スプリングスティーン 孤独のハイウェイのレビュー・感想・評価
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元ファン(しかも大昔)の落としどころ
ブルース・スプリングスティーン
高校生のとき、友人の「Born in the USA」(’84)のカセットテープをおシャカにして、殴られ手前までいったことが懐かしい。BOSSを聞かなくなった原因は当時のカラオケブーム。BOSSを聞かず、「そのくせ」浜省や佐野、長渕や尾崎、THE虎舞竜を一生懸命歌っていたという大学生だったわけだ。
オレの中のBOSSは、「Tunnel of Love」(’87)で終わっている。ただし、その収録曲「Brilliant Disguise」はオレの生涯プレイリストとして刻まれている。蛇足だが、この曲の技巧的な構成、跳ねないメロディだがその美しさ、独白的でつぶやくようでひねり出す歌声とその歌のテーマとの統一感が、おっさんを奮いあがらせる。「Brilliant Disguise」はカラオケでは歌えない、歌ってはいけない。
残念なことだが、初期のBOSSの曲しか知らないで本作に臨むことになった。大作「The River」('80)でスターとなったが、ライブ後の空虚感、孤独感が強かった時期で自身の苦悩を吐き出す、精神を保つ方法としてわがままに録った作品「Nebraska」('82)の制作秘話。
高校生のときはさすがに「Nebraska」みたいなアルバムにはハマれないが、今でも聞けるかというと、せいぜい「Atlantic City」。そんな話に、「地味」スコット・クーパー監督のもと、BOSSの全面協力の下、「はやりの」伝記映画の流れとして公開。全米ではヒットせず。
スプリングスティーン 孤独のハイウェイ
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予想通り、「地味な」映画だ。オープニングの子供時代の地味なエピソードから始まり、「Born to Run」のあっさりのライブシーン。そこからブルース自身の解放のため、周囲から見ると、わがままな作品を、わがままな行動でひねり出す。
本作のラストで語られるように、今も鬱を抱えているというBOSSはこれまでも巨大な人気や社会的役割を受けると、本人が「静かな場所へ戻りたい」という心境になるのか、「陽」→「陰」→「陽」→「陰」のサイクルでアルバムを発表してきたといわれるように、本作は自伝もすでに書き上げてはいたが、自身を開放する「映像」作品、という位置づけになる。それが本作の語り口の「言い訳」にもなっている。
だが、本作のエンドロールで「Atlantic City」のロックバージョンが流れるように、「陰」を吐き出すためだけの映画、というわけでもないようで、ちょっとたちが悪いが、父と子の関係、恋人との関係、仕事のパートナーといった普遍的な関係を(おそらく)嘘偽りないエピソードで紡いでいることは、BOSSのやり残した「作品」ということになるかもしれない。
そう考えると、カウンセラーに診てもらって数か月で、すっきり父との和解といった超絶急展開もこちらは流すしかない。
これは「彼」の「作品」だから。
なんだけど、娯楽作品を求めると、まあ、納得はしない。
と思って書き終えようとしたら、思い出した。BOSSの「作品」に対する姿勢、自分自身や家族、友人、社会と向き合うことで、夢を語れ、talk about a dream try to make it realというテーマを、分かりやすいドラマで、BOSSの思いを実現した青年の実話に基づく映画があったじゃないか。
「カセットテープ・ダイアリーズ」邦題 Blinded by the Light('19)
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収録曲に「Nebraska」の収録曲はない(はず)だが、パキと呼ばれ差別を受ける青年が、BOSSを初めて聞いて稲妻が走り、自身の文才を(自身とBOSSの歌とシンクロさせて)努力で開花させ、(本作と同じように)向き合えない父親との和解、と労働階級からの少年の旅立ちあるあるの(「リトル・ダンサー」('00)とかの)わかりやすい青春映画。
初期の有名曲「Thunder Road」(これ大好き)、「Born to Run」の、これぞという使い方が感動的。これらでダンスシーンを撮るのも画期的。
「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」の、ファンなら許せる超わがままで、あまり親切でない語り口も、ここにはなくBOSS自身が体現し、成し遂げたこと。あれだけ故郷を嫌い、父を嫌うも、自身が変わり、向き合うことで、自身を、父を、故郷を救う。冒頭街名の標識に「Sucks」と書かれた落書きが消されているラストが感動的。
本作が分かりにくい、とっつきにくいのであれば、こちらで補完するといい。
追記
