ったもんだ。
その3作はヒットしてシリーズ化もされたが、残念ながら本作は“ブルズアイ(大当たり)”したとは言えず…。評判もよろしくなく。
その後2015年に配信ドラマシリーズとしてリブート。3シーズンも作られる好評。演じたチャーリー・コックスは『ザ・ディフェンダース』『シー・ハルク:ザ・アトーニー』でも続投。こちら配信ドラマは見てないが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』にも登場し、今後映画でも合流しそうな…。
氾濫するアメコミヒーロー映画の中に埋もれ、すっかり黒歴史になりつつあり…。
何故今更?…と言われても。エレクトラが『デッドプール3』でカムバックするから…? いやいや、本当にただのたまたま見る機会があって。実に20年ぶりの再見。
昼は盲目ながらも敏腕弁護士、夜は法で裁けない悪人に鉄槌を下す闇のヒーロー。
2つの顔を持ったキャラ像は直球のアメコミヒーロー。
誰だってそう思うだろうが、ライバルのDCのバットマンを彷彿。あ、言い忘れたけど、こちらマーベル。
でも生い立ちや設定は似通ってる点はあるが、バットマンとはまた別。
バットマン/ブルース・ウェインは大富豪だが、デアデビルことマット・マードックはスラム育ち。周りは常に犯罪にまみれ…。
ボクサーである父から勉強をしろとよく言われる。勉強して偉くなって、ここから脱け出せ。
だがある時マットは、父が犯罪に加担する場を目撃。ショックでその場から逃げ出した時、化学薬品を浴び、失明し…。
生活困窮者な上、盲目。アメコミヒーロー映画の主人公の中でも比較者がいないほどの社会的弱者。
不幸はさらにマットを襲う。
ギャングから負けの八百長試合を持ち掛けられた父。が、試合に勝つ。当然ながら報復され、父は…。
犯罪者によって家族を奪われ、悪人どもをこの手で討伐する為に…。
確かにバットマンだが、その悲しい過去はこちらの方が深刻。
バットマン同様、超人的なスーパーパワーを持っていない。
おまけに盲目。それで悪と闘える…?
日本にもいるじゃないか、盲目のヒーローが。
目が見えない代わり、その他の感覚が研ぎ澄まされている。
特に聴力。微かな音、遠くの音、街中の雑踏の中からも助ける声が聞こえ、相手の鼓動音も聞こえる。それ故、大きな音は弱点ともなり…。
スーパーパワーはないが、身体能力は驚異的。
己の“四感”と肉体を駆使して悪と闘う。
この時ヒーロー初挑戦。ベン・アフレックが若い!
ベン・アフレックが演じるヒーローは今も昔も苦悩葛藤を抱えたヒーローが多い。
暗い生い立ちもさることながら、自分のしている事は正義か。私は悪人じゃないと言うが、その胸中は…。
複雑な内面を見せるが、ベン・アフレックのボサボサ頭と誇張し過ぎの虚ろな視線で何だかちと締まらない。
話は…
ある一件の依頼を引き受けるマット。
その背後に、街を牛耳る犯罪王キングピンの影が…。
キングピンは邪魔者消しに殺し屋ブルズアイを雇う。
圧倒的な悪の力にマット=デアデビルは単身立ち向かう…。
話自体は平淡。昨今のマーベル作品と比べると今一つ面白味に欠ける。
作品はマーベルだが、暗い作風はDCのよう。
要所要所アクションは盛り込まれ、キャストたちも身体を張っているが、ちとダサさやセンスの無さを感じる。
スタイリッシュでクールな『ブレイド』、差別や偏見やチームプレーの『X-MEN』、等身大の若者ヒーロー像『スパイダーマン』…当時のライバルヒーローと比べ特色に欠け、それなりに魅力はあるにしても不人気なのも頷ける。
とは言え、面白味もあるっちゃあある。
主演のベン・アフレック、同僚で友人役にジョン・ファヴロー、ブルズアイ役にコリン・ファレル。
後に再びアメコミヒーロー映画と関わる面々ばかり。ベン・アフレックは今度こそバットマンとなり、ジョン・ファヴローは『アイアンマン』を監督し、コリン・ファレルは『THE BATMAN/ザ・バットマン』で再びヴィランに。
エレクトラ役のジェニファー・ガーナーも先述の通り『デッドプール3』で同役にカムバック。彼女の美貌やアクションは見るものあり。だけど、マットとの出会いのシーンで街中の遊具でアクションするのは結構失笑…。
コリン・ファレルが売れっ子になった頃で、悪役を嬉々と演じている。原作では宿敵らしいが、残念ながらそれほど脅威は感じられず…。
本作、ヴィランが弱いのだ。パワー云々じゃなく、描写が。
ラスボスのキングピン。マーベル・コミックの中でも名が上がるほどのスーパーヴィラン。この時は全く知らなかったが、後々『スパイダーマン:スパイダーバース』でもヴィランとして登場。これで覚えた。
肩書きは犯罪王だが、人間離れした体格と力。
巨体の故マイケル・クラーク・ダンカンはイメージに合うが、こちらもインパクトと脅威に欠けた。ちなみに配信ドラマでキングピンを演じたヴィンセント・ドノフリオは好評らしい。
結局面白味あると感じたのはキャストや配役。作品自体ではなく…。堪忍して!
映画はこれ一本になってしまったが、配信ドラマでリブート復活。
今アメコミはマルチバース流行る中、こちらのデアデビルも復活するなんて事も…??
だとしたら本当に“命知らず”。