「ラストシーンを現実的に考えると、強烈な悲恋に見えてしまうのは私だけなのだろうか」シークレット・メロディ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンを現実的に考えると、強烈な悲恋に見えてしまうのは私だけなのだろうか
2025.10.9 字幕 MOVIX京都
2025年の韓国映画(103分、G)
台湾映画『不能説的・秘密(邦題:言えない秘密)』のリメイク映画
取り壊しの決まった音楽室で出会う男女を描いたファンタジー系恋愛映画
監督はソ・ユミン
脚本はソ・ユミン&ユ・スンヒ&シン・ウンギョン
原題は『말할 수 없는 비밀』で「言えない秘密」、英題は「Secret: Untold Melody」で「秘密:語られざる旋律」という意味
物語の舞台は、ドイツにてショパンのコンクールに挑むピアニスト・キム・ユジュン(ト・キョンソ、幼少期:ユ・フィミン)が描かれて始まる
課題を弾き始めようとしたユジュンは、どうしてか腕が動かなくなり、その場で卒倒してしまった
ユジュンはそのまま韓国に帰国することになり、父スンホ(ぺ・ソンウ)が働いているミョンウン音楽大学に交換学生ということで入ることになった
高校時代からの友人イニ(シン・イェウン)に大学を案内してもらったユジュンだったが、廃校舎の方からピアノの音が聴こえてきて、そこに足を運んだ
そこにはピアノの下で何かを探している女子学生(のちにユ・ジョンアと判明、演:ウォン・ジナ)がいて、ユジュンは彼に一目惚れをしてしまう
その後、ジョンアに会うためにその教室に来たり、大学の隅々で彼女を探すものの、会えることの方が少なかった
一方、ユジュンの案内役をしていたイニは彼に気があって、少しでも距離を近づけたいと考えていた
彼の行動を気にかけていると、なぜか目が合うことが多くなり、彼が自分に気があるのではと思い始めてくる
だが、肝心な時にユジュンはどこかに行ってしまい、その距離が縮まることはなかったのである
映画は、台湾映画のリメイク作品で、設定としては「芸術学院から音楽大学に変更」という要素があった
また、ジョンアにあたるキャラは喘息持ちだったことで、体調不良でなかなか会えないというもどかしさが描かれていた
さらに決定的なのは物語の結びであり、かなり大きな改変となっていた(他の作品のネタバレになるので詳しくは書かない)
本作の場合は、かなり純愛路線を強調し、タイムトラベル的な要素の説明はあまりなされていない
知識ゼロで観て、後半の怒涛のネタバラシについていけるのかはわからないが、20年の時間差があって、20年前に生きていたジョンアが「秘密の楽譜」のおかげで20年後のユジュンと出会って恋に落ちることになったことがわかればOKだろうか
この関係性が少しずつ歴史を変えていって、20年前にジョンアが書いたメッセージが20年後に出現するという演出もあった
そして、2人は同時に出会いの秘密を知ることになり、あの音楽室を目指すのだが、そこで起きたことがオリジナル要素になっている
個人的には悪くないなと思うものの、サクッと理解できる方が難しいようにも思うし、20年前に行ったことであの楽譜は消滅してしまうのかなと考えていた
そのあたりの辻褄を合わせるのは意味がないと思うが、ユジュンの行動によって歴史が変わったことは事実にも思える
だが、実際には「2人ともがどちらでもない世界にいる」という解釈の方が納得できるように思えた
それは、二つの時代から「両方がいなくなる」ことで、時空を隔てて起きたノイズというものが解消されてしまうからだろう
ジョンアだけが消えていた世界線の延長に20年後があるとして、その世界線からユジュンが消えても何も変わらない
だが、彼が20年前に行ってしまっていたら、変わってしまうものが多すぎるように思う
なので、二つの時代から2人が消滅(廃校舎の解体作業に巻き込まれて死亡)と言う方が現実的にも思えてしまう
過去から未来に消えたジョンアはそのままで、現在の段階でユジュンが事故死しても過去は変わらない
そういった見方をすると、2人的にはハッピーエンドだが、家族的にはバッドエンドになってしまうのかな、と思った
いずれにせよ、いろんな解釈もできると思うのだが、やはりラストは2人の見ている共通の夢のようなものなのだと思う
そこで2人は幸せの絶頂にいるのだが、現実では真逆のことが起こってしまっている
それでも、2人は「離れ離れになるくらいなら死んだほうが良い」と思っているくらいに惹かれあっていると思うので、それを全肯定するラストの方が意味があるのだろう
そういった見方をすれば、本作は悲恋だったと言うことになるのかな、と感じた
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