「ひたすら続く「逃亡」と「追跡」の物語に引き込まれる」ワン・バトル・アフター・アナザー tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ひたすら続く「逃亡」と「追跡」の物語に引き込まれる
題名から、銃撃戦に次ぐ銃撃戦のような映画なのかと思ったら、序盤こそ、爆弾テロやら銀行強盗やらのシーンがあるものの、潜伏していた主人公とその娘の居場所がバレる中盤以降は、ひたすら逃亡と追跡の物語になって、やや「看板に偽りあり」の感があることは否めない。
ただし、決して一箇所にとどまらず、移動し続ける登場人物と、彼らを追って変化し続ける場面が、小気味よいテンポと先の読めない展開を生み出していて、長尺ながら、少しも飽きることはなかった。
基本的には、父と娘、それぞれの、逃亡→拘束→脱出→反撃の話なのだが、その最中で、追われる者と追う者の立場が入れ替わる様子は面白いし、1人の娘と2人の父親の因縁の物語にも引き込まれた。
主人公が助けを求めた娘の空手のセンセイが、たまたま、不法入国者の支援組織のリーダーだったり、娘を執拗に付け狙う警官(どう見ても軍人だが•••)が、白人至上主義の秘密結社のメンバーだったりと、移民とか人種差別とかの問題が取り上げられてはいるものの、革命家のはずの主人公自身に、思想信条だとか、信念のようなものが感じられないところは、あえて政治的なメッセージ色を薄めているようで興味深い。
それどころか、主人公は、大切な合言葉を忘れてしまうようなダメ男として描かれていて、この、合言葉を巡っての電話でのやり取りには、思わず吹き出してしまった。
その主人公も、ラストで、娘を助けて格好いいところを見せるのかと思いきや、結局、娘が、自分自身で追跡者を撃退してしまって、最後まで主人公に見せ場がなかったところも、いかにも、この父親と娘(あの両親にして、この子あり!)らしくて良かったと思う。
また、ここで描かれた、上下に波打つ道路で繰り広げられる車同士の対決は、近年、稀に見る秀逸なアクションシーンのように思われて、そのアイデアに感心してしまった。そう言えば、主人公が、木の枝に引っ掛かりながらビルから転落したり、高速で走行中の車から道端に飛び降りたりといったスタント(もしかしたら、CGか?)も素晴らしく、そうしたアクションにも目を奪われた。
その一方で、主人公が、あれだけこだわっていた、互いに数百m以内に近づくとセンサーが反応するという機器が、ラストであまり活躍しなかったのは物足りないし、空手のセンセイが大切にしていた「銃のようなもの」が、実際にライフルで、しかも、望遠鏡としての役割りしか果たさなかった(これは、主人公の狙撃が下手くそだったからだが•••)ことにも、何だか拍子抜けしてしまった。
ただ、何よりも残念だったのは、せっかく生き残った警官が、あっさりとガスで殺されてしまったことで、これでは、何のために、(顔にメーキャップを施してまで)生き残らせたのかが分からない。どうせなら、警官が、白人至上主義者達に復讐して、きっちりと制裁を加えるというエンディングにしてもらいたかったと思えてならない。
さらには、主人公の黒人のパートナー(娘の母親)には、手紙だけでなく、ラストで再登場してもらいたかったとも思ったのだが、彼女は家庭に落ち着くような女性ではないので、これは、これで、良かったのだろう。
やはり、「勧善懲悪」で、スッキリ終わってほしかったですよね。
でも、いつまでたっても人種差別はなくならないという、アメリカの現実を描いているようにも思いました。
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