「佳作ですがリタが無理」カーテンコールの灯 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
佳作ですがリタが無理
偶然シロウト劇団に参加したダンが、突然見舞われた家族の悲劇と「ロミオとジュリエット」を重ね合わせて、徐々に心の平静を取り戻していく話。
問題行動ばかり起こす娘と、情緒不安定気味でいきなりキレたりする父、母はまあまあ感情を制御しているようだが、「訴訟の件」がたびたび話に出てきて、家族に何か大問題があるのを匂わせるが、思わせぶりでなかなか「問題」が明らかにならず少々じれったい。
明らかに息子を亡くした際のPTSDを発症しているダンが、ジュリエットの死を描写するシーンが自身の体験と重なって、心かき乱されるのが、見ていてつらい。
デイジーは自身のセラピーにかこつけて、父親のセラピーを狙ったんだろう。
一番の重症者は、長男と最後に会って、そして発見した父親なのは明らかだ。
エピソードのひとつひとつ、まとめ方があまりうまくなく、ピンボケ気味。
もう少し要領よくまとめられなかったかと思ってしまった。
ダン一家が、親子にしては年が離れすぎているような気がしたが、実際のファミリーだったのか。
それも含めて、映画全体になんとなく内輪の甘さやなれ合い感があったような気がする。
ダンの奥さんのシャロンが良い妻良い母なだけで裏もなく、問題児の娘もあっさり、家族思いの良い子になっているし。
ロミオとジュリエットをかみ砕いて理解していく過程で、相手を亡くした若い恋人同士の互いの悲しみを知ったダンが、生き残った息子の彼女の心中を理解し訴訟を取り下げる気持ちに至ったのはわかるが、自分から家族を巻き込んでお金も時間も使って無理くり続けてきた訴訟を、証言の場で相手の子は悪くない、といきなり相手の弁護士の前で言って終いにするのか。その場を無難にやり過ごしてお開きになってから家族と弁護士に自分の意思を伝えるなど、もう少し現実的な描き方がなかったか。ダンが自分勝手で、いきなり責任転嫁されたようになったシャロンが気の毒。
そして、まったく個人的な好みの問題だが、リタが無理。
俳優ドリー・デ・レオンの持ち味なのかもだが、年をとっても(少年みたいな)キュートな女性、を始終オーバーアクトで演じていたように見えて、生理的に無理でした。
ダンに色目使っているように見えたし、シャロンに対してバチバチに見えたし。
どうしてもジュリエットにキスができない元・ロミオ役だった彼が「50歳のジュリエットには無理がある」と言ったのは、もしかすると「彼女」がダメだったのを控えめに言ったんじゃないかと思ってしまった。
50歳のジュリエットと腹の出たおっさんのロミオだと、仲間内での教材なら納得だが、観客に見せる前提だとぶっちゃけコメディーかパロディーとして見られてしまうような気がする。
イギリスは庶民が作る玄人はだしのシロウト〇〇が発達しているようで、「シロウト〇〇」を舞台にした人々の話は、イギリス映画でよく見かけるし作り方が上手い。
本作もイギリス映画なんだと思っていたらアメリカ映画でした。
アラばかり書いてしまいましたが、良いお話でした。佳作です。
かばこさん
コメントありがとうございました。
映画監督業は、たとえ同じチームで次の作品を撮ろうとも、俳優たちとはお友達関係になっちゃいけないんだ って今回強く思いましたね。
黒澤明は、黒澤組の同じ面子を率いていても恐らく現場には火のようなメガホンとダメ出しがあったのでしょう。役者を殺すくらいの気迫がなくちゃ作品に入魂は叶わない。
今作、監督と脚本家が夫婦であることも更に裏目に出たかなァ。
僕は前作を買っていただけにショックで落ち込んでいるんですよ(笑)
気を取り直して、次行こ!次!


