「素晴らしい映画。美しく芸術的な作品。」ダンサー・イン・ザ・ダーク わんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい映画。美しく芸術的な作品。
この映画を絶望的、救いがないと断じるのは浅はかだ。
主人公が死を目前にして歌ったのは「最後から2番目の歌」。劇中でも主人公が語ったように、ミュージカルは最後から2番目の歌で劇場を出てしまえば、終わることはない。彼女の人生は終わったのではない。愛する息子の未来に託されたのである。
主人公の弱々しさや自己中心さに共感できないとの感想もあるが、それも読み違いである。
主人公はひたすらに優しく純粋である。だからこそ、身を賭して彼女を守ろうとする友人が存在するのだ。彼女が法廷で大事なことに口を閉ざすのも、友人との約束を純粋なまでに守ろうとし、そして息子の未来を守り抜こうとするからである。主人公はむしろ強い女性である。
遺伝するのが分かっていながら子どもを産んだのは、ただ自分の子をこの腕に抱きたいという女性としての当たり前の願望からである。それを自己中心的だとする考えには、障害者は子どもを産んではならないという危険な発想が隠れている。主人公は自己中心的ではなく、人として当たり前とも言える感情に身を任せただけなのである。
ミュージカルシーンに違和感を覚える人もいるかも知れないが、このシーンの必要性についても劇中での主人公のセリフによって説明されている。
この明るく楽しいミュージカルシーンは、容赦なく主人公を襲う悲しい現実を、大好きなミュージカルを妄想することによって克服しようとする主人公の心情表現である。この悲しい現実と明るく楽しい妄想のコントラストに、この映画の芸術性が強く表れている。
そして、ホームビデオのような映像表現は、リアリティと緊張感を高め、観る者を物語の中に引き込んでいく。
主人公の美しく、純粋な強さと愛情。
類い稀な芸術的映像表現。
素晴らしい映画だ。
決して、後味の悪い作品ではない。
もう一度と言わず、何度観てもいいと思える作品。
本日新宿ピカデリーで二回目の観賞をいたしました。二回めでもやはり凄まじい作品ですね。瞬きするのも忘れるほどで見いってしまいました。あのミュージカルシーンの時は私も少し心が救われました。