「盛りこみすぎでは?」罪人たち ひよこまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
盛りこみすぎでは?
全米で脅威の大ヒットということで気になっておりましたが、あらすじを読んでも要領を得ないので劇場へ。
一言でまとめるとタイトル通り盛り込みすぎだと思う。
天才的なブルースの才能をもつ少年サミーの歌はある種シャーマンの神おろしの如き効果を発して、彼の歌で人々の持つルーツ、そしてそれぞれの神や体内に脈々と流れるリズムがクラブの一つの場所に集結して踊り狂う。まさに文字通り血湧き肉踊る深部の高まりを感じる場面だった。個人的に出色はその場面がピークで、その後の吸血鬼との戦いのくだりは、えーと、これって何の話だったっけ?と首をかしげるような思いにずっととらわれていた。
でもエンディング近くで『最高に幸せだったあの時』な一面の綿花畑のど真ん中の一本道を、抜けるような青空へ向けて車が走っていく、あの場面は清々しくいい画面。ここで終わってほしかった。その後は私としては蛇足でした。
スコットランドルーツとの対比も興味深くはあれど。吸血鬼とのバトルは目新しいわけでもなく、ホラーとしてはたいして怖くもなく。ブードゥー魔術は雀の涙程度の効果でしかなく。ずっと生き続ける悲哀も羨望もない。愛情ある相手との対決ならばゾンビものでもっといいものありそうだ。
KKKをやっつけるから人種差別への対抗としての爽快さはあるんだろう。
ギルティではなくわざわざシンだから、キリスト教の原罪の意味合いでの罪人たちのはず。教えに背く罪?そもそもの存在の罪?兄弟での争い?それとも異教?各人が抱える足かせからの解放、自由への渇望が当時の時代背景からは罪ということ?とにかくあれもこれもと要素を入れ込みすぎて結局焦点が絞れてないのでは。
もしも黒人主軸だからと米国で評価が高いのであれば、ポリコレの弊害じゃないのだろうか…。
でも作品全編に流れるブルースはどれもよくって音楽に☆加算です。
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