「人物づくりの即興性に注目」ハード・トゥルース 母の日に願うこと milouさんの映画レビュー(感想・評価)
人物づくりの即興性に注目
ロンドンやNYでは去年の秋に上映されていた作品。今回日本の宣伝では触れていないようですが、この映画の最大の注目ポイントは、その人物像。
この映画に写し取られているのは、撮影スタジオやロケ現場に俳優と監督が行って、そこで長い議論と即興的な演技、カメラテストを繰りかえしながら「その場で」作りあげられた登場人物たちと言葉・表現。それを精密な脚本に起こしてカメラを回すので、「即興的な演技」「アドリブ撮影」ではないんですね。あくまでクラシカルな映画作りです。しかし、そこに映っているものは俳優たちの個性と人生が色濃く反映したその場かぎりの姿、という面白さ。
だからこの映画は、なんということのない話であって、主人公は終始ぶつぶつ文句を言っているだけなのに、画面は『ドライブ・マイ・カー』のようにスリリングです。半ばドキュメンタリーでもあり、半ばフィクションでもある。その緊張の糸を切らないように、音楽はきわめて抑制的にしか使われていません。
これを単にハリウッドのよくある感動家族ドラマと考えると、その正体をとらえそこなってしまいます。俳優と俳優の関わり方の迫真性に、ぜひ注目してください!
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