「苦手なPTAでもわかりやすい方の映画でよかった」ワン・バトル・アフター・アナザー カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
苦手なPTAでもわかりやすい方の映画でよかった
長尺にも関わらず展開が早く飽きさせない作りと、個性的な登場人物、ドメスティックではなく世界市場を意識した作り、現代アメリカに巣食う極端な保守思想(ほぼ全てショーン・ペンが体現)への風刺などでポール・トーマス・アンダーソンの作品としては比較的わかりやすく、総じて面白く観ることができた。
特に広大な砂漠を通る上下勾配の激しい一本道のカーチェイスは疾走感がエグく見どころがあり印象的だった。
が、引きの画像はかえってミニカーみたいに見え迫力不足を感じた。
信念や主体性がなく、周りに流されるがままにテロ活動してていた(ように見えた)革命家のボブだが、子供が産まれると主義主張をあっさりと捨て家庭を大事にしたくなり、生粋の武闘派革命家の妻に逃げられ、白人が少ない地域に身を潜め、娘からは一切リスペクトをされない超イけてないおじさんをレオナルド・デカプリオがダサく滑稽に演じているが、娘の行方がわからなくなってからの鬱陶しいくらい慌てふためく大袈裟な演技は監督の指導かも知れないが、あまり好きになれなかった。
娘の事を思う気持ちは伝わるが、合言葉を言えずブチ切れるし、終始騒がしく見苦しく鬱陶し過ぎてほんとうに共感出来なかった。
彼らを執拗に追うロックジョーは無骨で男らしい軍人(刑事?)、ペリフィディアとの倒錯した性行為に支配される少し情けない男、乙女のように恋する中年、女に逃げられ反動でレイシズムに急速に傾倒していく男など多様な顔を見せるが、主役よりも評価されやすそうなw役どころを見事に演じたショーン・ペンには実力と運を感じた。
ロックジョーの極めて特異なメンタリティとして興味深かったのは、自分の子供であることを確認した上で抹殺しようとしたこと。(普通逆だと思うけど)
それだけのめり込んで愛したペリフィディアの裏切りが許せなかった反動だと思うが、日本人としては中々理解しづらい感情。
センセイ役のベニチオ・デルトロは大好きな役者。
地下で移民を保護する活動をしており、ボブとは反体制のレジスタンスという意味では同胞だが、常に冷静で思慮深くボブの対比的な立ち位置で激シブ。
母と実父のDNAを感じさせる度胸と聡明さを後半で見せたウィラを印象的に演じたチェイス・インフィニティには将来性を感じた。
低身長のロックジョーの厚底履をいじる気の強さは最高だったし、空手の形も堂に入っておりなかなか見事だった。
でもなんと言っても強烈に印象的だったのはペリフィディアを演じたテヤナ・テイラー。
初めましての役者さんだが、噛みついてきそうなくらいワイルドで迫力のあるビジュアルはしばらく記憶に残りそう。
これらぶっ飛んだキャラクターだけでも観る価値ありだと思う。
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