「横田慎太郎を知る映画ではなく、彼を深く知っている人に向けた映画だと思った」栄光のバックホーム Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
横田慎太郎を知る映画ではなく、彼を深く知っている人に向けた映画だと思った
2025.11.29 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(135分、G)
原作は横田慎太郎の自伝『奇跡のバックホーム』&中井由梨子『栄光のバックホーム』
若くしてキャリアを終え、闘病生活に入ったプロ野球選手の半生を描いた伝記映画
監督は秋山純
脚本は中井由梨子
物語は、2023年の7月19日に、慎太郎(松谷鷹也)の遺灰と共にある場所に向かう家族が描かれて始まる
母・まなみ(鈴木京香)はこれまでの慎太郎のことを思い出しながら、慎太郎と約束をした阪神タイガースのOB・川藤(柄本明)の向かう先を見守っていた
2001年頃、6歳になった慎太郎は、テレビのプロ野球中継を食い入るように見ていた
その後、手作りのボールを使って練習を始めた慎太郎は、メキメキと力をつけて、鹿児島実業高校に入った
そこでも1年から中軸を任されるなど、周囲の期待を一心に背負っていた
だが、3年の夏、決勝で樟南高校に敗れた慎太郎は甲子園でプレイをすることはできなかった
それでも、野球の神様は彼の努力を認め、阪神タイガースのドラフト2位指名を受けることになったのである
虎風荘に入寮した慎太郎は、そこで1年先輩の北條(前田拳太郎)可愛がられ、番記者の遠藤(草川拓弥)からも注目されるようになっていく
とんとん拍子で一軍への道を歩むものの、プロの壁は分厚くて、あっさりと二軍に戻ってしまう
二軍監督の平田(大森南朋)からは「頭を使ってプレイをしろ」と言われてしまうものの、彼にはその言葉の意味がわからないままだったのである
映画は、奇跡のバックホームと言われるポイントが中盤に設定されていて、後半は闘病生活と家族の関わりがメインとなっていた
特に母親との関わりがメインとなっていて、父・真之(高橋克典)、姉・真子(山崎紘菜)との絡みも用意されている
サブキャラにかなりの重鎮が登場し、それぞれに見せ場を配置している、といった感じになっている
印象としては、「描きたいものを全て撮って、ひとつ残さず使ったのかな」という感じで、その為か134分という長さになっていた
感覚的には「バランスが悪いかな」という感じで、涙腺崩壊ポイントも意図と若干ズレているように思えた
慎太郎目線だと、復帰と講演に向けた意地のようなものが強くて、そこに至る過程が重視されている
なので、それが成就されたシーンは感動を呼ぶのだと思う
対して、母親目線だと、その時に向かうカウントダウンというものがあって、そこに向けて「家族が一丸となって支える」というマインドが強くなっていく
それゆえに、それぞれの家族の想い、その別れという部分に重きを置くことになる
これらのシーンを感動ポイントと取るか、少し長いなと感じるかはそれぞれの感覚に依ると思うが、個人的には「かなり長いな」と感じた
このあたりは、存命の家族への配慮もあるだろうし、映画の軸をここに置いているので仕方ないのだが、死の際に際しては心情を説明しすぎかな、と思った
いずれにせよ、慎太郎への思い入れの強さが評価軸になる作品で、あればあるほど評価が高くなる作品だと思う
それだけ作品が慎太郎に寄り添ってきた面があるので、それと距離がありすぎると冷静に見てしまうのではないだろうか
個人的には冷静にひとつの映画として観るというスタンスだったのでこのような感想になるのだが、映画が目指している方向が違うのでやむを得ないのかな、と思った
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