マルティネスのレビュー・感想・評価
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ハッと心掴まれる趣向や語り口がやさしくて心地よい
老いや孤独というテーマを、一握の切実さと可笑しみをまぶしながら描く。そういった意味では、どこの国でも作られる普遍的な万国共通のストーリーとも言えるのだが、しかし本作には決してそれだけでないハッと心を掴まれる趣向や語り口がある。ひとつにはマルティネスという口数少なく、常に険しい表情を絶やさない主人公がなかなか魅力的なのだ。彼のキャラクターや生活のリズムが確立されているからこそ、本作はミニマルな構造にふと別の風が吹き込んでくる時の新鮮さを味わえる。また、下階の部屋で孤独死した女性の遺品を紐解くうちに、だんだん心の内側に別の色合いが芽生え、これまで感じたことのない他者への慕情が溢れてくる展開もユニークで愛らしい。結局のところ、主人公の60歳という年齢はひとつの間口に過ぎず、この映画は年齢や性別に関係なく、すべての観客の心を包み込む。いついかなる時でも、人は変われる。その気づきが優しくて心地よい。
パブロは本当にイイ奴だった
60歳を迎えたチリ人のマルティネス。
キレイ好きで、几帳面、堅物で極端に人付き合いも悪く、お礼も満足に言えない人間嫌い。
アパートは夜になっても一晩中デカい音が鳴りっぱなし。耳栓して寝るのに慣れてしまって、音がしなくなってからは自分のテレビをつけっぱなしにして耳栓して寝る。
本当は寂しがり屋。
アパートの大家さんから、階下の女性からのプレゼントだと渡された木製の小鳥の置物。
孤独死した階下の女性の名前はアメリア。
窓下の廃棄処分された彼女の遺品を自分の部屋に大量に運び込むマルティネス。
かなり変態。
解雇が言い渡され、後釜のパブロがやってくる。パブロは一回り年下のメキシコ人で、あかるく、おせっかいな性格。
男2人でランジェリーショップに行って、アメリアへのプレゼントにピンクのキャミソールを買う。
そのあとのマルティネスの行動は恥ずかしくて観てらんなかった😎
コンチタちゃんの誕プレ買ってあげたい
孤独な60歳が見つけた“味わう生き方”
60歳、独身男子、会社では定年間際、ベテランなのに鷹揚なところがなく真面目すぎて面白みがない、健康だけには気を使っていて毎日同じ健康習慣を守っている。親しい友達がいない……。
設定上、自分と重なるところがあまりにも多い主人公。共感しつつ、自分のダメさを突きつけられるようなアンビバレントな鑑賞体験となった。
ただ、この主人公の生真面目さや孤立した生活は、個人の性格特性であるとともに、状況によって作られた面も多そうだ。
おそらく80〜90年代に不安定なチリからメキシコに単身働きにきてそのまま居着いたこと。だから地域社会や血縁などのネットワークがなく、また1人で食べていくだけで精一杯だったかもしれないこと。会社でも首にならないようにきちんと仕事をこなす真面目さが必要だったこと。何より、会社の規範、職業倫理だけが彼を支えたのかもしれないこと。これらが設定から推察されたし、僕の共感した点でもあった。
そして下の階に住む見知らぬ女性。会ったこともないが、彼女の死後、半年近く、テレビを見ながら死んだ彼女のうるさいテレビの音に包まれて暮らしてきた。
ずっとすごくイライラさせられたが、その音が止んでしまうと眠れない。つまり、マルティネスは彼女の存在を感じ、また彼女も上の階の彼の存在を感じていたことが示される。
この辺りも内向的な独身者のリアリティとしてわかる気がする。実際の付き合いは苦手だから、リアルな交流は少ないのだけれど、だからと言って人に興味がないわけではなく、かつてのあるいは現在の知り合いや、あるいは本や映画の作り手や登場人物と内的に交流し、それなりの関係性を持っているものだと思う。
マルティネスの場合は、融通の効かない仕事人間で、多分ちゃんと働くだけで精一杯だったんだと思う。というか僕も心当たりがあるけれど、職場の規律に従ってちゃんと働いているということが彼の規範であり、拠り所だったのだ。
しかし、定年という職業人としての死、そしてテレビの音を通して内心身近な存在であった階下の住人の死、
