「大山鳴動して鼠二匹。 主人公を銭形にした意味あった?」LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
大山鳴動して鼠二匹。 主人公を銭形にした意味あった?
大泥棒「ルパン三世」とその一味の活躍を描くケイパーアクションアニメ『ルパン三世』(1971-)を、新たな設定で描き直した『LUPIN THE ⅢRD』シリーズの第4作。
軍縮条約の締結を控えたロビエト連邦で無差別爆破テロが発生。条約の相手、アルカ合衆国のスパイによる犯行の可能性があるとして国内に緊張が走る。
偶然にも爆破テロの現場にいた銭形は、犯人の素顔を目撃するのだが、それはよく見知った人物のものだった…。
○キャスト
銭形警部…山寺宏一。
すっかりフニャチン野郎に成り下がった『ルパン三世』に一石を投じたテレビアニメ『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(2012)から派生したこの中編アニメシリーズ。次元、五ヱ門、不二子ときて、今回の主人公はルパンの永遠のライバル・銭形警部であります。
前作『峰不二子の嘘』(2019)から6年。全く続報が無かったので、正直もう打ち切りになったのかな?なんて思っていたのだが、着々と制作が進んでいた様で何より。
本作はシリーズ第5作『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』(2025年6月公開予定)の前日譚であり、おそらくはそれをもってシリーズ完結となるのだろう。
続編ありきの作品であるため、「続きは劇場で!」的なモヤっとした終わり方をするが、一応は一本の映画としてキチンと成立している。銭形の活躍を楽しみにしている観客のニーズには応えているのではないだろうか。
この『LUPIN THE ⅢRD』、惰性で続いているとしか思えない『ルパン』本編と比べると、ずっと見応えのあるシリーズである事は間違いない。第1作『次元大介の墓標』が公開された時は「これだよこれ……。俺が観たかったルパンが遂に始まった……!!」と震えたものだが、シリーズが続くにつれその問題点が浮き彫りに。今作もそれが目立った様に思う。
『ルパン三世』を『ルパン三世』たらしめているものは何か。人それぞれ答えは違うだろうが、自分としては3つの要素を挙げたい。それすなわち「コメディ🤣」と「セクシー🫦💕」、そして「アクション🚗💨」である。
まず本作に圧倒的に足りていないもの、それは「コメディ🤣」。ここで言うコメディとは何もお笑いやギャグの事ではない。「抜け感」あるいは「軽さ」、「洒脱さ」と言っても良いかも知れない。
本シリーズの持ち味はハードボイルドさ。キリキリする様な大人なやり取りが魅力である…とされている。
確かに、ハードボイルドなやり取りは『ルパン』には必須だ。だが、それには大人の余裕が見えていなければならない。そうじゃなければ、それはただの中二病的カッコつけである。
本作は特に劇場版第1作『ルパン対複製人間』(1978)からの影響が大きいのでそこと比較するが、『複製人間』でのルパンと次元のやり取りに心底痺れるのは、そこに都会的な洒脱さがあるから。最強の敵・マモーへ挑もうとするルパンを止める次元に、ルパンはニヤリと笑って「実際クラシックだよ、お前って奴ぁ」と返す。……うぉー!カッコ良いいぃぃーい!⚡️⚡️
このニヒルな抜け感こそがハードボイルドというもの。渋い顔して渋いセリフを言ってりゃ良いってもんじゃない。
「セクシー・アドベンチャー」というテーマ曲もある様に、「セクシー🫦💕」は『ルパン』とは切っても切り離せないものである。
不二子があられもない姿を晒すなど、本作は一見この「セクシー」という要素をクリアーしている様にも思われるが、「セクシー」っていうのは裸になれば良いとか乳首が出れば良いとかそういう事じゃない。
「セクシー」とは「エロス」と「クール」の融合体。「ホット」ではなく「クール」。ココが大事。男女関係なく、キャラクターにはどんな場面でも香り立つような色気が備わっていなくてはならない。本作にはその色気が全然足りていない。
また、シンプルに不二子の裸体がエロくないというのもこのシリーズの問題点。1stシリーズ第1話の不二子がなぜああもエロいのか、その点をもっと研究するべし!
