「この改変は、是か非か」鬼平犯科帳 暗剣白梅香 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
この改変は、是か非か
"鬼平犯科帳(十代目松本幸四郎版)" シリーズ第6作。
Amazon Prime Video(時代劇専門チャンネルNET)で鑑賞。
原作は読了済み。
原作の中でもお気に入りエピソードのひとつである「暗剣白梅香」。中村吉右衛門版でも記念すべき第1話として製作されており、そちらも原作の再現度が高くて好きな回だ。
よって十代目松本幸四郎版での映像化が発表された際はとても嬉しくて、金子半四郎役に早乙女太一を配しているのも、原作を読んだ時にイメージしていた像に近くて興奮した。
「暗剣白梅香」が好きな理由は、金子半四郎にまつわる因縁が導いた、あっと驚く結末の意外性にある。因果は巡る糸車、仇討ちする側・される側の思わぬ相違が面白かった。
ところが今回の映像化は、勝手に期待していただけだろうと言われればそれまでだが、期待外れの出来であったと述べざるを得ない。原作の良さを殺してしまっていたからだ。
半四郎の敵(かたき)を彦の市にしたのは上手い。しかし、半四郎の死に方に納得がいかない。いったいその部分を変える必要があったのかどうか、疑問が生じたのである。
本作の半四郎は、武士の掟(敵討ち)の呪縛から、また闇の世界で生きざるを得なかった運命から解き放ってくれる相手と出会うことを望んでいた、と云う風に描かれていた。
仕掛人としての最後の仕事と、平蔵との一騎打ちの果てに倒された半四郎の最期は印象に残る良いシーンだったが、原作の持つ意外性は全く損なわれてしまっていてとても残念だ。
彦の市との因縁も、上手いことは認めるが、単に前作との繋がりを持たせるためだけの変更に留まっている。もう少し絶妙な活かし方があったのではないかと思えてならない。
[追悼]
火野正平氏の想い出と共に…