ホーリー・カウのレビュー・感想・評価
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葛藤を抱えた青年が一歩大人へと踏み出す様を描く
トトンヌは、少年と呼ぶにはもう身勝手が許されない年頃。かといって大人と呼ぶにはまだ早い。そんな”宙ぶらりん状態”の主人公が突如として一家の働き手となるーーー。出演者の誰もが演技経験のない素人だらけの本作は、この農村エリア出身の新人監督が手掛けているだけあって、若者らのナチュラルで時に生々しい表情や心情を有機的に引き出し、発酵、熟成させた一作である。とりわけ主演俳優の相貌はどこか若い頃のジェイミー・ベルを彷彿とさせるところがあり、目の奥に怒り、不安、戸惑いが渦巻く様はとても魅力的。葛藤を抱えながら大人への階段を昇っていくその姿は、ご当地特産のコンテチーズの製造過程と絶妙に重なる。ラストも決して絵空事の夢を掴むようなものではなく、あくまで「一歩踏み出す」というレベルに抑制されている点が共感を呼ぶ。小さな物語ではあるものの、これまで描かれてこなかった酪農生活のリアルに目を向けさせてくれる良作だ。
ラストが気持ちいい
ラストが気持ちいいというか、天晴れ!と思った。
父を亡くしたトトンヌは妹の面倒を見ながら生計も
立てなければならない状況というのは
同情してしまうが、
トトンヌは、ちゃんと働けない気質なのだろうな。
肝心のチーズつくりも生乳を盗んでという、
とにかく何をやってもうまくいかないし、
そもそもちゃんと学んでからやろうということにも
気づかない。
若いからか?孤独だからか?仲間もろくでなし多し。
最も素晴らしいのは妹。妹の存在にはトトンヌも癒されたのでは。
それからトトンヌを赦す彼女の存在。
彼女のラストのパフォーマンスを観るための作品かも。
緩急見事なフランス産傑作青春映画
グーグルのAIといつも映画について情報交換している。自分の好きな映画の傾向から、AIがこの作品は絶対に劇場鑑賞すべき、と勧めてきた。各映画サイトの点数があまり高くないから期待していなかったが、危うく、こんなに素敵な映画を見逃すところだった。完璧だった。自分が映画に求めるものが、ぎゅっと詰まった名作。自分が見てきた青春映画/ドラマというジャンルなら、映画ではなく申し訳ないが「北の国から'87初恋」に次いで、ホーリー・カウが生涯第二位になった。
シンプルな作り。一見荒々しくて、でも繊細で優しい作品。物語に不要な一切の要素は省かれ、青春ドラマとしてトトンヌの成長を表現するために必要なことは全部入っている。さらに、肝心なところは逃げずに、撮影が大変であろうシーンをじっくりと見せてくれた。ここには映画として究極の洗練があった。
前半、トトンヌが怠惰な生活を送り、対人関係も雑に振る舞う間は、映画自体も、構成なのか、映像なのか、わざと洗練を排除して粗雑な印象を受けるように作られている感じがした。しかし、最初は牛乳を盗むためだった牧場の彼女との間に、少し想い入れが芽生えてきて、自分の仲間との間に挟まれたトトンヌに人間らしい葛藤が生じてきたあたりから、映画の質もぐっと高まってきた。主人公の成長と、映画自体の構成力のカーブを合わせるとは(意図したかどうか分からないが)、物語がシンプルな分、やることはやってる監督のセンスが見事だなと感じた。
この映画は一方では省略をきらい、大変なことを真正面から丁寧に描く。一つは牛の出産とともに主人公に葛藤が生まれる大切な場面。きめ細やかにリアルな描写があった。どこまでが実際の映像で、どこからが加工されていたかは分からないが、あの撮影には沢山の苦労があっただろう。次に、妹のリードにより二人で初めてチーズ作りに成功する場面。丹念に各工程を見せつつ、兄妹の絆が深まっていることをじっくり見せる。ぼくの涙がどんどん溢れてきて、良いチーズが出来て欲しいと願いながらスクリーンを見つめた。物語をわかり易く伝えるためのエピソードの織り込み方と、人間ドラマとして面倒を厭わずにじっくりと描く場面、この対照が上手く、センスに唸らされた。物語自体はありがちなのに、監督の演出センスと俳優陣の自然体の演技が重なり、こんなに素晴らしい映画を久しぶりに観た、と爽やかな感動に包まれた。
グーグルAIは、やはりカンヌでの受賞実績と、フランス国内での興行的な成功を重視したのだろうか。この名作の劇場鑑賞を激推ししてくれたことに感謝したい。
盗◯物語
数日間心に残る、青春 お仕事映画でチャレンジ物でもある。 監督のル...
