劇場公開日 2025年9月12日

ベートーヴェン捏造のレビュー・感想・評価

全176件中、1~20件目を表示

3.5レモンサワーの罠とレビュー捏造⁈

2025年9月23日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

斬新

祝日前の夜、レモンサワー片手に鑑賞しました。子どもの頃、映画館でスナックや飲み物を手にする人たちをまるでセレブのように憧れてみていました。そのささやかな夢を今日密かに実現できて、とても幸せです♡

まず、本作はコメディでもパロディでもありません。バカリズム脚本と聞くとつい笑いを期待してしまいますが、今回は史実や原作への忠実さとリスペクトが軸になっています。
「ドイツ人のベートーヴェンを日本でどう描くか」という難題に対して、「現代日本の中学生が想像したウィーン」という独自の設定を採用。登場人物を生徒が通う学校の先生が演じるというアプローチにより、親しみやすく、違和感なくベートーヴェンの世界を観客に届けられています。ここに脚本バカリズムさんの巧みな視点が光ります。

物語の中心はシンドラー(山田裕貴さん)のベートーヴェンへのまっすぐすぎる愛です。はじめは健気に映るその純粋さも、次第に「キモさと狂気」に変化して感じられるのが、この映画の肝といってよいでしょう。

古田新太さん演じるベートーヴェンも、この世界観に見事にマッチしており、「実際は本当にこんなベートーヴェンだったのかもしれない」と思わせる説得力があります👏

天才はしばしば変態です。捏造される前も後も、ベートーヴェンは天才であり変態です。そして彼を支えたシンドラーも同じです。誰もが知る名曲を生み出した偉人が、このような二面性をもった普通のおじさんだと考えたら、少しだけ身近な人に感じられるのかもしれません。

映像表現もとても印象的でした。舞台劇を思わせるLED背景演出は、生徒の想像の世界という設定をより的確に描いており、実写撮影よりベストな選択に思えました。

憧れの劇場アルコールは、私には少しハードルが高かったです…。思いの外並々と注がれたレモンサワーの罠に完全にやられて、気がつけば現実と想像の間を行ったり来たりしていました。

だから
⚠️このレビューは半分捏造です🙇‍♀️

シンドラーがベートーヴェンを愛するあまりに伝記を偽ったように、私もまた“映画愛”ゆえにレビューを半分捏造しています😅
情報や想像で足りない部分は、自分なりの愛ある妄想で補っています。
「捏造=想像=愛」
こんなレビューのカタチも、今作品ならではの映画鑑賞の楽しみ方としてお許しください🙇‍♀️

🎵今宵の締め
今日はレモンサワー片手にベートーヴェンと妄想旅行、そんな夜も悪くない😎

*星数は影響なきよう、レビュー平均にしていますので悪しからず。

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ななやお

4.0誠実なルポルタージュ本を笑いと哀愁の娯楽映画に。“脚本家”バカリズムの新境地

2025年9月23日
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鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

知的

文筆家・かげはら史帆による「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」はノンフィクション本に大別されるものの、小説形式で中心人物シンドラーの内心を描写するパートも含まれる。「ルポルタージュ」という言葉は近年目にする機会が減った気がするが、フランス語由来で「報告文学、報道文学」などの意味を持つこの外来語が指すジャンルがよりふさわしいだろうか。シンドラーがベートーヴェンの会話帳を盗み出すことを決心するシーンや、米国人研究者セイヤーとシンドラーが対決するシーンなどは、小説風に書かれた原作の描写がかなり忠実に映像化されている。

バカリズムはこの5年ほど脚本家としての活躍が目覚ましく、映画では「地獄の花園」「ウェディング・ハイ」、ドラマでは「ブラッシュアップライフ」「ホットスポット」といったコメディ作品で人気を博してきた。この「ベートーヴェン捏造」も基本は喜劇映画として楽しめるが、主題に関わる巧みな意匠も認められる。

