「おくりびと」サッパルー!街を騒がす幽霊が元カノだった件 toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
おくりびと
タイ語題のสัปเหร่อ(サッパルー)だけだと何のこっちゃ?
となるので配給会社が苦心して考えたと思われる日本語題。
英語題のThe Undertakerも訳せば「葬儀屋」だけど、作品の
世界観が伝わらない。説明的な日本語題を好まない自分だが
この映画に関しては興味を引いてなかなか良いと思った。
日本語題から連想するのはホラーコメディー。でもホラーとしては
そんなに怖くないしコメディーとしては笑えるところが少ない、
中途半端な内容だった。マルチバースがあったりして特定のジャンルに
収まり切れない、ごった煮のような感じ。
「街を騒がす幽霊」がそもそも何でこの世を去り、何のために
現れて何をしたかったのかがよく分からなかった。そして幽霊の
元カレである主人公とどれだけ強い絆で結ばれていたかの描写が
足りなくて、幽体離脱の術を会得してまで会いたいと願う気持ちが
理解できなかった。最後は成仏できたの?とか疑問点がたくさんあった。
さらに言えばあの終わり方。主人公は一途に元カノのことを思い続けた
はずなのにそれってあり?と主人公に共感できなかった。Thailandなので
マイペンライ(問題ない、なんくるないさ)なのかな。
幽霊と元カレの話が中心となるが、物語は街でただひとりの葬儀屋と
その息子についての話も同じくらいの比重で進む。
幽霊を怖がり葬儀屋の後継ぎは御免だと言う息子だったが、手伝いを
する羽目になり・・・彼はやがて「おくりびと」になるのか?
それは本編でご確認を。
タイ東北部のイサーン地方が舞台で、田舎の風景やその地方独特の
生活習慣や文化・死生観などが見られた。定職に就いていなさそうな
人が昼間っから酒を飲んでいたり犬が自由に歩き回っていたり。出家した
けど今風の生活をしている僧侶もいた。そんな映像すべてがThailand大好き
な自分にはご馳走だった。(評価が甘いのはThailand好きが影響)
葬儀の段取りなど、中華系の家族だった「おばあちゃんと僕の約束」
とは全く違っていてそういうところも興味深かった。
おばあちゃんと言えば、終盤で主人公を慰めるおばあちゃんが良い味を
出していて、物語に今一共感できなかったのにそこだけウルっと来た。