「結婚が運命共同体を作るための契約なら、恋愛がこのように進化しても驚けない」あの夏、僕たちが好きだったソナへ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
結婚が運命共同体を作るための契約なら、恋愛がこのように進化しても驚けない
2025.8.13 字幕 イオンシネマ京都桂川
2024年の韓国映画(101分、PG12)
原作は2011年の台湾映画『那些年,我們一起追的女孩/You Are the Apple of My Eyes(監督:ギデンス・コー)』
クラスのマドンナに恋をした高校生の青春を描いたラブロマンス映画
監督はチョ・ヨンミン
脚本はクァク・ジェヨン&キム・ジンギョン
原題は『그 시절, 우리가 좋아했던 소녀』で「その頃、私たちが好きだった女の子」、英題『You Are the Apple of My Eyes』は「あなたは私の大切な人」という意味
物語の舞台は、2002年の韓国・春川
東春川高校に通う2年生のク・ジヌ(ジニョン)は、クラスメイトの優等生オ・ソナ(ダヒョン)に恋をしていた
それを悟られないように過ごしていたが、ソナはクラスの人気者で、ジヌの親友のテワン(イ・ミンゴ)、ヒョンジュ(イ・サンウン)、ドンヒョン(キム・ヨハン)からも好かれていて、ライバル心を燃やすソウルからの転校生ソンビン(ソン・ジュンヒョク)も同じ想いを共有していた
誰もが出し抜く訳もなく、ただ同じ空間にいられる幸せを享受していて、ソナの親友ジス(キム・ミンジュ)とともに爽やかな青春を過ごしていた
ある日のこと、技術・家庭の授業にて教科書を忘れたソナに気づいたジヌは、そっと自分の教科書を差し出し、自分が忘れたことにして罰を受けることになった
ソナはそのお礼のために授業をまとめたノートを渡し、ジヌは彼女の字の綺麗さからそれを最後まで読んでしまう
そして、勉強に興味を持ち始めたジヌは、ソナに教えてもらいながら、同じようにソウル大学を目指すようになっていくのである
映画は、卒業アルバムとジヌのモノローグから紡がれる回想録で、社会人になった彼がソナの結婚を機に青春時代を振り返るという構成になっていた
タイトルが「あの夏、僕たちが好きだったソナへ(原題日本語訳:その頃、私たちが好きだった女の子)」というタイトルになっていて、その恋愛が今は終わっていることを示している
それゆえに、この恋愛がどうして終わってしまったのかを紐解くように紡がれていて、結婚式での新郎(ソン・ウヒョン)へのキスシーンでの回想には「後悔」が入り混じっていた
あの雨の夜、もし自分が彼女の元に戻っていれば、という想いが残っていて、それをどのように消化したのかが描かれていた
ジヌは「ソナが好きだった頃の自分が好き」と紡ぎ、ソナは「ずっとジヌに好きでいて欲しかった」と思っていた
その想いはある意味では保護されるまま時間を過ごし、別々の未来へと向かっていく
ジヌは「好きな女が愛した男との結婚を祝福する」という持論を持っていて、そこには「自分が幸せにする」という概念はなかった
交際を始めることで変わってしまうものを恐れているのか、これ以上の珠玉の時間がないと感じているのかはわからないが、人を愛することに重きを置くジヌと、愛されることに重きを置くソナがいて、この2人の恋愛がうまくいかなかったのは不思議でならない
想いが成就することによって冷めてしまうかもしれないという怖さがあって、それが一歩を踏み出せない理由になっているのだが、そのことが分かりながら他の男性と結婚するソナの心理は理解し難いところがある
ただし、彼女の結婚が続くかどうかは新郎側の気持ちに依る部分があると思うので、どうなるのかはわからないかな、と感じた
いずれにせよ、日本でもリメイクされた青春映画で、個性的なキャラが満載の良作だったと思う
この恋愛感覚は一般受けしない印象があって、どうして別の男と結婚するのかは理解できない部分は多い
だが、彼らが本当に愛しているのは、恋愛をしている自分であり、それはある種の恋愛観のひとつであると思う
その一歩先に行くことで壊れるぐらいならと考えているのだが、この感覚が共有される世代が増えていくと、恋愛=結婚とはならない価値観が生まれてくるのだろう
かつて親が決めた相手と結婚するという時代から、自由恋愛結婚のムーブメントが来て、今度は恋愛と切り離された結婚観というものが生まれている
この結婚にどのように辿り着くのかはわからないが、昨今の婚活というのは運命共同体を選ぶ作業となっていて、それは相互理解の上で成り立つ契約となっている
そういった時代性を含めると、恋愛と結婚が切り離されているというのは理解できるので、そう言った価値観というものも浸透してきたのかな、と感じた
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