「いや最高ですねw」ワン・バトル・アフター・アナザー LukeRacewalkerさんの映画レビュー(感想・評価)
いや最高ですねw
公開初日@TOHOシネマズ六本木ヒルズ。
ちなみに鑑賞直後では★4つですが、来週以降リピートし始めたら4.5とします。
最初の30分は「おいおい」と訝しむばかりだったが、その後の展開たるや抱腹絶倒で何度も声を上げて笑った。
いや別に、この作品は基本的にコメディではない。
しかしボブ(演;レオナルド・ディカプリオ)が、容赦なく笑わせて来るのだ。
あの「合言葉を忘れて言えない」のは悪夢に出てきそうなパターンだ。もー最高。
ディカさんに関しては『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』あたりから凋落したヘタレおっさんの妖しい妙味を出し始め、『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』でどうしようもないクズ男を見事に演じた挙げ句、この『ワン・バトル・アフター・アナザー』で「30年、酒とドラッグでダメンズになった」ポンコツ革命家、兼、毒父親でものすごい存在感を出した。
ついに「ディカさん=ダメおやじ」の境地を完成したのかもしれない。
その30年前の、移民勾留施設を武力解放して吠えるイカレた革命家たちの暴れっぷり(武力だけではなくセックスとドラッグと強盗三昧)は、これを観たトランプとMAGA勢に「だからリベラルは危ないのだ」という頓珍漢な主張の口実を与えそうでハラハラした。彼ら、ファンタジーと事実の境目がわからない人たちですからね。それが「おいおい」のところ。
しかし同時に、物語のカウンターパートとして(たぶんKKKを模しているのだろう)白人至上主義の極右クラブ「クリスマスの冒険者たち」の手先となる軍人、ロックジョー(演:ショーン・ペン)が描かれているので、そういう意味じゃバランスは取れている。どっちもバカだねぇ、クレイジーだねぇ、という意味で。
ショーン・ペン。
『アスファルト・シティ』では崩壊し破綻していったベテラン救命救急隊員をシリアスに演じていたが、この『ワンバト』ではガチガチのミリタリーおっさんでありながら一種の変態であるところを存分に演じていて、いやすごい俳優だ。
そして晴れて正式会員に迎えられ、専用の角部屋オフィスを与えられての末路は素晴らしい。
例えばの話、『ワンバト』が日本でリメイクされたと仮定した時に、同じ役をやれる同年輩の俳優が日本にいるだろうか?
さらにボブの高校生の娘、ウィラを演じた新進気鋭とされるチェイス・インフィニティがめちゃくちゃ良かった。
実年齢25歳らしいが、16~17歳をみずみずしく演じていて、今後が非常に楽しみな俳優である。眼差しが何だか昔のジェニファー・ビールスを彷彿とさせていた。
そしてなんとカラテ道場のセンセイがベニチオ・デル・トロでここでも爆笑。昨日『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』を観たばかりじゃないですかw
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最後に、感嘆したショットがある。
終盤になっての、砂漠の中のフリーウェイを2台のクルマが疾走するときの、道路のアップダウンの誇張である。
丘陵のコブをいくつも越えていくと言っても実際はそれほどの急坂ではないはずだが、極端な望遠レンズでまるでジェットコースターのようなアップダウンに見せた。このシーンはしばらく続く。
そこに生み出された没入感は、それまでのストーリーの「天国と地獄の往復」のような状況のアップダウンを暗示していた。
そして最後に叫ばれる合言葉。緊迫したカーチェイスとガンファイトの仕上げとして、その革命家たちの大真面目な合言葉は子どもの遊びじみた可笑しみさえ醸し、緊張の裏腹のナンセンスさを強烈に対比してくる。
ここ、見事であった。
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このあっけらかんとした「やりたい放題」の映画作りはタランティーノのクソガキを思い起こさせるが、しかしタランティーノより映画としては洗練されているように思えた。
わけのわからない比喩で大変恐縮だが、タランティーノが自慰的だとすればポール・トーマス・アンダーソンは計算ずくのポルノグラフィ的である。
あ。これ、映画ドットコムの投稿規定に反してませんかね?www
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