劇場公開日 2025年7月12日

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「ブラザーズ・クエイの19年ぶりの新作! テイストは大好物だが、いかんせん難解すぎる……。」砂時計サナトリウム じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 ブラザーズ・クエイの19年ぶりの新作! テイストは大好物だが、いかんせん難解すぎる……。

2025年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ストリート・オブ・クロコダイル』(86)や『ベンヤメンタ学院』(95)で知られるブラザーズ・クエイの19年ぶりの新作ということで、期待に胸を膨らませながら映画館に足を運んだが……とにかく筋のまったくわからない映画だったな。
もとい、筋をわからせる気のまったくない映画だったな(笑)。

映像の雰囲気は、相変わらず素晴らしいんですよ。
なんともいえない不気味な造形の人形。
ゴチック調の深みのある美術と、
無声映画を意識したフィルム処理。
精密に仕上げられた「デコール」(アニメーションのセットと舞台の模型のこと。クエイ兄弟によって独自の意味が込められている。2017年に松濤美術館で開催された『クエイ兄弟 ―ファントム・ミュージアム―』展で、たくさん観ることができた。彼らはアニメーション制作で使用した舞台装置を「箱」として保存しているのだ)。

出てくるキャラクターのビジュアルインパクトも凄い。
山高帽をかぶったショパンみたいな顔の主人公。
唐突に登場する六臂の阿修羅のような異形の男。
なんで六本腕?? でも存在感あるわあ。
あと、タイトル自体も澁澤チックでかっこいい。

ただ、とにかく話がよくわからない(笑)。
ヨゼフという若者が、列車に乗って
得体の知れないサナトリウムに到着し、
建物内を彷徨うが、出てくる人間は
みんなうろんで、要領を得ない。
死の床にある父親を訪ねたらしいが、
サナトリウムの住人は、「ここは
時間が遅れている」といったことをいう。

女性ものの靴をはこうとする足の映像。
巨大な眼球のようなものをすくう映像。
時計か炉のような蓋の中にはいる映像。
さまざまなイメージショットが、
何度も何度も小刻みにリフレインされる。
ただ、なんの光景なのかも、
そこに挿入される意味も、
浅学の僕には理解不能なことばかりだ。

交わされる会話も概念的で、抽象的。
ブルーノ・シュルツの原作準拠だとすれば、
原作自体がかなりの難物なのだろう。

ついでにいうと、実写と人形アニメの区分や、
実写パートにおける、兼ね役の意味合いも
よくわからない。

総じて、本当に「何もわからない」せいで、
ついつい観ながらうとうとしてしまうので、
さらに何が起きているか追えなくなって、
あとはぼーーっと観ているうちに終わる(笑)。

内容を理解するためには見返してみたいけど、
見返すほどに、はまれなかった自分がいる。

全体のノリとして、ホテルなり病院があって、その多層的な構造のなかにいくつも部屋があって、奇妙な連中がそれぞれの部屋で不思議な行動をとっている、という構図自体は、これまでのブラザーズ・クエイの作品とも共通するし、パトリック・ボカノウスキーの『天使』(82)やガイ・マディンの『ギムリ・ホスピタル』(88)とも似た部分がある。

何より似ているなと思うのは、アヴァンギャルド映画の嚆矢ともいえる、ジャン・コクトーの『詩人の血』(32)だ。
建物の構造が、覗き部屋の集積のようになっているところ。
主人公のそこに「迷い込んだ」ような感覚と、各部屋での「窃視」の感覚。
(いわゆる「覗きからくり」のギミックが援用される。)
靴フェチぶりや、トリック撮影、リピートとリフレイン。
視聴感覚や、観客との間合いが、とても『詩人の血』と似ている気がする。
(ついでにいうと、章構成になっていて、毎回章タイトルの静止画が挿入されるのは、無声映画の形式を踏襲している。ちょうど同じ演出を『ストレンジ・ダーリン』(24)で先日目にしたばかりだが……(笑))

個人的には、『詩人の血』のテイストに、ポーランドやチェコスロヴァキアの前衛的パペット・アニメーションの伝統を接ぎ木したのが、『砂時計サナトリウム』独特の味わいではないかと感じた。

本作の主眼が、現実と幻想、過去と夢の織りなす「あわい」を描くことであり、テーマが「時間」の束縛からの解放と「永遠」について思索することなのは、漠然とそうだろうなと思うわけだが、文学的・哲学的考察については僕の手には到底余るものなので、ここではスルーするしかない(パンフは参考になるにせよ、これがまたどの識者の方も、いってることがほんとに難解なんだよねww)。

ただ、これだけ観客を置いてけぼりにして、自らの思索的世界に耽溺されてしまうと、その世界観に客がのめりこむのはまあまあ難しいかなあ、と思う。
繰り返すが、テイストとしては大好物。
瞬間、瞬間の「静止画」としても素晴らしい。
でも、僕にはとても咀嚼できなかったし、
呑み込むことも能わなかった。

じゃい
2025年7月28日

松濤は、たまに思いがけない良い展覧会をやりますね。舟越桂展とか。映画関係だと、昔観に行ったシュヴァンクマイエル展やクローネンバーグ展、デイヴィッド・リンチ展などが懐かしく思い出されます。



すご〜〜い!!

きっちり、いいとこおさえてますねぇ

クローネンバーグ、異質で稀有な作家〜

リンチ、勿論、鬼才・奇才!!

舟越桂さんは、目玉がストリートオブクロコダイルっぽいかも。
素敵な作品を制作されますよね。

すばらしい活動(展覧会来訪)の数々、、、

その行動力、
めっちゃ見習いたいです!! ^_^

ユッキー ウッキー(略して ユキウキ)
2025年7月28日

2017年に松濤美術館で開催された『クエイ兄弟 ―ファントム・ミュージアム―』展で、たくさん観ることができた。彼らはアニメーション制作で使用した舞台装置を「箱」として保存しているのだ)。



展覧会行かれたんですね、
すごいなぁ〜、せいりょくてきに
活動されてますねぇ、
リスペクト、リスペクト!!

またのコメント失礼しましたっ💦

ユッキー ウッキー(略して ユキウキ)
2025年7月26日

コメント、ありがとうございます。

次はヤンでしょうか。
行けるかなぁ〜、行きたいなぁ。

たしかに、同じ空間にいたりなんかして、
それもおもしろいもんですね ^_^

ヤンさんは、むかしに短編しか観たことがありませんが、どれもオリジナリティ溢れる作品でよかったです。

新作で宮崎駿みたく引退宣言をしているようで、こりゃあ宣伝文句としても、知ったからには行かなくちゃなぁ。
だって、事件は現場で起こってますもんねっ

なんのこっちゃ 🙃

ユッキー ウッキー(略して ユキウキ)
2025年7月26日

レビューで知ることができて
本日観ることができました。

いやぁ〜独特世界観をまっとうしてますねぇ、
この兄弟。

ここまで自分達のワールドに誘い込まれると
もう黙って眺めるしかないでしょうか。

久しぶりにイメージフォーラムに行けて
マニアックな自分濃度をアップできてよかったです。^_^

ユッキー ウッキー(略して ユキウキ)
2025年7月18日

観に行ったんですねぇ〜〜

自分はスーパーマンがカチました 💦

このレビューは全く読んでませんが、
もし観に行ったら絶対読みます ^_^

ユッキー ウッキー(略して ユキウキ)