「“表現者”ビョーク」ダンサー・イン・ザ・ダーク 77さんの映画レビュー(感想・評価)
“表現者”ビョーク
マイブームな欧州映画。
普通に生活してると一番馴染みがないというか敷居の高いヨーロッパですが、
あの繊細な感性はいくつも大陸を隔ててるのにとても日本人の肌に合うと思うのです。
ハリウッドも大っっ好きですが、ハリウッドは良くも悪くも「ハリウッド的」。
自分の中の新しいスイッチを押してくれるような発見が欧州映画にはたくさんあるので、
もっと観たいしもっとたくさんの日本人に触れてほしい。
この映画もドグマ95をほぼ体現してる+ジャンプカットを多様してる+ミュージカルということでとても新鮮でした。
アートです。
現実と空想の色調の変化にも注目してほしいです。
女優ビョークには表現するということについて深く考えさせられました。
恥ずかしながら私はこの映画を観るまで歌手ビョークのことを全然知りませんでした。
でもすぐに彼女の祈るような歌声に魅了されてしまいました。
歌だけじゃなく表情豊かな演技にも。
歌うことと演じることに隔たりを感じない、まさに表現者という言葉がぴったりの彼女。
なかなかあんなに心を丸裸にできるものじゃありません。
素晴らしかったです。
すごく好きな話かと聞かれたらそうではないけど、それだけで観る価値のある映画だと思います。
出演者が音楽を担当っていうのも“映画を一緒に創る”という感じがして好きなポイントです。
特にに歌詞が数字だけの歌、演出にものすごく惹かれました。
果たしてこのお話はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか。
不思議と涙は出ませんでした。
本当にピュアで愛情深く義理堅いセルマ。
そして不器用で素直すぎるセルマ。
“いい人”な弱者が社会的にも本来の意味でも殺されてしまう救われないお話だけど、
彼女は何より大事な目的を果たして、恐怖も乗り越え納得して天国にいった。
私にはあの愛情は独りよがりなようにも思えました。
ジーンは目が見えなくなったってお母さんと一緒にいたかったのかもしれない、
遺伝するとわかっていても赤ちゃんを抱きたかったセルマと同じように。
ジーンにどうしたい?なんて聞いても辛い思いをさせるだけだから難しいんですけどね。
キャリーの厳しい優しさだって、セルマからしたら有難迷惑になるんだから愛情なんて元々独りよがりなのかもしれません。
(それにしてもキャリーは素敵な女性でした。看守さんも。)
そう考えると少しやるせないけどそういう上に家族があって社会がある。
そして○○のためなら、という愛情が各々にあるからそれが成り立つ。
シビアだけど暖かい。
子供を産むとまた見方が変わるのかもしれません。
目が見えないということは色んな障害の中で1番不安や孤独を感じるんじゃないかなと思います。
そして見えないからこそ感じる音や香や触感。
中でもやっぱり音楽の力は偉大だと思います。
セルマの空想にすごく納得してしまいました。
そしてある種の現実逃避だった歌を執行前に現実の世界で歌うシーンはすごく良かったです。
こうして映画を観れて考えて感想を書けるっていう何気ないことも本当に素晴らしいことだなと改めて思いました。
セルマは天国では人に上手に甘えれらるといいなあ。
今すごくミュージカルを見に行きたい!!w