「そりゃ凄いですよ!」ダンサー・イン・ザ・ダーク Rewind Thatさんの映画レビュー(感想・評価)
そりゃ凄いですよ!
なんというべきか…凄まじい映画ですね、この映画を観た方はその点では全員一致すると思います。
こんなに独特な映像なのにとても自然に鑑賞できるというのは、もはやどういうことなんでしょう?カメラワークはドキュメント風とでも言いましょうか、監視カメラの映像もリズムを持っていかれるアクセントになっていました。何というか、我々鑑賞者の意識と、カメラの向こう側の演技の意識と、あとそのカメラを構えている撮影側の意識が存在する様に感じます。普通なら撮影側の意識は感じない、感じさせない様にする物だと思いますが、最初からまさにドキュメンタリーの様にハッキリとそれを感じました。もちろんすぐ慣れていきますが、その意識がある事によって本当に起きた事実の様に感じてくる様な物凄くリアリティのある映画でした。
そう、普通に考えれば全然リアルな設定ではないし、全然リアルな展開でもありませんね。アメリカの司法に詳しい訳ではありませんが、いくら警官殺しの強盗殺人だって、一発死刑は考えにくいものです。その説得力がウルトラC級の飛び道具的な撮影手法で、空前絶後の大仕事をしています。
そしてビョークの演技が凄すぎて震えました。観賞後にこの女優さんが噂に聞くビョークなのかと調べて初めて知ったのですが、とにかく半端じゃなかったです。他の出演者の方たちも凄かったです。特に看守役の方とビル役の方は胸が熱くなる演技でした。
音楽も良かったです!世界観そのまま、この鬼鬱ミュージカルを引き立てています。トムヨークとビョーク?そりゃあ 凄いに決まってるでしょうが!
工場のミュージカルシーンはいやいや頼むから集中してくれと、めちゃくちゃドキドキしながら祈る様な気持ちで観てしまいました。
セルマは愚かです。それは否定できないでしょう。しかしその愚かさには些かの悪意もありません。心から他者を思い、ただ誠実にあろうとするなかで、災を招いてしまったのです。おそらく意図的でしょうが、彼女の宗教的な描写はほとんどありませんでした。まあおそらくはキリスト教系であろうかと思われます。描写しない事によって際立って彼女の聖性が強調されている様に感じました。おそらくこの映画の鑑賞者は、彼女の周りにいる人たちに感情移入する様に作られているのではないのでしょうか。だってセルマに感情移入出来ないでしょう。余りに尊いし、余りに愚かです。彼女を取り巻く我々と同じ価値観を持つ人たちの感情と葛藤がこの映画の小さくない鑑賞点だと思います。
こうならないでくれ…!と願う鑑賞者をバカにするかの様にどんどん最悪に向かってストーリーは進みます。セルマが最後に最低限生きた意味を感じ、救われたとあのラストで解釈しました。そういう点では彼女にとってはギリギリハッピーエンド?と言っても過言ではないでしょうか(過言か?)。少なくとも私はあのラストに救われました。納得できました。寝付きもそんなに悪くなかったです。
映画館以外での鑑賞を一切考慮せずに作られた作品のように感じました。願わくばいつか劇場でこの作品をまた観れたらと、心から思います。
コメント失礼いたします。
ご存知かもと思いますが、
今年の12月、国内最後の劇場公開があります。
私は先日たまたま先行上映で観れました。映画館で観れて本当に良かった!と思いました。