「観た後どっと疲れる」ダンサー・イン・ザ・ダーク あかねちんさんの映画レビュー(感想・評価)
観た後どっと疲れる
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ミュージカル映画は大好きだが”鬱映画”といわれる本作はなんとなく観るのを避けていたのですが4K版が上映されると知り鑑賞。
途中からほとんど泣きっぱなしでラストの衝撃は異常。鑑賞者の感情を上げては下げるラース・フォン・トリアーの監督性が見える。観た後どっと疲れた。
母と息子の極限の不器用な愛と主人公セルマのピュアさや約束を守る信念の強さに、心揺さぶられながらも生死が左右されるだけにとてももどかしさを感じたが、世の中のどうしようもない、抜けられない負のスパイラルの最悪なパターンをまざまざと観ている感覚になりとても怖くなった。
人生のどん底を味わった日に信じていた人に盗みに入られ、濡れ衣を着せられ、救いようがない。。
警察が盗むわけない。家主が盗むわけないという潜入感から世の中の不条理さもみえる。貧乏人な正直者は救われないこの構図にただただやるせない気持ちになった。
作中優しい人が出てこないいないわけではないし、特にカトリーヌ・ドヌーヴ演じるキャシーとの友情やジェフ、看守の優しさには救われる。ただその優しさにも、セルマを救うか息子を救うかで限界が生まれてしまう流れが非常に悲しすぎる。
セルマの死刑執行までのシーンは観るのが本当につらかった。
「最後までミュージカルは観ない。最後から二番目の曲で観るのをやめる」と言っていたセルマが死刑台に立ってから歌う、最後から二番目のミュージカルをテーマにした歌。
大きな悲しさがありながらも、最後の最後にキャシーにメガネを渡され、息子の手術が成功したことを知れたのは最大の喜びを感じながら最期をむかえたと信じたい。
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