「期待と実感とのギャップが大きい作品」天国と地獄 Highest 2 Lowest ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待と実感とのギャップが大きい作品
黒澤明監督作は観ておらず、本作に臨んだ。
黒澤明の「天国と地獄」の再解釈×デンゼル・ワシントン×スパイク・リーという
組み合わせに大いに期待した。
冒頭から主人公キング(デンゼル・ワシントン)の成功者っぷり、お金持ちっぷりを
たっぷり見せつけられ、そりゃあこの主人公の子どもだったら誘拐されてもおかしくない
的なスタート。
けど、誘拐されたのは盟友の子どもだった…。。。
誘拐犯への身代金受け渡しのためのシーン、
電車内外の緊迫感と身代金をパスしてバイクで姿をくらます誘拐犯vs警察の構図など、
見ごたえがあった一方で、プエルトリコ祭り的なシーン(その中に犯人の協力者もいる)が
長く冗長に感じたのは残念。
電車内のヤンキースファンのくだり、いる!?と思った。
驚くべきは、犯人のラッパーって、え!?ひとり?そんなわけないよね。
キングvsラッパーの構図&追走劇で、仲間は!?…とかを
考えてしまい、壮大な犯罪なのかと思いきや、こいつにここまでしてやられたのか!?は
実に残念であった。
ラッパーの奥さんがキングの奥さんのブレスレットを付けていて、
キングがラッパーを犯人として確信するシーンは良かったが、
実態の家への立ち入りや逮捕シーンなど実に物足りなかった。
まあ、そこが重要ではなく、盟友の子どものために身代金を払うのか…のキングの葛藤、
そして人として正しい選択をする、それはビジネスでも同様に、自分のやりたいことをやる
といったキングの心の変遷が、本作のキモだと思うのだが、
先述したような描き方によって、随分と大事なことが希薄になった気がする。
したがい、私の抱いていた期待を超えることはできず、残念な印象を持ってしまった。
演出についても、『エミリア・ペレス』よろしくセリフがRapに変わっていき
曲にのせていくといったことをやっても良かったのではないかと。
キングvsラッパーのラップ合戦的なセリフの応酬はまさにこれだともっと面白かったのに。
しかしながら、デンゼル・ワシントンの演技は素晴らしいし、見ごたえもあったのは事実。
私はこれだけで満足。
映画が始まるまでA24が共同制作とは知らなかったが、こういうチャレンジは是非とも
続けてほしいと思う。