「明日にも起こりそうな“有事“」ハウス・オブ・ダイナマイト ノーキッキングさんの映画レビュー(感想・評価)
明日にも起こりそうな“有事“
シナリオ段階での忖度なのか、配慮なのか、敵国は特定されず、ICBMの発射地点も不明、大統領は金髪の白人ではなく黒人。もちろん個人主義国家なので“お国のため”になんてお題目は軽視しても赦されるし、どの映画でも同じだけれど、アメリカの有事とは国に降りかかる危機ではなく、家族の大事なんですね。自分の家族が最優先。すぐ別れてしまうくせに夫が、妻が、子供が、と言ってオタオタする。日本だったら大変だけど、欧米諸国では国のトップが身びいきであってもあまり非難されない。イギリスのサッチャー首相の息子がパリダカールラリーに出て砂漠で行方不明になった時、フランス軍が捜索してましたね。
核ミサイル着弾のカウントダウンの最中に 、実は迎撃出来る確率は61%なんて事実を知らされたり、街中の能天気でゆる~い日常生活風景を挿んだりとコントラストの妙で恐怖を煽ってコワガラセル。監督お上手。
それにしても、政権の高位にいないと避難者リストの優先順位にもれてしまうんですね。さしずめ現実なら、“トランプ周辺”が救われてシェルター行き。生き残っても嫌なメンツだなー。
問題は報復のアリナシ。映画では無い方に振られているが、現実は? 大統領就任時にほぼ“覚悟”は出来ているし、様々なインタビューを受けるのでシミュレーション済み。お勧めは?なんて迷いはない。北朝鮮/中国国境あるいは北朝鮮/ロシア国境に向けて打つとおもわれる。どちらも後の“言い訳”がしやすいので。あっ、そうそうロシアは自動報復システムなので、会議無し、大統領の意思決定無し、ミサイルが飛んできた方向に躊躇なく撃ち返します。
『宝島』の レビューにも書きましたが日本だと六本木の米軍基地が全国の中枢指令部なので、ここはアブナイですね。アメリカ大使館も近いし。
では何処が安全か? 基地も無い、原発も無い、災害も無い、熊も出ない………う~ん難問ですね。
コメントありがとうございます。
えっと、褒めたんですか? 思ったこと全部ぶち込むからレビューが長くなるんだよ、ってことなら、自覚あります。
避難者リストは、おそらくですが「役に立つ」人材が優先されたんじゃないかと思います。もちろん偉い方々は入っているでしょうが、偉い人だけ生き延びても役に立つ人や働く人がいなければ滅びますから。キャスリン・ビグロー監督人類の危機の始まりから着弾までの20分にも足りない時間を切り取って、危機が刻々と迫るシチュエーションそのものと、その場その時にうごめく人々のありさまを見せたかったんだろうと思われ、徹底した客観性がこの映画のキモだと思っています。
めっちゃ良くできた教育用の緊急事態のシミュレーション映像みたいでもあります。
フラットな客観性があるからこそ、アメリカの国防対策の厚さと緻密さに度肝を抜かれたりもして。
結局、どこが撃とうが関係なく、核を一発落とされたらどう転んでも人類は終わりではないか、これは「明日にも起こりそうな”有事”」じゃないかと背中が冷たくなります。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。