ワン・バトル・アフター・アナザーのレビュー・感想・評価
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PTA×レオの必然の初タッグは、“ワン・エンタメ・アフター・アナザー”なマスターピースだった!
レオナルド・ディカプリオは『ブギーナイツ』の出演を断った事がキャリア最大の後悔と語るほどポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)監督作への出演は28年越しの悲願らしいが、私もPTA監督の作品を劇場で観るのは『マグノリア』以来25年ぶり。インディーズの雄であるPTA監督の作品は地元どころか隣町でもなかなか上映しないので…。
そんなPTAが製作費1億ドル以上をかけたキャリア最大の大作! 珍しい全国メジャー公開。
PTA監督作としてもレオ主演作としても、こりゃいい意味で裏切られた…!
概要は、娘を拐われた元革命家の男が娘を探す。
立ちはだかる障害や刺客からレオがカッコ良く…と思ったら、レオ様ファン失望レベル!
かつて燃えていた革命魂は何処へやら…? 落ちぶれて、まあ何と情けなくカッコ悪く。終始ダサい部屋着姿で、一日中ラリってる。娘を拐われ、何者かに追われ逃げ、ずっとテンパってあたふた。
嗚呼、豪華客船で世界の王子様やってたレオが…。でも、そんなレオが最高!
カッコ悪さたっぷり、悲哀や哀愁もたっぷり、だけど何だかんだ娘を思う父を滲ませ、自身の中でまた熱い何かを滾らせていく。
そんな芸当が出来るのも今のレオだからこそ。風貌はもはやジャック・ニコルソンだが、風貌だけじゃなく演技も存在そのものもその領域へ。
これまで群像スタイルや狂気と重厚、愛すべき小品と様々な人間ドラマを描いてきたPTA。今回も真面目な作品かと思ったら、PTAファンもびっくりのこりゃある意味おバカ映画! しか~し!
アクション、犯罪、コメディなど織り交ぜたキャリア初とも言えるエンタメに振り切り、それでいて移民、人種問題、白人至上主義への風刺など変わらぬ人間ドラマスタイルそのままに、最後は家族愛で締める。
『ブギーナイツ』『マグノリア』の頃からずっと思ってたけど、天才か! 天才はずっと天才。そんな監督も世界広しと言えどもPTAレベルはなかなか居ない。
天才監督と天才俳優が遂に組んだんだもの。勝ったも同然。
PTAの語り口が見事。
レオ演じる主人公ボブも革命家として活動していたが、一際熱かったのは、出会い後に妻になったペルフィディア。
移民や人種差別を受ける人たちの為に権力と闘う。
熱く激しくカッコ良く、時にセクシー。実は出番は序盤だけなのだが、そうとは思わせないインパクト。
演じたテヤナ・テイラー、何本か見た作品に出てたようだが、本作でしかと認識。
彼女にKOさせられたのは私だけではなかった。
移民摘発を行う軍人、スティーヴン。ペルフィディアの奇襲を受けた際、屈辱とおっ勃たせられる。
以来、ペルフィディアに異常なまでの性的執着を。超ド変態!
そんなヤベー奴を、まさかショーン・ペンが演じるとは…!
しかし彼もまたハリウッド随一の名優。思い出しただけでも笑っちゃうくらいの怪演と凄み。レオより目立ってた…?
お気に入りは終幕エピソードの直前。生きてたのかい!(だけど哀れな最期…)
情熱的な恋に落ち、革命活動にも熱が入り、やがて二人の間に生命が…。
その事で二人の間に感情の違いが…。ボブは家族で穏やかな暮らしを望み、ペルフィディアは革命活動を続けたい。…
ある一件でペルフィディアは過って人を殺してしまう。捕まり、仲間を密告してしまう…。
革命活動に終焉の時が…。ボブは産まれたばかりの娘を連れて別地へ。ペルフィディアはスティーヴンと“ある取引”をして解放され、メキシコへ逃げる…。
16年後。
だらしない中年オヤジになったボブと、ティーンエイジャーに成長した娘ウィラ。
父娘仲良く穏やかに…と言いたい所だが、関係は最悪。過保護な父に自立精神溢れる娘は反発。古今東西あるある。
その日常を脅かす者が…。勿論スティーヴン!