数日間心に残る、青春 お仕事映画でチャレンジ物でもある。
監督のルイーズ・クルヴォワジエは、本作の舞台であるフランスのジュラ地方で育った方で、キャストには地元の演技未経験者を起用し、農場を営む監督の家族が音楽や美術スタッフとして参加。ジュラ山地が生み出す壮大な自然の景色と共に、美しいだけでない農村のリアルな暮らしに確かな息吹を与えている。(一部引用)
エッチなシーンがやらしく無い。
タイトルの「HOLY COW」とは「マジかよ!」「なんてこった!」など感嘆を表す言葉。
この映画の兄と妹を『火垂るの墓』と比べる人がいるらしい。戦時中の空襲の生き残り兄妹とは比べられない。私はそう思う。
お兄ちゃんが好き
フランスの片田舎の不良達が、無茶やって調子に乗って失敗もするけど、最後は入賞してめでたしめでたしなのかなぁと思ってた。
身勝手で人の気持ちを汲むことも出来ない悪ガキって感じの子供だけど、友達の方が少しばかり優しくて許してくれる。
友達っていいなぁ。暇だからつるんでるって言うだけでもなく、幼い妹の面倒も見てくれてる。
幼い妹は、母親みたいにお兄ちゃんのダメっぷりを誰よりも理解してるけど、お兄ちゃんが大好きで信用してる。
最後のシーンでお兄ちゃんの友達に掛けより、抱き上げて貰った時の幼い妹の誇らしげで嬉しそうな顔を見たら泣けた。
お兄ちゃん、あんな酷い事してんのに、許してくれる寛大な彼女を大事にしてね。
伝統的なチーズ作りが見られて、アルプスの少女ハイジのシーンのようで楽しかった。咥えタバコかぁーって衛生面で気になったなぁ。
途中で終わった感じ
華やかさのない地の青春と、飾り気のないリアルな展開を淡々と描き切った本作、フランスでサプライズヒットしたらしい。
父親が飲酒運転で事故死。やんちゃな息子は生活の為に牧場で働くが、そこの息子とケンカして首になり、みよう見真似で親父が作っていたチーズ作り始める…という拝見するまではサクセスストーリーかと思っていた。
しかし生乳や作成過程に必要な物は盗んだもので、正直、個人的に青春を盾に犯罪許される系はあんまし感情移入や応援はできない。
努力していないんじゃなくて努力の種類・方向性が違和感しかなかった。
色々社会的に間違っている。
ただその方向性が少しずつ良いとされる方向に傾きつつある過程を観れては良かったし、小さな妹想いなのはよかった。
改めて環境や立ち位置って大切だなと思う映画だった。
これまたラストがびっくりしたが…
フランス映画らしい。
日本映画にはない終わり方。
ひねくれたBoy meets Girlのお話し
気持ち良く帰れる映画!
冒頭のシーンを見て、1日ほぼ50km近くを歩き通したという、韓国人の超健脚の若い女性が、一人でサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩いていた時に、自転車に乗った3人組のボケ・ガキ共に、青いトマトを投げつけられたという話を聞いていたので、そんなボケ・ガキの話は見たくないなと思っていたのですが、映画館を出る時には、久し振りに気持ち良く帰れる映画でした!
よくも何も考えずにチーズ作りが出来ると思い、行動した無知な18歳の青年が、奇想天外な発想で、いくらお金がないとはいえ材料を盗んで、チーズ作りを始めたのにも驚きましたが、この映画が18禁でないのにも驚き、またフランスでは16歳からワイン・ビール、18歳から蒸留酒の飲酒が可能な事にも驚きました
今後の主人公の金メダル獲得を、応援したい気持ちになった映画でした!
牛の匂いがする映画。音楽が最高。
選びようのない田舎の現実、でもうっすら希望はある
人生は厳しい。コスパ、ダイパ優先だけでは、そう簡単にはいかない。ましてズルしては、上手く行きっこない。苦労、実体験、失敗、学びを通して成長していく、泥くさいけど確実に。
そこまでやってもコンテストで勝つのは難しい、というか参加すら出来ない。でも、それでいいんじゃないか。冒頭の自堕落な姿からは想像できないくらい真剣な表情になった。
それに信頼できる仲間がいるのはやはり大きい。喧嘩をしても修復可能なかけがえない存在。
カウガール マリ=リーズの明るく逞しいキャラがいい。二人の行く末に希望を感じた。今までと同じ田舎にいたとしても。
面白かったです!すごく良かった!
面白かったです!すごく良かった!
☆出演してるのは監督が住んでるジュラ町の素人の人達のみ。ヒロイン役は刑務所の看守。みんなその町に本当に住んでる人だから凄く町の雰囲気があって素敵でした。演技も上手かった。
☆友達との関係がいい!
友達と喧嘩してても困ってたら助けに行くんだなあ。凄く好きなシーン!
☆小さいのに妹が凄くしっかりしててお兄ちゃんの背中を押すんだなぁ。可愛かった。
☆何故かいいシーンは台詞がない。観てのお楽しみ。是非映画館で。
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フランスの酪農地帯に住む18才のトトンヌ。酪農家の父が死に7才の妹と残される。
働きに出るが今までフラフラしていて働いたことが無かったので要領を得ず叱られたり苛めに合ったり…。
チーズの品評会で優勝すれば賞金が出ると知り友達に手伝ってもらいながらチーズ作りに挑戦するが…
微妙
昔を思い出すな~
25-122
コンテチーズに対するリスペクトは?
