「エンタメ社会派ドラマ&ド派手なアクション」プロセキューター かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメ社会派ドラマ&ド派手なアクション
面白かった。
実話をもとにした法廷劇と、アクションが同時に楽しめる大変お得な映画でした。
元刑事のフォク検事が、初めて担当した事件の中にいくつもの疑問点と矛盾を見つけ、正義感に突き動かされて冤罪を着せられた若者を救おうと、司法の闇に挑戦する話。
ドニー・イェンが1963年生まれながらまだまだアクションキレッキレで素晴らしい。
駐車場で暴走車に追い立てられるマーおじいさんに追いつけないと見るや、立体駐車場の柵を飛び越えて下の階に飛び移り、マーさんを抱えて間一髪保護、って目玉が飛び出るかと思いました。飛ぶフォクを上から撮って急激に下降、縦横無尽なカメラワークがすごい。「ナイトコール」もそうだったが最近ドローン撮影が多用されているようで、経験したことない臨場感味わえて心臓に悪いです(褒めてます)
法廷の証言開始時間に間に合うか、というサスペンスの中、地下鉄の列車内の格闘がクライマックス、アクションはカンフーというよりプロレス技みたいだけど乱闘からの一対一のタイマン勝負、列車のポールやら窓ガラスやらその辺のものを使い倒してテンポよく展開する香港アクションらしいスタイルで、戦いのバリエーション豊富で息詰めてみてしまった。絶体絶命のところ、そうか、あいつ裸足だったわ、めちゃめちゃ痛そうで指の隙間から見ていました。
エンドロールに大内貴仁さんの名前あり。ジャパニーズ・アクションだったか!
日本人の名前がたくさんあったけど、スタントの皆さんですよね。
貧しく無知なものがなすすべなく食い物にされ、検察は制度的・慣習的な問題から冤罪を防ぐどころか作ってしまう様を描いた社会派ドラマでもあり、法廷劇とアクションパートをきっちり分けて互いに干渉していないのが良い。硬派とは言えないが法廷劇にリアリティーが出た。
フォクさん、検事なのに被告の弁護しちゃって被告弁護士が戸惑ったりするが、この程度なら法廷劇のスパイスとして私としては許容範囲。
ベタだけど、フォクの真摯な正義感にほだされて周囲が次々味方になっていくところが気持ちが良い。「賭けに負けた」と言って続々ビールをフォクの机に置き、調査書類を持っていく同僚たちの姿は胸アツです。次長検事は敵の手先だろうと思ったら、彼なりの倫理観を持っていただけで、理解しあえたら最高の仲間になるってそらもう、古からの熱い香港映画の王道ですがな。
韓国映画みたいに検察も含めた法曹界全体が腐りきっているかと思いきや、不備はあるものの検察は毒されておらず、法の支配も生きていた。
孫を救おうと必死の祖父マーさんが気の毒すぎる。孫を愛する良いおじいちゃんだったので、さぞや無念だっただろうに。マー・ガーキットに明るい未来が見えてよかった。
弁護士と結託した麻薬密売組織が、団結したフォク達に悪事を暴かれ、検察組織は教訓として対策を講じる。エンドロールで悪人どもがしっかりお咎めを受けたことまで確認してすっきり映画館を出た。実話が元というのでなおさらです。(細部はおそらく大分違うのでしょうが)
検察のパーティーで圧力掛けて来た貿易商が振舞った高級ワインには手を付けなかったフォクだが、マーさんの家で出されたお茶は飲むとか、貿易商が高級ワインをブランデーのようにグラスを手で温めて飲んでいるとか、些細だが人となりが分かるような描写に感心した。
マイケル・ホイをはじめ、なつかしのお顔が数人、「返還前には『大検事』という職があった」とかノスタルジックな話が出たり、同窓会みたいな楽屋落ち的楽しさもあって、エンタメの詰め合わせみたいな映画でした。
何気に構成が上手いんですよね。
コメント有り難うございます。
80年90年代の香港映画を感じさせてくれる、最後のスター、ドニー・イェンです。
あの頃の香港映画は、兎に角、アツい!(笑)人が空を飛んでも許される!(笑)魅せるアクション映画ばかりでした。
おはようございます。共感とコメント有難うございます。
私も、”疑わしきは被告の利益に”という白鳥決定を教授に叩き込まれましたね。 当時はキツカッタですが、今は良かったと思っています。(それまでは、”ハンムラビ法典男”と呼ばれていた。目には目を・・。)
でね。レビューを拝読して驚いたのは、”ドニー・イェンが1963年生まれながら・・”です。マジっすか!オイラより10歳以上若いのかい!ビックリ! 映画ばっかり見ていないで、もうチョイ、運動時間を増やそう!と思った日曜日の朝でした。ではでは。
コメントありがとうございました。
熱量の高いレビューを拝読して、映画の世界観が脳内に蘇ってきました。
本当によくできた映画でしたね。
地下鉄内での、ガラスを使ったあの攻撃は、自分も指の隙間から眺めてましたw