移民摘発の活躍が認められて、栄えある白人至上主義団体への入会が内定したスティーヴン。
変態スティーヴンでも感激だが、厳しい審査。その一つに、白人以外の連中と関係はないか?
ありません!…と断言したい所だが、ありま~す!
ペルフィディアに性的強要を。その証拠を消す。
その過程で、ウィラに娘がいる事を知る。
何処ぞのクズとパパ娘してるらしいが、何を言っている! 父親は俺だ! あの時、情熱的な愛を…(と思い込んでいる)。でも実は…。ネタバレになってしまうので伏せ。
娘である事の確認と、その隠蔽。変態で傲慢で自分勝手の極み。
ゴロツキを使って“掃除”。かつての仲間が襲撃されていく。
辛うじてボブにも連絡。ボブ自身、仲間同士の暗号をすっかり忘れていたけど。
かくしてウィラは拐われ…。
これが因縁あるスティーヴンの魔手と分かり、逃げる逃げる!
執拗に追う追うスティーヴン。
逃げるボブの顔にはっきりと。何で今更こんな目に~?!
あっちでトラブル、こっちでトラブル。
追い、逃げ、追い、逃げ…。
探して探して。
気付けばアメリカからメキシコ辺境にまで。
ダメダメ、イカレ、へんちくりん…。出てくる奴にまともな人が居ない!
ウィラが通う空手道場の“センセイ”ベニチオ・デル・トロ。飾ってある『スーパーマン』の日本版ポスターの事を聞きたい。
レオの娘役でスクリーンデビューのラッキーガール、チェイス・インフィニティ。フレッシュな魅力と名前の通り無限の可能性を秘めている。
逃走追跡劇…もとい、ドタバタ珍道中を盛り上げる臨場感あるカメラワーク。極め付けはクライマックスのカーチェイス。連続する坂道がうねる波のようで、面白い見せ方! これ、4DXでもし座席がアップダウンしたらスゲーと共に車酔いするだろうなぁ…。
PTA常連ジョニー・グリーンウッドの独特の音楽がこれまたピタリとハマる。
ハラハラドキドキスリリングなアクション、シュールなコメディ、終着点不明のクレイジーさ、強烈個性キャラ…。
娯楽に次ぐ娯楽。タイトルに絡めて“ワン・エンタメ・アフター・アナザー”と言いたい。
社会派テーマやメッセージも突き刺さる。
人や命が物のように扱われるアメリカ~メキシコ国境の犯罪多発地帯。現状に戦慄する。
それ故問題になる移民。違法や犯罪に関わるのは一部。多くが自由を求めてアメリカへ。そこで受ける迫害摘発の現実…。双方に立場や言い分があり、難しい問題。
移民たちは非白人や非アメリカ人。ここは、アメリカ白人のもの。白人至上主義団体の圧…。あんなKKKみたいな団体が今もあるなんて…! しかも社会的権力者たちで構成されているから質が悪い。
これほどの要素と160分超えのボリューム。力量に乏しい監督だったら破綻している事だろう。
ちと私自身迷走しそうにもなったが、最終的にはどっぷりの見応えと面白さ。何かこれ、じわじわ来る。
やっぱスゲーわ、PTAは…。
ラストシーンは、何処かで生きてるかもしれない母ペルフィディアからの手紙と、関係より良くなったボブとウィラ。
母の熱き魂を継ぐかのように、ウィラは抗議運動へ。そんな愛娘の姿を噛み締めるように見送るボブ。
何だかそのシーンのレオが、オスカーも有力視されるPTAの作品に念願の出演を果たし、新たなマスターピースとなり、充実感と幸福感噛み締めているように見えた。
面白いかもしれないけども。
前知識なく鑑賞。人が突然殺されたりしたらどうしようと、ヒリヒリする場面は多かったので、不安いっぱいでした。
ボブと黒人女性の間に娘がいるんだけど、実の父親はロックジョーであった。
娘は事実を知るもそれでもボブのことを父親だと思っている。
ロックジョーを殺したのはフレンチ75でいいのかな?
