「誤解される勇気が欠けている」ベートーヴェン捏造 alfredさんの映画レビュー(感想・評価)
誤解される勇気が欠けている
バカリズムさん脚本の単発テレビドラマを見た時に私が感じたのは、「誤解をおそれる余り、説明過剰になっている。つまり視聴者(観客)を信用していない。」ということだった。
馬場康夫監督(「私をスキーに連れてって」など)は、そのYoutubeチャンネルで最近の映画は暗黙の了解(演出)が無くなっていることを指摘している。昔なら言わずもがなの演出になった場面でもわざわざセリフなどで説明されるようになっているという。
倍速再生が前提となった現代では、じっくりと間合いを楽しむという場合では無いということか。
時代が変われば人の常識も思考も変わるのは当然ではあり、映像表現としての映画の演出も変わって行くのは仕方ないとはいえ、昭和から映画を観てきた者としては一抹の寂しさもある。
分からないものを分からないものとして受け止め、時間をかけて咀嚼していくという勇気は必要だと、昭和のおっさんは思う。一度ですべてを理解できるほど世界は単純ではない。
さて、本作での日本人が欧米人を演じるというアクロバティックな演出にはとりあえず目をつぶろう。
それにしても主人公の心情・行動がこと細やかにセリフで説明されるが、やはりバカリズムさんは誤解されたくないのだろうか。芸術として大衆に提供するということは良い意味でも悪い意味でも誤解の渦に投げ込むことだろう。たとえ誤解であってもそのことが作品のダイナミズムを産んでいくものだ。過去の名作が制作者の意図通りに理解されたとはとても言えまい。
バカリズムさんには、誤解される勇気を持って欲しいと思う。
最後の、染谷将太さんと山田裕貴さんの対峙シーンは割と良かった。
あれくらいの緊張感が全体にあると良かったのだが。
amazonが共同制作とあるので、年末の第九が流れる頃にAmazon Primeで配信されるのかもしれない。見るべきかどうか迷っている向きは、年末まで待つという手もあるだろう。
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