ブルースを演じたジェレミー・アレン・ホワイト。ライブ時のギターの弾き方、顔の大きさもイイ感じ。似ている、似てないは置いといて。
追記2
80-90年代の洋楽でケツの青い高校生だったオレが、「マイケル」以外で伝記映画をやってほしいのは、誰がいいかなあ、と。
小品でいいので、The Banglesかな。(バンド名由来の「The Beatles」もやるようだし)
ロック伝説にリアルな手触りを与えてくれる
スコット・クーパー監督ということで極めてオーソドックスな見せ方の人間ドラマになっていて、決してエッジな映画ではない。地味渋アルバム『ネブラスカ』制作の裏話ということでロックスターの伝記映画という雰囲気も薄いのだが、映画を観るまでぜんぜん似てないじゃないかと思っていたジェレミー・アレン・ホワイトが、冒頭で「明日なき暴走」を歌うライブシーンでスプリングスティーン独特のエネルギー過多なパフォーマンスをみごとに表現していて、このライドに安心して乗っていいという保証を得た気がした。
束の間の恋人になる相手は、スプリングスティーンが関わった複数の女性を参考にして生み出されたオリジナルキャラだというが、当時のスプリングスティーンの未熟さを際立たせるいい存在になっていて、とても映画的というか物語的というか、よくある都合のいいマジカルワーキングクラスガールになりそうなところを、便利な救済を与えてくれるわけでもないし、なんならひどい捨てられ方をしていて、その辺の容赦なさもいい。
あと自分も信じていたし、この映画についても未だに書かれがちな「ベッドルームで一人で宅録したアルバム」という伝説が、ちゃんとレコーディング係としてギターテックを呼んでいたり、ティアックの4トラックカセットテープレコーダーがまだ発売されたばかりでバカでかかったり、あのディープなエコーはトラックダウンのときに強引にエコープレックスを噛ましていたことがわかったり、積み重ねたディテールのおかげで伝説にリアルな手触りが宿ったことも薄めのファンとしてありがたかったです。
有名曲のバンド演奏シーンが少ないのはやはりさびしい
本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書いてみたい。
個人的にスプリングスティーンのファンではなかったが、80年代に日本のテレビやラジオで流れる洋楽をリアルタイムで聴いていた記憶をたどると、1980年の「Hungry Heart」が街中でも流れて一気に知名度があがり、以降の「The River」「Dancing in the Dark」や、何年か前の「Born to Run」もちょいちょい耳にするようになり、84年の「Born in the U.S.A.」で大爆発という流れではなかったか。
劇映画「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」はアルバム「ネブラスカ」を世に出すまでの“生みの苦しみ”にフォーカスしたので仕方ない部分もあるが、馴染みのある「Dancing in the Dark」や「Glory Days」「I'm Goin' Down」あたりが劇中で聴けないのは少々さびしい。
「Born to Run」のライブ演奏、「Born in the U.S.A.」のスタジオ演奏のシーンはジェレミー・アレン・ホワイトの熱唱も素晴らしく胸が熱くなった。ただ後者は、劇中でデモテープの音源を先に聴かせて、スタジオで大きくアレンジが変わったことを描いているものの、「2テイク目で奇跡が起きてあの熱演が生まれた」という各所でよく目にするエピソードまで入れ込んだら、あのシークエンスがさらに良くなったのではと物足りなさも感じた。
ブルースを支えたマネージャー兼プロデューサーのジョン・ランダウ役、ジェレミー・ストロングのなりきり演技には改めて驚かされた。「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」と本作を両方観て、あちらの冷酷で凄味のあるロイ・コーンを演じたのと同じ役者だと気づかない観客もいるのでなかろうか。
”マッチョなアメリカの象徴ボス”はここに居ない、ここにいるのは人間ブルース・フレデリック・ジョセフ・スプリングスティーン
まずはじめに
フレディ・マーキュリーを描いた「ボヘミアンラプソディ」や
ボブ・ディランを描いた「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」
の様な作品を期待して観に行かれる方には絶対!勧めない。
何故ならここには、スタジアムで拳を突き上げるラミ マレック演じる”フレディ・マーキュリー”や、ティモシー・シャラメ演じる生きる伝説”ボブ・ディラン”の様な”華”は無いからである。
まるでドキュメンタリー作品を観ているかの様な淡々とした画づくりには、1985年「BORN IN THE U.S.A. TOUR」日本公演で”ボス”が見せたエネルギッシュな姿は無い。ついついボスの“陽”な面に目がいってしまうが、その実”陰”からの”解放”があの名曲「BORN IN THE U.S.A.」に繋がったかと思うとあまりにも胸が”キュッ”となる作品だ。