面白いけど
大小の「はぁ?」が満載の映画。
非常に面白いが、世界は大丈夫なのか?
排外主義と反排外主義の深刻な対立が世界的に起きているが、
この映画は、この両者の思想に踏み込むことも無く、
対立を、トムとジェリー的な「追いかけっこドタバタコメディー」に仕立てて、
果敢にエンタメにして笑いを取りにいく。
対立がアプリオリなものとして扱われている。
つまり、対立は、もはや解決すべき課題ではない。前提だ。
排外主義者については、
「どうかしている変態野郎だから」
で切り捨てる。
人種差別野郎を「変態野郎」として描くのはともかく、
爆弾革命野郎を「いい人」として描いている。
アメリカでこの映画が高い評価を得ている。
エンディングもジワジワくる。
父と娘の明るい会話だが、言ってることが「はぁ?」。
この映画は、Z世代を煽っているのか?
犬笛を吹いているのか?
それとも、映画自体がギャグなのか?
その意図はわからないが、
この笑いがいずれ社会に還元されることは想定内だろうと思う。
関係ないけど、娘はKポップオタクのユーチューバーらしい。
様々な価値観と距離感と方向感がバグる。
予想外のおもしろさ!
■ 作品情報
トマス・ピンチョンの小説『ヴァインランド』からインスピレーションを得た物語。監督・脚本はポール・トーマス・アンダーソン。主要キャストはレオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、アラナ・ハイム、ウッド・ハリス、チェイス・インフィニティ。製作国はアメリカ。
■ ストーリー
かつて極左革命グループ「フレンチ75」のメンバーだったボブ・ファーガソン(レオナルド・ディカプリオ)は過去を清算し、一人娘のウィラと静かに暮らしていた。しかし、突然ウィラ(チェイス・インフィニティ)が何者かに誘拐されたことで、ボブの隠遁生活は終わりを告げる。過去の革命活動の代償とも言える因縁の軍人スティーヴン・ロックジョー(ショーン・ペン)から娘を救うため、再び危険な戦いに身を投じるボブの姿を描き出す。親子は、自らの過去と現在の両方から来る過酷な葛藤に巻き込まれていく。
■ 感想
3時間近い長尺にもかかわらず、全く飽きることなく、作品世界に深く没入することができました。物語の幕開けとなる収容所襲撃シーンで、主要人物たちの置かれた状況や因縁が明確に提示されたおかげで、すぐに彼らの運命に感情移入し、最後の瞬間までスクリーンに釘付けです。
革命家たちの地下ネットワークや「クリスマスの冒険者」クラブといった細部の設定は、正直なところ、ちょっと理解が追いつきません。しかし、作品の根幹をなすメインストーリーは非常に明快です。その中で繰り広げられるボブの奮闘、妻ペルフィディアの葛藤、娘フィラの覚醒、この三者による親子愛の描写は、強く楽しく愛おしく心を揺さぶります。
そしてこの3人に勝るとも劣らぬ存在感を放つロックジョー!彼の存在があったからこそ、ペルフィディアというキャラクターがよりいっそう魅力的に映り、その途方もない執念が物語全体を推し進める強大な原動力となっています。終盤のまさかの復活劇には、目が点、口あんぐりです。この異彩を放つロックジョーを演じるショーン・ペンは、まさに陰の立役者です。彼の怪演が、作品に深みと予測不能な興奮をもたらしてくれたと感じます。
その必死さが胸を打つ!