目をひくのは、原作にはない現代日本のパートによって、“語りの多層構造”に新たなレイヤーを加えたこと。そもそも物語の主人公であるシンドラーは、ベートーヴェンの秘書を数年間務めた経験と、難聴の作曲家のために自分や面会者等の意思を伝える際に書きとめた会話帳をいわば一次資料として、ベートーヴェンの伝記を執筆した。つまり、ベートーヴェンの言動や名曲に込めた意図を語る人物だ。しかし先述のセイヤーや後年の研究者らから、シンドラーが執筆した伝記本には捏造が多く含まれる可能性が高いと批判されたことを伝えるのが、かげはら史帆のルポルタージュ。ここでもシンドラーによる捏造とそれをめぐる騒動について語るレイヤーが加わっていた。その内容を劇映画化する際に、バカリズムは中学の音楽教師(山田裕貴による二役)が男子生徒にシンドラーの話を聞かせるという、オリジナルの語りのレイヤーを重ねた格好だ。

この新たな語りの層の効果として、教師の話を聞いて生徒が想像する物語世界という体(てい)で描くことにより、19世紀の欧米人を日本人俳優が演じることを観客が無理なく(いやむしろ、おかしみを感じつつ)受け入れやすくなるメリットがある。だがそれだけではない。ストーリーが人から人へと語り継がれる過程で、語り部が聞き手の興味をひくために事実を大げさに盛ったり、さらには無いことを有ったかのごとくでっちあげたりするのはままあること。そうして虚実ないまぜで面白くなった物語こそが語り継がれる価値を持つという真理が、本作に隠されたメッセージではないか。そんなことを考えさせられた。

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高森郁哉

3.0バカリズムも映画の脚本になると平凡になってしまうのはなぜなのか…?

2025年11月4日
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鑑賞方法:映画館

前から思っていたんですが、
すごい面白いドラマの脚本を書く人たちが、
映画の脚本を書くと、たいしたこともない。
そんな風潮ってないですか?

クドカンも三谷幸喜も坂元裕二も野木亜紀子も
ドラマの方が傑作が多くないですか?

そんなわけで、この映画の脚本はバカリズム。
「架空OL日記」「ブラッシュアップライフ」「ホットスポット」とか、
傑作ドラマをたくさん書いてる、その才能には脱帽!
なのですが……

この映画の脚本は、実に平凡でした。。。
もっとコメディに寄るなりなんなり出来た気がします。

ドラマ脚本家は2時間という短い話だと、面白く出来ないのか??
ストーリーを追っただけで終わっちゃって、
独自の面白さを発揮出来ないのか???

と、いろいろ考えさせられますが、
作品はなんてこたぁない凡作でした。。。残念!

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け

2.5古田ベートーヴェン、可愛い

2025年10月30日
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「ベートーヴェン捏造」。
ベートーヴェンの英雄的なイメージを守るために捏造された伝記の話。本当の姿が人間的でそれほど悪いと思えないので主人公の行動に共感できず。欧米が舞台だが実写が全く無く、すべてVFX。今時ですね。古田新太が上手い、ベートーヴェンてこんな人だったかもと思えてしまう。

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どーも

2.5結局…

2025年10月25日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

単純

バカリズムのドラマが面白く好きなので
映画も面白いだろうと鑑賞

古田新太のベートーヴェンがあまりにもヒドく
山田裕貴くんのシンドラーとのやり取りが
コントなの?って思う位面白くて
前半はクスクス小笑いしながら楽しめました

しかし
ベートーヴェンの死後
染谷将太のセイヤーが出てきた辺りから
トーンが暗く退屈になりウトウト...💤
肝心なシンドラーが捏造していると糾弾され
発狂する大事なシーンを見逃し
目覚めたら
山田裕貴演じる中学音楽教師が
シンドラーの捏造をセイヤーがどこまで知っていたかは
わからないと生徒に話しているー!

