「小気味いいリズムで熟成演技を」ワン・バトル・アフター・アナザー みる子さんの映画レビュー(感想・評価)
小気味いいリズムで熟成演技を
気がついたら上映最終日ではないか。見よう見ようと思いながら、邦画の豊作ぶりに押されて後回しになっていた。
はたして期待を裏切らない面白さ。革命団の駆け引き、裏切り、冷ややかな人種差別意識を描きながら、どこかコミカル。残酷シーンもそんなに多くない。
ディカプリオって、本当、出演した映画に棲みつく役者だなあと思う。例えばハリウッドからやって来た感じのトム・クルーズと違って。その役柄の人生を、本当に映画の中で生きてしまう感じ。
若い頃の顔の丸みは消え、横に大きくなりながらも顔つきは鋭くなっている。カットの角度によっては誰?と思う。イメージは若い頃のまま、生物学的に歳を重ねたトムもいいが、苦み走った中年として生まれ変わったディカプリオもいい。
今回の役はかなり情けないが、人間味あふれる元革命家で、全くその魂を失ったわけでもないが、だいぶ終わっている。しかし家庭人、父親としては脂が乗りきって熟成されている。
最愛の娘がさらわれて…となると、だいたい筋は読めてくるのだが、どんでん返しもあり、重層的に面白く、息をもつかせぬ展開。最初から最後まで、どこか呑気な木琴のようなリズムが乗せてくれて全く飽きさせない。
前にクマと格闘する恐ろしい役をやったディカプリオだが、今度の相手はショーン・ペン。半袖シャツの生地を破らんばかりの太い上腕二頭筋と老練な瞳の正義なき軍人。歳を取って持ち前の滋味がさらに豊かになっているようだが?
ディカプリオを余裕のポーカーフェースで助ける仲間のカラテの先生。どこか見覚えがあると思ったら、昔、正真正銘の革命家、チェ・ゲバラを演じたベニチオ・デル・トロではないか。それを意識したキャスティング? ニンジャとかセンセイとかちょっと日本贔屓なシーンも楽しい。
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