劇場公開日 2025年9月12日

「偉人の真の姿とは?」ベートーヴェン捏造 豆之介さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 偉人の真の姿とは?

2025年9月12日
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鑑賞方法:映画館

原作読了組。山田裕貴さんがシンドラー? 古田新太さんがベートーヴェン? 全ての外国人を日本人俳優が演じる、それって学芸会じゃないの〜…の第一印象を破ったのがこの物語は日本のある中学校のある音楽室で「創造」されている、という設定だ。創造と書いたがかなりのノンフィクションのようだ。シンドラーがベートーヴェンを捏造していた。音楽界が猛然とひっくり返ったらしい。

その過程を映画で観るわけだが、まず古田さんのベートーヴェン。笑えるほどベートーヴェンにしか見えない。そして問題の山田さんのシンドラー。最初はもう星が身体の周りを舞っているようなピュアピュアボーイ、キラキラした瞳はもはや愛玩動物かとまで思う。この瞳だ。ストーリーが進むというのに瞳の光が消えない。だが光の意味は憧れから守護の思いへと変わる。予告映像にもあるが炎を前にしたシンドラーの顔にはぞっとする。

シンドラーの行為は異常だ。始めこそベートーヴェンは神聖でなければならない、醜さは隠さなければならない、のはずがいつしか自分が書く人物こそベートーヴェンであるとなっている。現在で言えば二次創作で書いた自分のベートーヴェンが本物なのだ、とすればいいだろうか。

それなのにシンドラーの瞳は一途だ。その瞳に映るベートーヴェンがかつてのベートーヴェンではなく他者になっているのに気が付かない。ずっと主人の側にいる愛玩動物。いや、愛玩動物ならば主人のありのままの姿を愛するだろう。それともシンドラーは捏造を重ねながらかつてのベートーヴェンを心深く忘れずにいたのか? だからこそ捏造を続けたのか? この点は分からない。

今の世では人物の捏造はあるまじきものとして一次資料が求められる。どうしても見つからなければ「逸話がある」とされる。しかしシンドラーが行なったように、一次資料に手が加えられている偉人と呼ばれる人物は探せばもっといるのではないか。

現在に伝わる偉人達の真の姿はどれだけ真なのか、と考えずにはいられない映画だ。

私がこれ程魅せられる理由の一つに画面の「暗さ」がある。自然光とロウソクが明かりだった時代。窓から自然光が差し込み、顔が逆光になる場面も多い。部屋も社交場も暗い。

それがいい。美しい。

明る過ぎる現代。憧れさえ感じる。

豆之介
映画LOVEさんのコメント
2025年9月24日

こんにちは^ ^
レビューにイイネ有難う御座います☆
宜しくお願いします。古田新太さん演じるベートーヴェンがシンドラーの(ベートーヴェンの)小説を執筆している?と感じる様な雰囲気になかなかの驚怖を感じました。

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