元革命家ボブとその娘が、現役引退し身を潜めた後に「ある理由」である軍人につけ狙われるお話です。
革命家と名乗るテロ組織、メキシコからの不法移民達、アメリカの軍隊、差別主義者の謎組織・・・などなど、それぞれの主張、正義を振り翳しつつ、程度の大小はあれ揃いも揃って当たり前の様に違法行為(枚挙にいとまなし!)に手を染めてるカオスな状態です。多少の誇張やフィクションはあれど、国境の壁とか出てくるので直近のアメリカの現状をある程度は反映した設定なのかもしれません。
現役を離れたボブ(レオナルド・ディカプリオさんが好演!)は、酒とドラッグに溺れる分かりやすいダメ中年だけど、娘のピンチには肥満体に鞭うって体張るところが滑稽であると同時にその必死さが胸をうつ瞬間もあり、彼が絡むアクションも盛りだくさんでなかなか見所が多かったです。
演出面ではカメラアングルの工夫、アクターの演技の面白さ、音楽の使い方など、スクリーンに注目させる要素が多彩で常に画面に集中出来た様に思います。シナリオの伏線回収の上手さも相まって162分の長い上映時間がまるで気になりませんでした。
ただ、シナリオや設定的に若干、思想的な偏向度合いが高いようです。他は全て基本悪く書くのに〇〇だけは依怙贔屓みたいな(笑)。伏せ字を使いますがこの部分は現代の日本でも問題視されつつある属性(分かりますよね)なのでそこはちょっと違和感感じましたね。
エンタメ作品として良作と思いました。
では。
見事❗️監督の巧みな脚本、センセイが◎
今年最大の話題作品。見事だし、ハラハラドキドキ感満載だった。一番評価したいのは監督の脚本が巧みで見事❗️エンタメアクションだけど今のアメリカ政治を意識した作品に思えた。初めてのディカプリオだが、彼の演技はさすが。ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロの演技も素晴らしかった。間違いなく今年のベスト洋画候補だし、年間ベスト10にも入るだろう。ベニチオ・デル・トロが演じたセンセイのキャラクターが◎。0.5点おまけの5点。
最近3時間の映画多くない?
アメリカだな!
正直、アンダーソン監督作は初だけど、思ったより面白かった。
かつての革命家のボブ(ディカプリオ)親子が、執拗な警察官ロックジョー(ショーン・ペン)に追いかけられる話。
ロックジョー役のショーン・ペンがさすがの怪演(なんか久しぶりに彼を観た気がする)。見事に怖くて憎らしい。そして相変わらずディカプリオはイケてないオヤジが似合う笑。
ストーリーは、白人至上主義の人達が出てきたりでアメリカらしいなあと思ったり。クライマックスのチェイスシーンは、独特だけどドキドキした。(ボブ間違って跳ねられそうと思った)デルトロ氏はやはりカッコよく、メキシコが似合う!
思ったより普通に終わったのが意外。母親が出ないのも意外。
そこそこ
解説・あらすじ読んでもどんな話かわからなかったので見るしかないなと思いました。
日本でも最近は排外的な思想が広がってきましたが国の成り立ちからして多人種のアメリカでは革命家とかいるんだなぁと感心しました。
どんな話か分からないからどういう終わり方するのかわからないという点で最後まで興味深く見ることができたかな。
革命家の白人男性と黒人女性とその子供(ホントは違う)それぞれキャラが立っていて良かったがやっぱりこの映画はロックジョーの異常性、変態性に尽きるなと思った。
これがなかったらサラッとした話で終わったかも知れない。
あの娘がロックジョーの変態性を受け継いでると思うと心配ではある。
この作品で何より印象深かったショーン・ペン
私にはハマらないかなと思って観に行った今作、全然そんな事なく楽しめました。
「拉致された娘を取り返す」を軸にストーリーは進んでいきます。
主演のディカプリオは拉致された娘を育てるシングルファーザーのボブ、そんなのでちゃんと娘を取り返せる?って思うくらい頼りにならないし口が悪いしだらしないパパで、でも娘を想う気持ちは伝わってきました。
そこに絡んでくるショーン・ペン演じるロックジョー、この強烈キャラがすごすぎました。
演技力が素晴らしいショーン・ペンが演じたからでしょうけど、やばさ全開でした。
ディカプリオも素晴らしいですが、ディカプリオよりショーン・ペンの方が印象が強かったです。
移民問題、白人至上主義というアメリカの抱える問題が今作にも組み込まれていましたが、ボブにクスッとなるシーンが何回もあったせいか、重くない仕上がりになっていました。
クライマックスのカーチェイスはハラハラドキドキでとても楽しめました。
162分という長い上映時間でしたが、全然飽きる事なく、心地良いラストで気持ち良く観終われました。
現代アメリカの最高の映画監督
ポール・トーマス・アンダーソン
略してPTA
またしても 監督作品 自己最高を更新じゃね?