懸命に生きる諦念
この映画の肝は、ここに登場する若者達の人生における選択肢の少なさだと思う。これは、都会に生まれた者や、地方に生まれてそこから出たことがない者にはかなり気付きにくい感覚だ。それが証拠にここに登場する若者達には閉塞感がない。気付いてないからだ。この社会を割り切って屈託なく過ごしている。それは、いくらかの大人達にもそう言うところが見える。そう言う者達は、縦のつながりでもしがらみや運命を難なく受け入れて、屈託なく関係性を保っていくしかない。
主人公は父親を亡くして、幼い妹を養っていかなければいけないが、恨み言を言うわけでもないし、妹を切り捨てることもしない。恋心を抱きながら簡単に女性を裏切るが、これも屈託なく謝罪して済まそうとする。友人にも同じような事を。それぞれにぶつかり合ったり許し合ったりもするのだが、それは何もヒューマニズムではない。彼等がこの社会で選択肢がないからだ。だから、全てを受け入れていく。いかざるを得ないとも言えるけど。その人間模様が繊細にそして軽快に描かれていて、それが何とも愛おしい!人と人は争い続けることはできないし、慰め合い続けることもできない。受け入れて、ある意味添い遂げるしかないのである。
裏切られた女性が最後主人公に、満面の笑顔であるサインを送る。諦念の映画かもしれないけど、やっぱりその笑顔はホッとさせてくれる。都会の閉塞感を描くケン・ローチ作品とはまた違う澄んだ希望を感じさせてくれるのだ。
反抗期の痛みと、乳製品への回帰と
フランスで100万人動員だそうですね!
この数、けっこう若者たちが映画館へ行ったのではないかなぁ。そんな気がします。
とっても素朴で、ありふれたフランス・ジュラ県の酪農家の話。
地味じゃないですか。ストーリーはのんびりしているし、きっと若者好みでは無くて、寝落ちの危険度も有ります(笑)
でも「100万人」には理由がありそうです。
トピックは恐らくふたつです、「満たされない時代だからこそのソウルフードへの回帰」と「若者たちの足掻きのリアル」。このマッチングですね。
チーズ、ワイン、味噌。
どれも加工食品としては人類最古のものです。元々は思いがけず自然発生的に出来上がってしまった食べものの部類で、
どれも発酵食品なんですよね。
そして発酵食品は、その土地の土壌や風土、そして住む人と共にあった「酵母」が物を言わせます。テロワールです。家庭の味です。
土地土地のチーズは、村の特産でありますし、チーズを製造する人たちがそれぞれの家庭に持っている酵母が醸してくれる「チーズ=それは家族」のようなもの。
でも家庭に反発して苦しむ盛りの=反抗期の不良少年にとっては、その”糠味噌くささ“が何よりも拒絶したい、たまらなくイヤな存在なのでね(笑)
映画はそこが本当にうまく描けている。
親や家業に縛られることからなんとか脱出したいあの年代にとっては「土着のチーズ」と「自分」は究極にバッティングするトピックだと僕は感じるのです。そこが面白い。
・・
僕もチーズは好きで、高校時代には昼食には堅パンとチーズの塊を持って部室で過ごしてました。
「ハイジみたいだ!」と部員から驚かれましたね。
柔らかいチーズには柔らかいワイン。
強いチーズには強いワイン。人の心持ちや成長に合わせてチーズもワインも選べるのです。
【 Holy Cow! 】
マジかよ!なんてこったい!
緩急つけながら兄ちゃんが妹を思いやるその気持ちが絶品でした。悪ガキ仲間たちの「友だち思いの連帯」にも優しさが溢れます。
◆失敗作の初めてのコンテチーズを牛舎にそっと返してくる沁みるシーン。
◆「父親の死」と「仔牛の゙誕生」。
安直なハッピーエンドではなかったからこそ、この作品は味わいが深くなったのだと思います。
◆エンディングでの“彼女の大サービス”がまた はっちゃけてて、愛がこもってて、とてもいいじゃないですか!(笑)
土や藁の匂いを嗅ぎながらのセックスや牛のお産の光景には、永島敏行と“牛のような”石田えりさんとの「遠雷」なんかを思い出しましたね。
・・
東座は今夜は僕のためだけに貸し切り上映。義理の弟さんが映写機の担当。
館主の合木こずえさんはなぜか一歩後ろに下がって、どうしたことか照れた笑顔です。お客さん一人だって全然いいじゃないですか♪
HolyCow!いい味出してました。
「合木さん、帰りにスーパーで何かチーズを見繕ってきますね」。
+ネット通販で、
本作のドラマの舞台ブルゴーニュ、ジュラ県産の
①コンテチーズ。
②そしてまさしく同地のワイン⇒サヴァニャン種の黄色がかった白ワイン。
すぐに発注しました。映画にもブドウ畑が映っていたのを見逃しません。届くのが楽しみです。
白ワインとチーズの組み合わせは初めて。胸が躍りますよ。
・・
ではでは、
元ワイン造醸所勤務の きりんでした
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