この作品が単館上映でなく、何故全国ロードショーで公開されたのか、鑑賞された方には是非考えて欲しい作品であると共に、よくぞこの作品をロードショー公開したと20世紀スタジオには拍手を送りたい。
5枚目のアルバム「ザ・リバー」で初のビルボードNo.1を記録した、7枚目のアルバムではかの有名な「ボーン・イン・ザ・USA」が爆発的大ヒット、そして本作はそんな歴史的アルバム誕生の前作6枚目の「ネブラスカ」製作の裏側を描いている。まさに異色の一枚、アコースティックギターとハーモニカだけで自宅で録音、それもティアックの4chマルチトラック・カセットレコーダーでデモテープ用に録音した物をアルバム化。当時はレコードからCDへの急速な移行期、デモ音源のアルバム発売も異例中の異例だが、そんなシチュエーションでしか出せない”アトモスフィア”なサウンドは類を見ない。
そんな、スプリングスティーンの音へのこだわりが、劇中で登場するスカーリー のカッティングマシーンで録音するシーンに凝縮されている気がする。
デジタル全盛の現代、サブスクで圧縮した音を聴いてる人にはピンと来ないかもしれないアナログな“世界”だが、デジタルの音と音の間には信号には変換されていない”音”が存在している。この作品にはそんな、聴こえている様で聴いていない隠された“音”を映像で見ている様な一作だ。
ファンなら必見!
ボスを世界的に知らしめた大ヒット曲「ボーインザU·S·A」をリアルタイムで聞いていました。
必然的に過去作も聴きたくなり「ネブラスカ」、「ザ・リバー」、「明日なき暴走」と今では貴重なLPを買いました。
中でも「ネブラスカ」は異色作で地味でロックンロールをしていなかったので自分の中では忘れ去られた作品でした。
そして本作の「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」で「ネブラスカ」の誕生秘話を知ることになるとは!
ボス役を演じたジェレミー・アレン・ホワイトの演技は見事で歌って演奏をするだけでなく内なる闇も表現しなくてはいけないかなり難易度の高さを感じさせるものでした。
昔ボスのファンだった人には楽しめる作品ですが、そうでない人には肩透かしを食らうのではないでしょうか。
観る人を選びそうです。
大衆人気と孤高の幸運な両立
スプリングスティーンは、ビートルズやディランのような生まれながらの天才というより、「希望のない工場街からバイクに乗って抜け出す」という大衆向けロックの物語を紡いできた人。
無数のフォロワーを生み出したように圧倒的に感染力が高く、それが少し野暮ったいイメージにもつながっている。
この映画はヒットメーカーとして大成功したスプリングスティーンが、人生の曲がり角に立った時期を描く。原点に戻るように故郷の街で家を借り、ギターとハーモニカ、テープレコーダーだけで曲作りを開始。
ネタ探しのようにTVをザッピングするうち、少年による殺人事件の再現ドラマに目を止める。幼い頃の父の暴力、その父を殺したいという衝動などの記憶が蘇り、自分の暗部に向き合う曲を生み出すのだ。
実在する殺人事件と、スプリングスティーンと父の間に起きたわだかまりが結びつき、ちょっとした心理サスペンスのような緊張感がある。
同時にこれは、「宅録」のようなテープをそのまま発表したいという音楽家とレコード会社のビジネスをめぐる対立のドラマでもある。
この時期に偶然生まれた「ボーン・イン・ザ・USA」が超キャッチーな傑作になってしまい、「なぜこれを出さないのか」と迫られるのだから、ぜいたくな悩みだ。
故郷の小さいライブハウスに出演し、バーで働くシングルマザーと恋に落ち、庶民的な姿も描かれるのだが、結局は創作に没頭して彼女を幸せにできない。その奥には、父親と同じく人を愛せず、精神を病む自分への恐怖がある。
ごく個人的な悩みであっても、スプリングスティーンが歌えば国民的ヒットになってしまう。その裏側には罪悪感、恐怖といった奥深い物語がある。これらが同居した稀有なスターなのだ。
この映画自体、人間臭い苦悩、精神の闇、そして才能が爆発する瞬間をテンポよく見せてくれ、スプリングスティーンの映画として理想的なバランスだったのではないか。
ブルース・スプリングスティーンの知られざる一面
中高生時代に一時好んでブルース・スプリングスティーンを聴いていたことと、「ボヘミアン・ラプソディ」的な圧倒的な爽快感と感動を求めて、早めに上映回数が減っている最中滑り込みで劇場へ。
観てみると、期待していたライブシーンや栄光に向かって昇り詰めるさまは少なめで、主にブルース・スプリングスティーンの苦悩をクローズアップしているため、比較的重めの作風。その苦悩は家庭環境に起因しているようだが、そもそも50年代当時では特別びっくりするような家庭環境でもないような気もするが…この尺度はちょっと昭和的感覚過ぎるでしょうか。いずれにしてもあまり入り込めず、不覚にも何度か寝落ちしてしまった。もったいない!