私の知る限りPTAが現代アメリカの最高の映画監督だと確信
スピルバーグはすでに3回観たそうよ👏
革命家の夫婦の娘が革命の申し子で、美しい女性テロリストとなり、トランプ大統領の移民政策で作られた強制収容施設からの移民解放組織のリーダー
かなりのサディストだから始末に悪く、
問題の種を蒔き散らす
その女に岡惚れした爆弾魔テロリストになった夫はヒッピーや政治犯が逃げ込むので有名なサンクチュアリ都市の自然公園で身を隠し、娘を男手一つで育てて早や17年の中年オヤジはマリファナ呆けで合言葉も思い出せない体たらく
サド女に精神を蹂躙されたサイコパスなマゾ警官?州兵?の粘着質なキモい執着心と野望が暴走
もしかして主人公?の美しく成長したひとり娘は母の素養を見事に受け継ぎ・・・
他にも娘の空手の先生は実はメキシコ不法移民を助ける組織のリーダーだったり
アメリカを裏で支配する白人至上主義の秘密組織のヤバい奴等
コイツらがイカれた争いを繰り広げてゆく
まさにワンバトル アフターアナザー
"戦闘に次ぐ戦闘"なのよ
あまりの破天荒ぶりに笑って観てるとコメディに思えてくるのだけど、ジワリと心を塞がせること、それは 今まさにトランプ大統領の移民政策に蹂躙されまくるアメリカ🇺🇸の現実そのものなのだから
全米各地に州兵派遣して不法移民として逮捕して収容所へ収監が加速
日本でも移民政策が絶賛炎上中🔥
脳天に強烈な一撃くらわす🤛
社会派映画なのさ
この映画観て、何も感じず
表面しかなぞれない観客には
私から愛を込めて
ひと言差し上げたい
「ボーッと生きてんじゃねーよ!」🤭
最後までアクションの見せ場だらけでスペクタクルな展開も有り余るのでご安心くださいませ
父の教えを守る娘にジーンとくる
「トラップ」に続き、2日連続で、父と娘の映画。(メインのテーマはそうではないかもしれないが、どうしても、娘を持つ父親目線で観てしまうのでw)
こちらの娘も中々ハードモードだったが、シャマラン監督もそうだったように、ポール・トーマス・アンダーソン監督も、娘には嫌われたくないんだろうなということが伝わってくる作品だった。
出自に関わっては、どうしようもない現実を知らされることになっても、それを正面から受け止めて、キチンと自分を大切にしてくれる人を間違えないという描き方や、性被害に遭いそうな状況も、未然に防ぐ方向に展開させるなど、本作でいえば、娘のウィラが汚れずに自立していく脚本にしているところが好印象。
ダメ親父のディカプリオもとてもいい。
娘が生まれた途端にメロメロなのもいいが、高校の保護者面談で、娘を褒められて泣いてしまうところとか、逃亡中に、落っこちて捕まってしまうところとか、抜けてて不器用なところが心から愛せる。(長い暗号を覚えていられなくて、長々と毒づくところとか、大好き)
そういう「観ていて愛せる個人」が、様々な事情で争いに巻き込まれていく、その展開のスリリングさを楽しむという目論みは大成功していると思う。少し長めの作品だが、最後までダレずに観ることができた。
<ここから、少し内容に踏み込みます>
・今作は、革命を掲げて行動する者たちや、強制送還を待つ非正規移民の人々、メキシカンコミュニティやネイティブアメリカンをモチーフにしているが、政治的なメッセージや、何らかのプロパガンダをメインの目的にしているとはいえない中で、「クリスマスの冒険者たち」には、ひとこと言いたかったんだろうなと感じた。
・というのも、ショーン・ペン演じるロックジョーは、ヴァージルに撃たれて事故ったところで退場でもよかったはず(尺も縮まる)。それなのに、ターミネーターのごとく蘇り、わざわざもう一度「冒険者たち」に殺されたわけで、あの秘密結社の思想の気持ち悪さや、儲けのためには安い労働力として非正規移民を一定数手元に置くという欺瞞さ、そしてその結社に入ることを「何よりもの栄誉」と考える哀れさを、どうしても描きたかったのだろう。
・まるでKKKのようだなと思ってWikipediaをみたら、 KKKの結成は1865.12.24と記されていたので、「クリスマスの冒険者たち」というのは架空の結社だろうけれど、KKKを意識したネーミングなのかもと想像した。
