「薬瓶の中の錠剤をすり替えて欲しかった」三谷幸喜「おい、太宰」劇場版 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
薬瓶の中の錠剤をすり替えて欲しかった
またしてもタイムスリップものでWOWOWドラマとして制作されたのだが、これを映画館で見ないでどうする?というくらいドキドキの全編ワンカット長回しの魅力に満ち溢れた傑作コメディである。ほぼ100分出ずっぱりの田中圭、その奥さん宮澤エマ、太宰役の松山ケンイチ、情死の相手小池栄子、そして漁師親子三役を早着替えで演じる梶原善。役者5人がそれぞれに矜持あるMAXの演技をぶつけあっており三谷幸喜ファンで長回しフェチ、しかも太宰治で卒論を書いてしまった私としてはたまらなく幸せな観劇の時間を過ごした。前作「スオミの話をしよう」があまりにも不当に世間の評価が低くて憤慨していたが「映画になっていなく」て上等、これは映画的空間とタイムスリップという仕掛けによって時間の自由さをも手に入れた演劇の到達点、新たな発明と呼んでも差し支えない「演劇映画」である。三谷幸喜のアイデアを超えた青森弁の太宰が異色。
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