「楽しんだ、ただバカリズムはやっぱりちょっと苦手」ベートーヴェン捏造 kab_mtrさんの映画レビュー(感想・評価)
楽しんだ、ただバカリズムはやっぱりちょっと苦手
バカリズムはネタも脚本もあまり好みではないのですが、古田新太ベートーヴェンに抗えず鑑賞。
キャストで見る映画でした。山田裕貴さんは実は目元も声もややぼやっとしているので(ディスるわけではないです)、こういうちょっとずれた垢抜けない役のほうが合うのではないかと思いました。古田新太はザ・古田新太です。小澤征悦さんはセリフほとんどないけどいい。
原作未読ですが、音楽の先生が生徒に捏造を語り、その学校の先生役のみなさんが本編の各役としても出てくる仕掛けは、日本人が外国人役をとってつけたような背景で演じる、この作品への導入としていいアイデアだと思いました。
狂気のファンはその狂気の愛ゆえに、対象を誰しもに特別と思わせるだけでなく、自身を対象にとって特別な存在とも思いたがる。それを感じさせるストーリー。それをわかっていても不思議とシンドラーを応援する気持ちになってくるのは山田さんの力かもしれません。
総じて楽しめた作品です。
ただ、終盤の生徒とのやりとり。
本編ではシンドラーの先生が、セイヤーへの解釈が想像であることを指摘され「その方がドラマチックじゃないか」というシーンは本編とのつながり、表裏、人間の普遍性を表してとてもいいのに、それを受けた生徒の一言が私的にはやりすぎかな。
そこはわかったような顔でふっと笑うくらいの方が好みでした。それでも十分生意気な中学生です。すでに「先生の妄想ですよね」と言ってるんだから。
なのにわざわざ「先生みたいな人が真実を歪めてきたんでしょうね」(うろ覚え)とまで無自覚風にはっきり言わせちゃうのは、わかりやすくしたというより、これを面白いと思うバカリズム的性質なんだろうなぁと思います。なんというか、意地の悪さ。それもからっとしたタイプならいいんだけど、陰湿なやつ。それがバカリズム的毒といわれればそうなんですが、私はやっぱり少し苦手なのかもしれません。
