劇場公開日 2025年10月3日

「自由とは恐れないこと」ワン・バトル・アフター・アナザー Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 自由とは恐れないこと

2025年10月10日
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鑑賞方法:映画館

本作の原作がトマス・ピンチョンの小説(Vineland 『ヴァインランド』)だと聞いて、難解なのではないかと多少ビビっていたのだが、さにあらず。カーチェイスやガンアクションなどもたっぷりのエンターテイメント要素に溢れた傑作だった。

原作では、1960年代に自由を求めて圧政的なニクソン政権と戦って革命を起こそうとしていた人々が、80年代のレーガン政権下で…、となっていた舞台を現在に移し替え、酒とドラッグですっかりダメになっていたかつての革命家が娘を守るために奮闘する。

「戦いに次ぐ戦い (one battle after another)」という原題にはつい「誰と? (with whom?)」 と聞き返したくなるのだが、本作で闘っていた相手は権力者そして差別主義者だった。

そして、それは制作を始めた数年前なら絵空事のはずだったのに、気づけば、移民の施設を強襲し、軍隊を送り込む現実が展開されている現実が彼の国では展開されている。

しかも「次々に」というのは「世代を超えて」ということでもあるようだ。世の中の現実はさほど簡単に変わるわけではなく、親が闘っていたことも、子供の世代が闘っていることも、本質的にはあまり差がないのかもしれない。

親の世代が過去に囚われた苦しみと、そんな親の重圧に苦しむ現在の子どもの世代。親子の愛があるからこその軋轢とジェネレーション・ギャップ。それはどこの国でも、いつの時代でも普遍的なのかもしれない。

それにしても、どこの国であろうが、保身に走る権力者ほど見苦しいものはないなぁ。後ろめたさを抱えた恐怖ほど自らの自由を奪うものはない。この辺は『宝島』と共通する部分も知れない。

Tofu
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