「山田裕貴と年上の男優との共演は面白い」ベートーヴェン捏造 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
山田裕貴と年上の男優との共演は面白い
ベートーヴェンの秘書であり、彼の死後に伝記を著したアントン・シンドラーの半生を描いた、“事実に基づく”コメディ作品でした。
主役のシンドラーを山田裕貴が務め、ベートーヴェンを古田新太が演じたほか、染谷将太、小澤征悦、野間口徹、遠藤憲一といった演技派が勢揃い。彼らの滑稽な演技を観るだけでも十分に楽しめる作品でした。特に古田新太は、天才ベートーヴェンの奇人ぶりをそれらしく演じており、大きくデフォルメされているにもかかわらず、不思議とリアリティを感じさせるところはさすがでした。
物語の構成にも工夫があり、入れ子構造になっている点が興味深かったです。冒頭は現代日本の中学校のシーンから始まり、山田裕貴演じる音楽教師が男子生徒にベートーヴェンに関する知識を披露する展開。その語りを通じて、19世紀前半のベートーヴェンやシンドラーらが登場する仕掛けでした。この中学校の場面は原作小説にはなく、映画オリジナルの要素だそうですが、とても効果的だったと思います。特に、シンドラーが憑依したかのような音楽教師に対し、男子生徒が冷静にツッコむ場面は非常に面白く、最後も落語のようなオチで締めくくられており、バカリズム脚本ならではの巧みさが光っていました。
俳優陣については、7月に観た『木の上の軍隊』に引き続き、山田裕貴が年上男優と共演する格好でした。前作では堤真一との共演で良い味を出していましたが、今作では古田新太との掛け合いで再び魅力を発揮。どうやら年上の実力派俳優との共演で、より持ち味が引き出されるようです。10月公開予定の佐藤二朗との共演作『爆弾』にも期待が高まります。
また、外国の歴史物語を日本人キャストでコメディタッチに描いた作品という点では、『新解釈・三國志』が思い出されました。ジャンルはまったく異なりますが、三国志もベートーヴェンも日本で人気のある題材という点で共通しています。両作を比べると、『新解釈・三國志』がややベタな笑いに寄っていて胃もたれしたのに対し、本作はよりスマートな仕上がりで、満足度の高い作品でした。
そんな訳で、本作の評価は★3.6とします。
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