劇場公開日 2025年8月1日

「苦味を感じながら、前向きに解消するでもなく、極端に卑下するでもなく、かといってウジウジしないわけでもないが、それなりに懸命に生きていく。それが生きているおじさん」ひみつきちのつくりかた えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 苦味を感じながら、前向きに解消するでもなく、極端に卑下するでもなく、かといってウジウジしないわけでもないが、それなりに懸命に生きていく。それが生きているおじさん

2025年8月25日
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鑑賞方法:映画館

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都内のアパートの⼩さな⼀室、50歳を迎えた佐藤がスパゲッティに頭を突っ込み急死を遂げる。佐藤の⼩学校時代からの旧友である山上は佐藤の葬式に参列するために地元へ帰省すると、 佐藤と共に少年時代を過ごしてきた旧友・御⼿洗(みたらい)、⼯藤、豊永と再会する。同じ町、同じ少年時代を過ごしてきたが、その後全く違う人⽣を歩んだ4人の初⽼たち。 葬式の合間に昔話や⾃慢話に花を咲かせていると、⼯藤が1冊の⼤学ノートを取り出す。そこに描かれていたのは、佐藤が⼩学⽣の頃に書いた『ひみつきち建設計画』。その夏、彼らは忘れていた子供心を取り戻そうと、あの頃に夢抱いていた”ひみつきち”を建て始める。しかし、彼らの⽬の前には様々な”⼤人の事情”が立ちはだかってしまう… (公式サイトより)。

タイトルとあらすじで何となくストーリーは見え隠れするが、物語の展開そのものよりも、おじさんが生きるってこういうことだよな、としみじみできる作品。

離婚して子どもに自由に会わせてもらえなかったり、どうやら愛娘はいじめにあっていたり、東京で成功しているものの孤独を抱えていたり、地元の電器店でそれなりに苦労していたり、何となく介護問題が迫りつつあったりと、それぞれに、ちょっとずつ苦味がある。そんな苦味を感じながら、前向きに解消するでもなく、極端に卑下するでもなく、かといってウジウジしないわけでもないが、それなりに懸命に生きていく。それが生きているおじさん。

いまを脇に置いておいて、すぐに当時に戻れる幼なじみは得難い存在だが、一度、苦味が噴き出すと、「だいたいお前は昔から」と時間軸がぐちゃぐちゃになって発露してしまう。そして、「あー、またやっちまった...」と新たな苦味が生じるが、アクティブに解決に奔走する必要はない。「ま、でもあいつの言うことも一理あるかー」とたおやかに自戒し、時がまたみんなを呼び寄せ、別にダンディでもニヒルでもシニカルでもなく、単に「ふっ」と笑い合ってまた明日が来る。それが幼なじみ。

恐縮ながら主演の4人はどなたも存じ上げなかったが、特に廣末哲万氏の力の抜けた、シュールなコミカルおじさんは魅力的だった。

えすけん