この二つの死によって、彼の新しい生き方、不器用だけれど人と関わり、また新たな喜びに開放的になって試してみるというような形に彼は導かれたのだと思った。
階下の見知らぬ死んでしまった女性は、日記や写真を通じてマルティネスのメンターのようになって、彼を新しい生き方に導く。
大したことではない。プラネタリウムに行ったり,彼女の料理本をみて、新しいレシピに挑戦したり、そのほか彼女が「やりたいことリスト」として手帳に残したことを、なぞるようにしてやり始める。
これまではルーティンの水泳の時にしか感じられなかった「満たされた孤独な時間」がもっとさまざまな場面で現れて、日常が「満たされた孤独」の時間に変わっていく。
この映画では明確に描かれないが、もう人生長くない、いつ死ぬかわからない、そんな有限性を感じることで、それまでの「生き延びる生き方」から「味わう生き方」に変わる1人のシニア男性の物語だ。
同世代で内心モデルにしてる憧れの存在のデンゼル・ワシントンやブラット・ピットのようなカッコよさはない。それだけにこれならできると思える人生モデルとしてこの映画を受け止めた。
忘れられない一作になりそうである。
本当に得たものは
定年間近の孤独で偏屈な男の隣人が孤独死。しかしその遺品に触れていくうちにいつしか恋心のようなものが芽生え、自身も変わっていき…と言った物語。
初っ端からマルティネスの透かし芸がお見事。これだけ絶妙だと、何テイクもしたんだろうな…と本筋じゃない所に感心。
さておき、偏屈なマルティネス…とのことだが、コンチタ・パブロもタイプは違えど充分に変わり者だろ(笑)そんなこんなありながら、3人を中心とした人間ドラマが展開されていく。
序盤は結構退屈かな~なんて思っていたが、彼が人間味を増していくにつれ中々にのめり込ませられる。空想上の恋人…他の人がやっていたら正気を保て‼…なんて言ってしまいそうだが、彼に限ってはなんだか応援したくなるから不思議ですね。しかも、それを機に同僚達との関係も…。
マルティネスのみならず、コンチタとパブロの物語も良い味出。そうそう、人は皆どこか孤独を抱えているものですよね。少ないけど、星飛雄馬になる前に2人が来てくれたシーンはなんだかとってもホッコリしましたよね。まぁこっちは誕生パーティーだけど。
存在はしなくとも、その恋人が人生を好転させてくれた…なのか、或いは存在しない恋人よりも今いる友を…ということでしょうか。彼の所を訪れるラストにもグッときた。これからの3人に幸あれッ‼
静かな展開ながらも、確かに心にガツンと響くメッセージを持った良作だった。
「人」という字は
時には誰かにもたれかかってもイイじゃないか。それが知っている人でも知らない人でも、イヤ、なんならこの世を去っていたって。
若かりし頃の栄誉なのであろう水泳の色褪せたトロフィーくらいしか無い単色のマルティネスの部屋、それがいろどりを増し始め、隣人(故人)の【やりたいことリスト】をなぞりながら経験を重ねることで、波の無かった感情が脈打ち始める。
しかし長年培った、凝り固まった己の自我を変えることはたやすいことではない。変わりたいのに変われない、そんな葛藤を無口な彼の言葉に代わり、表情が物語っていた。
そして、オールバックの髪型を変え、退職してからの表情は一層穏やかになっていた。
メキシコの街並み、ラテンアメリカの陽気でユルい感じ、他人への距離感、言語、全てが穏やかで心に染み入った。
ただ一つ気になったのは、書庫に迷い込んだ鳥は無事に脱出できたのだろうか?で、あのシーンの心情も推し量れなかった。
静かなカタルシス
これは拾いものだった。
主人公マルティネスは、初老のチリ出身の移民男性、メキシコの古都グアダラハラの役所で働いていて、定年退職を控えていた。内面的で、極めて狷介だが、本当に最初からそうだったかどうか、少なくとも20年前は、かなり魅力的な男性だったのではと思う。大柄で美丈夫、服装もしっかり、何より、部屋がきれいに片付いている。
おそらく老獪になったのは、仕事の影響もあるのでは。役所の書類の系統的な整理と言う、誰にもできないことをしたようだ。同僚と付き合いもせず、毎日、家と職場の往復のみ。休日は、プールで水泳をするくらいか。誰一人、信頼し、心を許せる人はいない。