後半残りわずかのスゴく大事なシーンを見逃して
最大のオチで覚醒!
何がオチなのかあやふやで理解できず…

家に帰ってネタバレを見て
あー何で寝ちゃったかなー、と

狂喜に満ちた山田裕貴はサブスク配信まで
楽しみに待っていようと思います!

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みかんグミ

4.0ベートーヴェンはどんな伝記がお望みだったか

2025年10月19日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

難しい

娘と2人で観て「ベートーヴェンは捏造された伝記の内容で喜んだと思う」と娘が言い、私とは意見が分かれました。大ざっぱなベートーヴェン像はあるけど、実際どんな人か細かなイメージは十人十色なので、この映画も観た人それぞれかなり違う感想が出てきそう。
ベートーヴェンの曲をたくさん聞けて、第九の初演のシーンも、実際こんな感じだったかもね!と目撃してる感覚で面白かったです。
有名な音楽家もたくさん出てきて楽しかった!情報が多い分、私の頭では処理しきれず、それで★が4つになりました。
シンドラーのヤバさが、しっかりヤバく演じられていて、捏造を詰められるシーンも推理ものみたいで面白かったです。
心酔した人からひどい扱いを受ける悲しみとかあったのかな。観てる私は悲しかったけど、シンドラーはどうだったんだろう?観た人に考える余地をくれる映画で、それも良かったです。

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AY

5.0面白かった

2025年10月18日
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鑑賞方法:映画館

歴史上の作曲家達がたくさん出てきて
わかりやすくて
楽しかった^_^

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Billy

3.0嘘も百回繰り返せば本当になるってか!

2025年10月17日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

ベートーヴェンの伝記に捏造があると世に知らされたのは、つい最近だったはずだ。

調べたら1977年。

没後150年。

真実が明らかになるのに随分長い時間がかかったものだ。

今、世界には歴史修正のうねりがある。

日本のみならず、

アメリカも(奴隷制をめぐって排除されていた人物の復権やら、建国の年やら)、

ドイツも(ホロコーストはなかったと主張する人たちがいるらしい)。

実は歴史修正の欲求は世界全体の潮流だ。

しかし、このような背景が、この映画のテーマになるかもしれないということは、見る前から予想がつく話だ。

歴史は「このようにあって欲しい」というバイアスにさらされて歪む。

というのがこの映画のテーマの一つであろうが、私にはどうしても軽いと感じた。

例えば、シンドラー(山田裕貴)の嘘を暴けるはずの人たちが次々と死ぬという偶然(偶然ですよね。)

そして出版が英語でなされ、広く最初に拡がってしまったという偶然。

もし、ベートーヴェンの友人たちが長生きして、そして、出版がドイツ語でなされていたなら、150年もかかっただろうか。(ようは分からないということ)

セイヤー(染谷翔太)が暴きかけて、飲み込んだというエピソードだけでは弱くないですか?

もう一つの軸は、シンドラーの内面。

ベートーヴェンを神格化したいという欲求と、自分自身を神に仕える従者として列席させたいという自己顕示欲。

シンドラーは最初から確信犯であった。

ベートーヴェンの神格化のために嘘を塗り重ねることに、葛藤はほぼ感じられない。

この狂気の根を掘り下げないで、映画の価値はあるのだろうか?

これは役者の責任ではない。

私の蒙を啓いてくれるような発見はこの映画には薄いと感じざるを得ない。

一つ、非常に面白かったのは、シンドラーとホルツ(神尾楓珠)との最初の出会いだ。

ホルツは絶世の美青年としてシンドラーとベートーヴェンの前に現れる。

ベートーヴェンは破顔し、シンドラーは強く嫉妬する。

「こんな美形を手元においておきたいですか」的なシンドラーの発言。

シンドラーはベートーヴェンに欲情していたわけではない。

ましてベートーヴェンにはそのような欲求など皆無だ。

しかし、ベートーヴェンが自分には決して見せない笑顔をホルツに向けた。

もうそれだけで、ホルツは絶対に排除すべき対象となる。

そして重要なのはホルツにとってシンドラーは取るに足らない人物であること。

そんな奴いたっけ?