そして今回、何よりもがっかりしてしまったのは「アクション🚗💨」の要素。
ここで言う「アクション」とは、具体的には「カーアクション」の事である。『ルパン』の立役者であり、剛腕プロデューサーとして知られる藤岡豊が天才アニメーター大塚康生を誘って作り上げた1stシリーズ。藤岡は大の車好きだった大塚に「本物のカーレースの格好良さを描きたいとは思いませんか」と言って近づいてきたという。その誘いに乗った大塚が中心となって作り上げたのだから、当然『ルパン』の中核とはカーアクションなのだという事になる。なぜいまだに『カリオストロの城』が絶大な人気を誇るのかを考えてほしい。あの冒頭のカーアクション、あの荒唐無稽な楽しさがあってこそ、皆があの作品に夢中になったのだ。
速い乗り物の動き、それを用いたアクションこそが『ルパン』の面白さ。銃撃戦や肉弾戦はその後に描けば良い。今作には目立ったカーアクションがなく、全体からスピードを感じる事が出来なかった。
許せないのは車の作画をCGで処理していた事。流石に大きなアクションシーンは迫力ある2D作画で描いていたが、その背後にあるのはヘッポコなテクスチャの車たち…。車とはただの小物ではなく、『ルパン』シリーズの魂のはず。いくら予算が安く済もうが手間が省けようが、そこを手抜きにしたらおしまいでしょう。出来が良いCGならまだしも、本当にそのクオリティが低くて…。あぁ『ルパン』も落ちたなぁ…とガッカリしてしまった。
もう一点、苦言を呈させて頂くならば、これを銭形を主役にして描く必要があったのか、という事。銭形の「正義」とは何かがテーマとなっている様だが、そこに対する掘り下げは甘く、結局何が言いたいのかよくわからない。無差別自爆テロは悪いに決まってるじゃん!!
そも、銭形が主役のはずなのに普通に本物ルパンが物語の中心に居るため、視点の軸がぶれてしまっている。銭形主役の映画になっていないんです。
本当に銭形をメインに据えたいのなら、ルパン側から物語を描くべきではない。終始カメラを銭形の側に置き、2人のルパンのどちらが本物なのか、観客にもわからない様な仕掛けにすべきだと思う。そうすりゃ、ヒロインにも相棒にもライバルにもなりきれなかった秘密警察のカラシコフさんにも、もう少し見せ場を与える事が出来ただろうに。
宮崎駿が演出を務めた2ndの最終話『さらば愛しきルパンよ』(1980)も偽ルパンを銭形が追いかける話だったが、そのストーリーの組み立ての上手さは本作とは比較にならない。あの宮崎駿御大と比べるのは可哀想だが、『ルパン』をやる以上は宮崎越えを目指してもらわないとねぇ。
うーん。なんか文句ばかりのレビューになってしまった。そんなにつまらなかった訳じゃないんだけど、『ルパン』を愛するが故、冷静なレビューが出来ていないのかも。ちょっと反省。
一応褒めておくと、偽ルパンを堀内賢雄に演じさせるというチョイスはGOOD。山寺宏一、そして次元を演じる大塚明夫とも関わりの深いベテランだけあって相性は抜群。メインから脇役に至るまで洋画吹き替えっぽい感じの声優が揃っており、その雰囲気作りは見事でした。
今回の鑑賞で『LUPIN THE ⅢRD』シリーズがあまり得意ではない事が発覚してしまった。最新作気になるけど、観に行こうかなぁ…。でもなぁ…。
ちなみに、今作で銭形のファンになったという人には是非『ルパン三世 炎の記憶』(1998)も観ていただきたい。現銭形警部の声を演じる山寺宏一がヴィランを務めるテレビSPで、実質銭形のとっつぁんが主役。アクション、コメディ、ロマンスがバランス良く詰まった良作です😆