正直作品としては期待が大きかったぶん残念な感じであったが、ブルース・スプリングスティーンの知られざる一面を垣間観れたのは収穫ではあったかな。
♪つめた〜いわかれーじゃーないんーだーよ〜
ボーン・トゥー・ラン
私のブルース・スプリングスティーンのイメージはチェックのシャツとニュージャージーだ。
クラレンス・クラモンズと一緒に写った「明日なき暴走」と言う疾走感溢れるアルバムを買って、その後「アズベリーパークからの挨拶」を聴いた。順番が逆だったけど「アズベリー〜」はニュージャージーでの生活を現した様な曲が多かった様に記憶しているけど…確か「アダム・レイズド・ケイン」とかを聴いた時、少しスプリングスティーンの闇の様なものを感じたけど、この映画を観て何と無く理解出来た様に思えた。
子供の頃、父親に抱いていた感情も自分も大人になり父親と同じ苦しみを味わって、初めて父親の事も理解出来たのでは無いか…
初めてのお父さんの膝の上はどんなに温かったか。
そんな苦しみの中で次々と曲を作っていたのかと思うと、胸が痛むのと同じ位感謝と労いの気持ちで一杯になった。
と言っても、もう半世紀近く遠ざかってた人。
そんな人が今でも活躍してるのを見るのは、何て勇気を貰えるのだろうと懐かしさと嬉しさで胸が熱くなった。
長年の疑問が解消しました
中学生の頃、The riverを聞いて一発でファンになりました。Born to runは最高傑作です。
Born in the USAの歌詞にある、kill the yellow men の歌詞が中学生には抵抗感があったこと、併せてNebraskaの地味さが理解できず、その後はフェードアウトしましたが、10年ほど前に行ったドイツでの雨の中でのライブは、やはりBossの凄さを実感させられました。
今回の映画は賛否両論あるようですが、自分としては、彼が鬱だったとの事実含め、当時は全く理解できなかったNebraska発表の背景が理解でき、非常にすっきりした次第です。2回見ましたが、何度でも見たいと思ってます。
ただ、フェイとの結末は残念でした。
スーパースターもつらいね
地味で内省的な映画だ。
しかしこれはぐっとくる
彼の生涯を描いたものではなく、
ボーインザUSAがヒットする前の
アルバム「ネブラスカ」を作るプロセスを
描いた一作。
リアルかどうかを徹底的に考え
歌詞を書いていくさま、創作の苦しみと孤独感を
見せる一方で、父親に虐待めいた扱いを受け
怯える少年時代の物語を展開させる。
弱さと強さ、傲慢と謙虚、真実と嘘、誰もが併せ持つ
矛と盾を、トラウマへの苦悩を、この偉大な表現者を
通して、映画は普遍的なテーマを静かにしかし
深く掘り下げていく。
ただのサクセスや自伝映画にとどまらない
とてもインディーズな香りのする小説のような
作品だ。
その世界観を、ブルースを通して描くこの監督は
ただものじゃない。
主演のジェレミー・アレン・ホワイトの成りきりぶりも
見事の一言。
一言も脚本に注文をつけず、映画化を許可した
ブルースもさすがだ。
伝説になるには早い気がする
ブルース・スプリングスティーンは、好きでも嫌いでもないんだけど、ロック好きな人としては見ておこうと見てきました。
まずは、ブルース・スプリングスティーンもボブ・ディランも、まだ死んじゃいないんだから、まだまだ伝説になるのは早いと思いますが・・・・
本作品を見ると、なぜ、ブルース・スプリングスティーンの「ネブラスカ」が生まれて、あのブルース・スプリングスティーンのこれからと言う時期にあのようなアルバムが出来たのか、また、ブルース・スプリングスティーンが歌う歌詞の世界観などが分かってくる内容となっています。
ステージ上の彼の姿からは想像もできない彼の裏側と言うべきでしょうか。
また、父親の愛に困惑しながらも、しかし、最後は、やはり父親を愛しているブルース・スプリングスティーンの姿が、まだ私も父を亡くして数年しか経っていないことから、彼とはまた違う形であるのだけど、何とも親近感と言うか・・・切なくなるというか・・・
しかし、ブルース・スプリングスティーンは、ある意味、周りに恵まれているよな・・・
周りがいいから、彼もあれだけの事が出来るのかもしれないと思った。