である。

この空回りは切ない。

そして、この物語には女性がほぼ登場しない。

「ベートーヴェンと女性」はかなり大きなテーマのはずだが、シンドラーの嫉妬とホモソーシャル(ホモセクシャルではない)を描くには邪魔だったのか、それとも伝記には書かれていないのか。

最初、ベートーヴェンの伝記を日本人だけで演じて大丈夫かしら?と心配した。

なるほど、中学校の音楽教師のモノローグなのね。

だから遠くの背景が手描きの絵であってもよいのね。

金がないのね、が最初の印象になってしまったが。

歴史は虚構だというのがテーマの一つであるなら、良しとしましょう。

役者は豪華布陣。

山田裕貴、染谷将太、神尾楓珠、小澤征悦、遠藤憲一、古田新太

ただよく見ると、それぞれの役者の登場シーンは短くセリフも少なく、役者の拘束時間は短かったであろう。

あとはバカリズムのお友達の芸人たちのご出演。

松竹さん、東映と違ってお金が足りないのでしょうか。

すいません、意地悪言いました。

ごめんなさい。

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ふくすけ

2.5うーん、つまらない

Nさん
2025年10月16日
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人気脚本と豪華俳優集めときゃいいって手抜いたんじゃないかしら。。
演技の見どころも少なく、ストーリーの起伏も小さく、古田新太さんが出ているうちはまだ良かったが、後半は特に間延び。。

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N

2.0私には合わなかったかな。

2025年10月12日
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鑑賞方法:映画館

笑える

バカリズム大好きで、バカリズムのドラマは全部見てるしハマってます。

でも、長い。
しつこい感じがしたし、
山田裕貴くんの喋りもなんか気になっちゃって
長い。

とにかくまだ終わらないのかー
まだ繰り返すのかー
バカリズムっぽい構成だなあって。
古田新太さんがで出る間は楽しかったし勉強になったけど

めっちゃ長く感じて、
初めて、もしかしてつまんないの…?って思ってしまった映画でした。。

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たむさん

3.5面白いけど

2025年10月11日
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笑える

知的

バカリズム脚本の割に、笑い的な面白さは今作は少なめだったかな。たまーにちょっとクスッとなるところはあったけど、映画館内で笑ってる人がほとんどいなくて、なんかシーンとしてて、笑っちゃいけないのか?みたいな謎の空気で、たまたまその回のお客さんがそうだっただけかもしれないけど、その感じからもあんまり笑えなかったな。

原作見ないと、脚本家としての技量はわからないんだろうなぁ。読んでみたい気もするけど、たぶん時間なくて読まないだろうなぁ。

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きゃな

2.5うっすらおもしろかったような気もするけれど

2025年10月10日
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鑑賞方法:映画館

なんいうかすべてが薄味で残るものが何もなかったなあ。
美術もキャラクターもコスプレっぽさも、もっと極端にふりきってもよかったような気がする。
山田さんの目バキバキな感じとか、うっすらおもしろかったような気もするんだけど。

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kikisava

4.0めっちゃおもろいwww

2025年10月10日
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脚本はバカリズムなんですね。
バカリズム・マジックに引き込まれました。
観てて、最初から中盤までアップダウンがありませんでしたが、中盤から最後が「それか(笑)」となっていました。
最後にはめっちゃ笑ってました。
バカリズムは天才ですね。

ある人が映画や実在でいた場合でも同じで、「どんな人なのか」より「真実より意味を見てる」方が自分に取って得る物は大きくなりますね。
まさにこれです。
素晴らしい映画でした。
2025年、かなり上位の作品です。