・「センセイ」が出てきてからの一連の流れが最高だった。彼らのコミュニティの温かみもさることながら、全然携帯を充電させてもらえないベタな笑いとか、パルクールみたいにビルの上を駆け抜けるシルエットのカッコよさとか、捕まってからそこを抜け出すまでの予想外の展開とか、車から放り出されるときのお決まりのビビり具合とか…。
一本調子に陥らない、いい展開だった。
・ペルフィディアについては、「おいおい、手紙一通で許されると思うなよ💢」と思いながらも、「自分の欲望に真っ直ぐな人ってことですよね」とも思った。自分はあんまり関わりたくないタイプだが、物語には必要な人なので仕方ない。
・彼女に「Get up!」と言われ、立ち上がろうとしたら「そっちじゃない」って言われて、すぐに反応できるロックジョーが、ある意味すごいw
・ロックジョーのピチピチのTシャツをウィラがイジるシーンで、某芸人が脳裏をよぎった。
・DNA鑑定を、ああやって使う作品を初めて観たが、脱帽。よく思いついたなと思う。
・100mくらいから反応する例の機械。出がけには、あんなに嫌がっていたのに、最後まで肌身離さず持っていて、父の教えを守る娘にジーンとくる。ディカプリオに、いい娘に育ってよかったねと声をかけたくなった。
面白い! が、歯にものが挟まる?
かつて革命家として活動していたボブ(ディカプリオ)が、拉致された娘を取り返すために奮闘する話。予告を観る限りパスワードを忘れていたり車から落とされたりと少し体当たりなコメディ感もある。
母親はどうしているのか、なぜ娘が拉致されるのかといった話が明かされていくがこれが結構面白い。ショーン・ペンがチラシで『変態軍人』と書かれていたがここまで重要な設定だったとは……。という感じ。
この映画で実質主人公ムーヴするのは娘の方で、ディカプリオは周囲に引き回されているような感じ。昔の仲間を頼って、指示されて…という感じ。
違和感を感じたのは特に音楽の使い方で、詳しくないのでジャンルは分からないが場面から浮いたような、奇妙なピアノ音が目立つ。
恥ずかしながらポール・トーマス・アンダーソン監督の作品は観たことが無いけれど、画の作りといいもっとドラマ感ある作品が得意な作風のような気がした。
ただ、その違和感が少し独特な映画として成立させているようにも感じた。シナリオと演出は文句ないし、派手ハデなエンタメに振りすぎてもいない。映像も高いレベルで纏まってはいるけど音楽の違和感をどう解釈するかは結構評価の分水嶺になるかもしれない。
先述した『エンタメに振りすぎていない』にかかわるけど、この映画のストーリーの肝になっているのは『社会的弱者に対する搾取』『移民への排斥』『人種差別』といったキーワードで、今だアメリカに残る問題が前面に出されている。
それだけに地味な画面がむしろリアリティを感じさせる。
かなりヒットしているようだし、これが話題になってもう少し日本でも洋画が観られるようになってくれればと思う。
家族と月月火水木金金
原題であり、そのまま邦題としても使われた「ワン・バトル・アフター・アナザー(One Battle After Another)」。意味合いが今ひとつ掴めなかったのですが、序盤でセリフとして登場し、「戦闘また戦闘」と字幕が出ていました。思いきり意訳するなら「月月火水木金金」といったところでしょうか(かえって分かりにくいかもしれませんが)。
実際、物語は戦いに次ぐ戦いを描いていましたが、単なるアクション映画ではなく、政府との闘いに身を投じた“プロテスター家族”の物語でもあり、むしろ後者に重心が置かれていた印象です。
まず“戦い”の側面に触れると、移民への抑圧や排外主義、人種差別といった現代アメリカ(あるいは全世界的)に蔓延する問題に抗議するプロテスターであり、同時に“テロリスト”とも見なされる主人公ボブ(レオナルド・ディカプリオ)と、彼のバディにしてパートナーのペルフィディア(テヤナ・テイラー)が属する革命組織“フレンチ75”と、それを取り締まるアメリカ軍(劇中では警察的な描かれ方をしていましたが、公式サイトでは軍とされています)との戦いが序盤で展開されます。
