「実話ベースな分、思考力と共感力を問われるが心が豊かになる」栄光のバックホーム きょんさんの映画レビュー(感想・評価)
実話ベースな分、思考力と共感力を問われるが心が豊かになる
まず、この映画が実話ベースであることを忘れてはならない。
製作過程については余程のファンでなければ把握していないと思われるが、横田慎太郎について一切の情報を持たずに鑑賞するのは少々難しいかもしれない。それを前提としてレビューしたい。
プロアマ問わず野球ファンである自分にとって、横田慎太郎の人生が映画化されることは大変嬉しいことだった。
この映画は別の結末が用意されていたようだし、全ての人がそれを望んでいたと思う。
しかし多くのプロ野球ファンが周知の通り、結末は変わってしまった。
製作にあたりヨコ自身が関わっていたこと、きっと彼もこの映画の完成を皆と祝いたかったのだろう。中盤まで駆け足で話が進んでしまい少し拍子抜けしていたのだが、そもそも後半の展開は誰も望んでいなかったと思うと、こればかりは誰も責められない。
だが中盤からラストにかけての慎重で丁寧な描写は、事実を受け止めた上でヨコに対し最大限の敬意を表していたと思う。
これはお涙頂戴ではない。
生きることの素晴らしさ、儚さ、苦しさを28歳の青年とその家族が真っ向から突きつけてくれたと思う。
自分を登場人物それぞれに立場を置き換えることができるか、思考力と共感力が問われると思う。
おそらく、誰一人として軽く描きたくなかったのだろう。その想いが強すぎると感じた場面はいくつかあったが、ヨコの短すぎる人生とその人生に関わった全ての人達をしっかり掬い上げたかったのだと感じている。
またNPB、高野連、関係各所からユニフォームなどの使用許可を得られていたことも、彼の人生を出来るだけ忠実に描くことができた大きな要因になっていたと思う。
自分は人生の折り返しに差し掛かっているが、彼のような生き方ができるか分からない。
しかし、この作品に出会えたことは大きな財産になった。
野球を知らない人やヨコと同世代の人に是非観てほしい作品だった。
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