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ひさまる

3.0英雄の教科書

2025年10月8日
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鑑賞方法:映画館

知的

驚く

斬新

 後世に名を残す人物とはどういったものか。「発明王」トーマス・エジソンには、様々な逸話があり、小学生の頃に伝記を読んだ人も少なくないだろう。そこには、エジソンの輝かしい功績や、発明品の数々、そしていかに素晴らしい人物だったかが書かれている。「天才とは、1パーセントのひらめきと、99パーセントの努力である」なんて格好の良い言葉まで。
 エジソンと同じ時代を生きた発明家に、ニコラ・テスラという人物がいる。現代では、テスラはエジソンほど名を聞かない。では生前、テスラはエジソンよりも劣っていたのだろうか。実際のところ、テスラはエジソンよりも発想や発明においては、優っていたとされている。有名な話に「電流戦争」がある。これは19世紀末、電力を送る方式を巡って起こったエジソンとテスラの対立のことである。エジソンは直流方式を推し、安定していたものの長距離送電が難しいという欠点があった。一方、テスラは交流方式を提唱し、高電圧に変換して遠くまで送電できる利点を持っていた。しかしエジソンは、自身の直流方式を守るため、交流は危険だと大々的に宣伝した。この争いは技術論だけでなく、経済的利権や世論の操作も絡んだ戦いとなった。最終的には、長距離送電に適した交流が標準となり、現代の電力網の基礎が築かれることになる。このように、テスラはエジソンを打ち負かすことのできるまさしく天才であった。ではなぜ、テスラの名を聞かなくなってしまったのか。
 それはエジソンの戦略にある。エジソンは発明王と呼ばれているが、実際のところ会社経営や、自身のプロモーションに才があった。対してテスラは真の天才でありなが、発明以外のことにはまるで無頓着。確かにテスラの発想や理論において卓越していたが、エジソンのように発明を商業的に展開し、広く世間にアピールする力には欠けていた。早過ぎた天才と言えるだろう。
 このような事象は時代や分野を問わず、古今東西様々なところで起こってきた。特に芸術家というのはテスラのような職人気質な人が多く、日の目を見づらい。その才たるものが、画家のフィンセント・ファン・ゴッホである。諸説あるが、ゴッホは生前ほとんど評価されず、親しい芸術家や弟を除けばほぼ無名だった。また、生前に売れた作品は数枚しかなかったという。そんなゴッホの絵が、なぜ今これほどまでに高値がつき、人気があるのか。それは弟のテオに宛てた膨大な手紙が関係している。その手紙には、ゴッホの作品制作の考えや美学、感情を詳細に書き残しており、それを保管していたテオはゴッホの死後、その膨大な手紙を「ゴッホ書簡集」として刊行し、広く知られるようになった。また、この手紙と作品をコレクターや美術界に紹介することによって、時代が追いつき早過ぎた天才は理解されるようになった。
 と、あまりに枕が長くなり過ぎてしまったが、ここからが本題である。では、この映画の主要人物であるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンはどちら側の人間だったのか。言うまでもなくエジソン側だった。と言いたいところだが、実際には違ったようだ。音楽の授業の余談や、テレビで語られてきた、我々が知っている「天才ベートーヴェン」の数々の逸話。どれもこれも個性的で、輝かしく、「これぞ天才!」と思ってしまうが、タイトルにもある通り、数々の逸話は捏造されたものだった。実際にはベートーヴェンはテスラやゴッホ側で職人気質だっただろう。