本作品を見ると、改めてブルース・スプリングスティーンの初期作品を歌詞カードを見ながら聞き直したくなった。
孤独と葛藤のブルース
ブルース・スプリングスティーンの大ファンとして、80年代は『Born in the U.S.A.』をはじめ、彼の音楽が常に生活の中にあった。だからこそ、本作には強い期待があった。
本作は、成功の頂点に立ちながらも背負い続けた重圧、楽曲への強いこだわり、そして幼少期のトラウマに起因する精神的な葛藤を、かなり内省的に描いている。華やかなスター像よりも、「孤独な一人の人間」としてのスプリングスティーンに焦点を当てた作品だ。
スターの自伝的映画にありがちなように、音楽的成功やキャリアの軌跡よりも、内面の苦悩や精神的なドラマが物語の中心となっている点は好みが分かれるところだろう。
個人的には、楽曲が生まれた背景や成功へと駆け上がっていく過程、そして熱いライブシーンをもっと体感したかった。その分、作品世界に入り込みきれず、残念だった。
一方で、スプリングスティーンを「ロックの象徴」としてではなく、「葛藤を抱えながら表現し続けた人間」として知りたい人にとっては、静かに心に残る一本だと思う。
80年代、夢中で聴いていたあの頃が甦ってきた
ボスは歌詞を理解しないと理解しづらい
小学生の頃、中学生の姉がめちゃハマってて毎日明日なき暴走とかリバー聞かされていました。
半袖を捲ってバンダナまいて暑苦しく歌うボスが当時どうにも好きになれなかった、born in the USAもダサい曲だと思ってた…あー、コードがたった2つだからか!たしかに!!(笑)
でも姉のお陰で冒頭のライブシーンとかつい合唱できましたよ!(笑)
いい歳になってからですよ、ボスのよさ渋さを理解できたのは。Born…もネブラスカも歌詞を理解したらうわあとなった。まさに労働者や下層階級の文学的ロックなんだよなぁ。
凄くハマったことはないので自伝とか詳しい生い立ちとか読まずに鑑賞しましたが、いわゆる華々しいロックスターではないとは思ってたけどここまで渋いとは思ってなかった。
作品づくりへの妥協しない拘りも地力があってこそだし。
でも最後の字幕がなかったら躁鬱だとは思わなかったよ…だってずっと同じトーンで暗いんだもん躁のときってどんなん?ライブやってる時??あといきなりLAに引っ越すとか、そんなことすりゃそりゃ鬱が悪化しますやん?このへんは別の書物などで補完が必要ですね!
他の方も書いておられますが、ちょっと演出が雑というか、説明不足なところが否めません。
すごいエキサイティングな盛り上がりもないし(アルバム発表前後のことや、父と和解する日のライブ映像も1曲くらい欲しかった)。
しかしジェレミー・アレン・ホワイトのブルースっぷりは、シャラメのディランと甲乙付け難いくらい素晴らしかった!
予告編にあるセリフやシーンがなかなか良いので、カットされてたのは勿体なかったな。
心に響く映画
この歌手より少し年下世代で70年代後半から80年代前半アメリカを行き来し最終的に住んでた頃、周りの学生達にはブルースティーンと呼ばれてカリスマ的な存在でした。でも私は何となく暗くて地味な人に感じてました。
映画を観て分かりました!心を病んでたのでした。子供の頃の家庭環境を引きずり又父親の持つ遺伝要因を引き継いだと思いました。其れでもカンバックして私の帰国後にコンサートを意欲的にやったみたいで嬉しかったです。
最初、私は呑気にもあの頃のドライブインのパンケーキやエルパソも懐かしいなあ、と観てましたが、その後観点が変わりこの映画に目が釘付けられました。人はオーバーワークしてしまうと疲れ切って鬱になったり、でも休みながらでも目標持ち前を少しでも向けたら何とかやって行けるのかと。だからブルースは弱者に優しく歌にはメッセージも込められ心の琴線に触れました。
そして彼を支えた人々も素晴らしい。
この映画、including Scott Cooper and the other peopleに乾杯!もっと多くの人々に見てほしいです。
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