そんな彼だったが、アパートの階下の夫人アマリアが亡くなったことをきっかけに、変わって行く。いわばアマリアは仮想の恋人。彼女が遺したスケジュール帳を見ては、彼女が行きたかった場所を訪ねてみる。鼻歌を歌ったりするようになった彼を見て、驚いたのは彼の同僚のパブロと、秘書役のコンチタ。マルティネスに恋人ができたのではないかと思う。彼らも、本当は孤独な魂を抱えているのだが、表面上は外向的に見える。マルティネスは、かつて付き合いのあったらしいコンチタの誕生パーティに出かけて、カラオケでカミロ・セストを熱唱したりする。私は黒澤明の「生きる」に出てきた定年間際の市役所の課長を思い出していた。マルティネスが、アマリアをきっかけに、同僚との交流を通じて、改めて気づく「生きる悦び」。
頂点は、アマリアと二人だけの食事会。めかしこんで、テーブルをセットし、赤ワインが用意される。アキ・カウリスマキを思い出すが、北欧フィンランドより、ずっと美味しそうだった。
そんな彼だけど、やはり決断の時は来る。パブロは彼の後任だったから。それが、とても心配だった。でもマルティネスらしい生き方を見つける。どうやら、彼のモデルは、ロレーナ・パディージャ監督のお父さんだったみたい。
舞台を回してゆくのは、やはり音楽。これもアキ・カウリスマキと同じ。スペインの往年のアイドル、カミロ・セストのラテン・バラードもよかったけれど、私には、太陽が沈んでゆく時、一瞬輝いて見えるような、ストラヴィンスキーの「火の鳥」の終曲が、一番良かった!
孤独を抱えている、現在と将来の高齢者の方に、ぜひ!
前半よりも後半で伏線回収
前半は2025年1月公開の日本映画敵のメキシコ版みたいなストーリーかなと思ったが、堅物のマルティネスがある出来事に遭遇しこれを境に人生の好奇心を示す。後半は色々考えさせられた作品。ただ、作品内容を見ると好みは分かれそう。
隣人の思いやり
マルティネスの生真面目さが毎日の暮らしにあらわれていて、結構なイケオジなのに(若い頃はハンサムだったらしい)今まであまり人生を楽しまずにストイックに生きて来たのは何故なんだろう。
隣人のアマリアの遺品の数々が、どれも年齢を重ねてもかわいらしい女性だったのだと想像できる。家庭でずっと「待つ身」だったから手芸とか料理を楽しんでいたのかな。
職場で隣人になる後任のパブロも最初はうっとおしくて、こんな人と同じ職場だと最悪やぁと思わせるけど、結局「いい奴やん」となる。
職場で同期の女性コンチタも「仕事しろよ!」と最初は観ていて目障りだけど、結局「寂しさを抱えた優しい人」にかわっていく。
人生楽しまなきゃなぁ。
最早変態化w
メキシコで会社勤めをする60歳の堅物チリ人の変化の話。
ある日突然後任のパブロを紹介されて、契約終了が告げられると共に、孤独死したアパートの階下のアマリアからの贈り物が届けられてというストーリー。
日本人からしたらマジメなのは良いけれど、この国ではどうもマジメに仕事をするだけの人はダメみたいですね…なんて状況だけど、確かに効率悪いし融通きかないし愛想悪いしともみえて、老害まっしぐら?
そんなマルティネスがパブロのおかげかアマリアのおかげか?ある意味ぶっ壊れ、余白を楽しむ様になるは機転が利くし軽口も言える様になるは…。
あまり大きな波はないし、意外性もなかったけれど、良い年したおっさんが、人間ぽくなっていく感じはちょとコミカルだった。
孤独死こわい。
実体は偏執的ストーカーの狂気。
独特のテンポ、
なんでこんなストーリーが思いつくんだろう? (いい意味で、です) ...
なんでこんなストーリーが思いつくんだろう?
(いい意味で、です)
ここまで変われるなら、
今までの人生で変わるきっかけもあっただろうとも思うけど、
やっぱり相手は死人で何も反応を返さないからこそ、
素直になれたんでしょうね
ラストもいい感じでした
残りの人生もぜひ充実させて欲しいです
人事はもっと仕事して
脇キャラの素敵さ
プラネタリウムの説明しただけで、全く悪くない受付のお姉さんは気の毒
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