間違いなくエジソンのように自身のプロモーションに才のあるタイプではないし、そんなものには興味もなかった。ではなぜ、ベートーヴェンは生前も死後もテスラやゴッホと違い、輝かしく有名でいられたのか。そこには、捏造された逸話が関わっている。この逸話はベートーヴェン自身が捏造したものではなく、秘書の一人であるアントン・シンドラーによるものだった。このシンドラー、非常にベートーヴェンを敬愛しており、心酔していた。次第に自分自身の中に理想のベートーヴェン像を作り上げてしまい、ベートーヴェンが生きている頃から理想のベートーヴェンを作り上げようとし、死後、それはさらに加速する。いかにベートーヴェンが偉大で優れた作曲家だったかということを、有る事無い事書き綴り、本を出版した。このシンドラーがいわばエジソンだったわけである。テスラ、ゴッホとエジソンの差を埋めてしまった。
 これらのことから得られる学びは、大成するためには評価されるだけの技術や個性と、人々を熱狂させるようなエピソードやプロモーションが必要であること。芸術家に限って言えば、評価されている人間が必ずしも芸術的だとは限らず、プロモーションによるところが大きい可能性があるということである。そしてそれら2つが揃った時に、初めて英雄を作り上げる。いわばこの映画は「英雄の教科書」であると言える。原作となっているノンフィクション小説のタイトルは「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」である。
 ここまであらすじについての評価を書いてきたが、この映画で私が評価している他の点を挙げる。
 1つ目はVFXやCGなどの映像演出である。昨今の映画、特に邦画を見ていると、リアルな映像を作るためにVFXやCGを使うが失敗し、作り物感のあるチープな映像となっている例をよく目にする。しかし、この映画はその現象を逆手に取っている。他の映画と比べると一段も二段もチープに見えるが、一周回ってそれが世界観となり、受け入れられた。これはとても斬新で、こんな見せ方があるのかと驚いた。
 2つ目は音である。この映画は他の映画に比べて効果音や音響効果といったSEの音量を大きく、または強調しているように感じた。それによって私は新たな発見を得られた。例えば「部屋を明るくする」という目的がある。その目的のために使われてきた家具を、時代を追ってざっくりと並べると、ろうそく、油ランプ、白熱電球、蛍光灯、LEDのようになる。アナログからデジタルへと言うべきか。ろうそくや油ランプからLEDに変わると何が変わるか。光の質、熱、様々あるが、私が注目したのは「音」である。ろうそくや油ランプに火を灯すと、火が燃える音、風によって火が揺れる音など様々な音が鳴る。しかしLEDはどうだろうか。何も音は鳴らない。スイッチを入れる音は鳴るかもしれないが、それ部屋を明るくするための副産物ではなく、わざわざつけた音である。例として、部屋を明るくすることをあげたが、実はありとあらゆることが当てはまるのではないだろうか。どちらが良いとか悪いとかのものさしで測るものではないが、私個人としては、「今、ここ」に集中する手段やヒント、今回の場合、「音」が時代と共に減っていったのだろうと感じた。
 ここまで様々な視点でこの映画の批評をしてきたが、結局、この映画が教えてくれるのは、才能や努力だけでは英雄は生まれないということだ。卓越した技術や独自の個性に加え、人々の目を引き、物語を紡ぐ力。いわば「プロモーションの才」があって初めて、天才は時代を超えて評価される。だからこそ、テスラやゴッホのような早すぎた天才も、ベートーヴェンのように逸話によって輝く者も、同じ「英雄の教科書」の一章として私たちに教訓を残しているのだ。