この戦いを指揮するのがスティーブン・J・ロックジョー(ショーン・ペン)。彼の悪辣さ、いや異常性欲者としての狂気ぶりが物語を強烈に牽引します。単なる非人道的行為を行う軍人ではなく、歪んだ性欲を持つ人物として描かれているのがポイントでした。また、ボブとペルフィディアの性の奔放さも印象的で、テロ直後におっぱじめるなど、正規軍とテロ組織の戦いの裏で、敵味方入り乱れた三角関係が展開されるという予想外の筋立てに唖然とさせられました。
やがて二人の間に“戦いの申し子”とも言える娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)が誕生すると、状況は一変します。ボブの政府への闘争心は娘への愛情へと変わり、母ペルフィディアは娘への嫉妬に駆られるという、赤ん坊が生まれた後の一般的な家庭の力関係を逆転させたような構図がとても秀逸でした。
その後、ペルフィディアは因縁のロックジョーに逮捕され、司法取引に応じて仲間を売ることに。一方ボブは革命家を引退し、娘ウィラを一人で育てます。そしてウィラが成長した頃、物語は後半へ。反抗期の娘に手を焼くボブでしたが、再びロックジョーの魔手が迫ります。引退したはずのボブも、娘と自分を守るために再び銃を取る――まさに「One Battle After Another」。
一方ロックジョーは白人至上主義の秘密結社に迎え入れられ、有頂天になりますが、過去に“汚らわしい異人種”と関係を持ったのではという噂が浮上。その疑惑を払拭するため、ボブとペルフィディア、そしてウィラの一家を追跡し始めます。まさに邪悪そのもの。そして物語終盤、かつての三角関係の果てに、ウィラが実はロックジョーの娘であることが明らかに――驚愕の展開でした。
クライマックスでは、ボブ一派、ロックジョー率いる正規軍、白人至上主義者たちの秘密結社が入り乱れる大迫力の戦闘シーンが展開され、物語は壮絶な大団円を迎えます。ペルフィディアとウィラの母娘関係にもひとつの区切りがつき、静かな余韻を残してエンディングへ。
現代アメリカの病理をえぐり出しつつ、エンタメとしてのアクションも迫力満点。さらに父・母・娘それぞれの葛藤と愛情を見事に描ききり、非常に満足度の高い作品でした。
俳優陣も見応え十分。悪役ロックジョーを演じたショーン・ペンは圧巻で、恐ろしい風貌、異様な眼つき、白人至上主義者としての不気味な雰囲気――すべてが完璧でした。主役ボブを演じたレオナルド・ディカプリオも素晴らしく、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」同様、どこか抜けた中年男を絶妙に演じていました。肝心のパスワードを忘れて窮地に陥る場面など、スーパーヒーローとは対極のアンチヒーロー像を体現しており、彼の真骨頂を改めて感じさせます。
また、直近で観た「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」で主演していたベニチオ・デル・トロが、ウィラに空手を教える師匠役で登場。今回も渋い存在感を放っていました。ウィラを演じたチェイス・インフィニティも、激しいアクションと母との再会シーンで見せた繊細な演技が印象的で、強く心に残りました。
そんな訳で、本作の評価は★4.6とします。
元革命家の冴えない父vs変態軍人
元革命家の冴えない父が愛する娘のために奮闘するバトルアクション。冴えない元革命家の父親を演じたレオナルド・ディカプリオと変態軍人を演じたショーン・ペンの共演が非常に興味深く面白い。二人とも過去のキャリアで演じていないような個性的な役柄を熱演している。
2025-147
全327件中、141~160件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
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