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あんのういも

4.0歴史的な偉人の性格など

2025年10月8日
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あまりに昔だとその偉人の性格などあまり重要ではないのかも
とは言えリアルなその時代なら話は別である
偉人の身近な人たちは当人の性格をよく知るだろうが
ネットなどなくゴシップに群がる輩もいないのであまり性格は広がらないでしょうね

そんな物語です
にしてもバカリズムさんは面白いことをする人だ
ドラマ「ホットスポット」は面白かったな
この映画も古代ローマ風呂映画ばりに日本人で構成されているのが強引ではあるのですがとても見やすい
古田新太さんがバリバリハマってる
今後のバカリさんの作品が楽しみになりますね

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カルヴェロ

3.5口を塞がれなかったパパゲーノ

2025年10月7日
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驚く

アメリカの司書さんもそこそこ狂人で草。
人が適当に書いたメモ的な文字ってずっと読んでると気が狂うよね…分かる…。手紙みたいに読まれること前提なら耐えられるんだがね。

私の知ってるベートーベンが夢男子の書いた2次創作とか言われると、あ、夢小説って日本固有の文化じゃなかったんだなって…なんか勝手に日本文化みたいに思っててすみませんって…なったね。
そういう話だよね?
いやもしかしたら1800年代に日本人も夢小説書いてる人が居たかも分からんけど。
世界共通なんだね!

………そういう話だよね…?

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せった

4.0クスッと笑える、歴史映画

2025年10月5日
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鑑賞方法:映画館

バカリズム脚本ということで、前から観たいと思ってて、鑑賞しました。
ベートーヴェンへの愛に溢れているが、少しズレてて、理想のベートーヴェン像を後世へ残すために、奔走するシーベルトがメインで描かれています。
気軽に見れて、歴史も学べて、少しクスッと笑えるそんな映画でした。
ただ、バカリズム脚本としては、もう一押し欲しかった。

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mt ym

3.5ベートーヴェンの実像と虚像

2025年10月4日
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ベートーヴェンは偉大な音楽家であるが、人生には良い面もあれば悪い面もある。
後世にどう残していくかは伝えていく人が、その人をどれだけ思っているかがすごく大切だと感じた。
劇中にいろんな曲が聴けて、すごく良かった。
曲を聴くたびに、やっぱりすごい方だったんだと思えた。

山田裕貴さんの演技がすごく癖があって良かった。

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ひらり

4.5ベートーヴェン捏造

2025年10月1日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

所々笑うところもあり、バカリズムさんのファンていうのもありますが、本当に面白かった‼️
久々にもう一回見ても良い映画に出会えた❗

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ヒロヒデ

4.0ベートーベンの伝記改ざんにまつわるミステリー劇

2025年10月1日
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鑑賞方法:映画館

劇場で何回も予告観ても、日本人俳優がコスプレしてふざけてるようにしか見えず、脚本もバカリズムさんということでキテレツコメディかなと気楽に観に行ったら、偉人にまつわる伝記が、後世の誰かによって改ざんされていくという話をしっかり見せてくれる良作でした。

子どものころ読んだ伝記の偉人が、実はこんな面もあったなんて話がありますよね。野口英世さんが女遊びが好きだったとか。

後の世に名前を残してる偉人たちも、美化するのに都合が悪いことは意図的に描かなかったということがあったことは想像できます。それを捏造とまで言うかどうかとは思いますが。

以前、子どもと一緒に図書館に行った時に今時は伝記モノのコーナーに「ボブ・マーリー」があってビックリしました。大麻のことも書いてあり2度驚きました。そこは避けて通れなかったんかい。

こちらは原作未読ですがそもそもおもしろい話なのは想像がつくし、バカリズムさんの脚本がカタい内容の原作をうまくオブラートに包むように作用してるんじゃないかしらと。

豪華な俳優陣以外はとことん削ぎ落とした作り(具体的にいうと背景はほぼ合成)なので、そこにイチャモンつけるのも理解できますが、ベートーベンのオーケストラ曲を劇場の音響で聴くからこその面白み。これは配信だと全部がチープに感じて伝わらないでしょうね。

語りべの役割の山田裕貴さんが劇中劇で、主人公シンドラーを演じ、モノローグで心の声を語りまくり。ここまでモノローグ多くても観ていられるのは、字幕なしの邦画ならではだよなあと思いました。ジャズアニメ「BLUE GIANT」の時も思いましたが、この方、声の芝居も抜群ですね。

劇場で観ないとおもしろさが伝わりにくい作品だと思いますので、機会がありましたら映画館での鑑賞をオススメいたします。

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minavo