罪人たちのレビュー・感想・評価
全176件中、1~20件目を表示
Film - 原初の喜び
最近はREDカメラで撮られた『スーパーマン』を観てデジタルも悪くないかもと思っていたがやっぱりIMAXフィルムは違う。焼き付けるという物理には0と1しかない形而上の記号では太刀打ちできないものがある。
本当にタダの馬鹿映画なんだけど、ブルースには心を打たれた。ゴランソンはいい仕事をした。
しかし、今作のその最大の特徴は今までクリストファー・ノーランが独占してきたIMAXフィルムカメラで撮影された作品であることだ。暗闇の階調の豊かさや、圧倒的なボケ感は筆舌に尽くしがたいという筆には尽くしがたい。光がフィルムに焼き付くという原初の喜びを存分に味わえる。
「フロム・ダスク・ティル・ドーン」×「ブルース・ブラザーズ」
全米で大ヒットホラー映画らしいけど、予告を見てもよくわからん、という印象だった。
マイケル・B・ジョーダンが一人二役を演じた双子の兄弟。
慇懃無礼な態度の白人を、兄が前、弟が後ろから牽制する
トラックに入り込んだヘビを、兄がナイフを渡して弟が退治するという連携プレーぶり。
トラックの盗人を容赦なく撃ち、とにかく常に余裕で羽振りがいい元ギャングを好演。
他のキャストは、久々に大作で見かけたデルロイ・リンドー、すっかり美人に成長したヘイリー・スタンフィルドが良かった。
演出は、
後ろから何者かが飛ぶ→女性歌手がステージ上がる、
門番がトイレ中に何かに襲われる→揉め事があった部屋に入る、
イカサマ男を踏みつける→ダンスフロアでリズムを取って地面を蹴り付けるという、演出が良かった。
他には、
暗い家の中、家族を読んでも返事がない。時すでに遅し…や、
トイレで持ち場を離れたから…など、
トリッキーの映画に思えて、意外とベタなホラー演出が多いのも良かった。
そしてなんといっても、レターボックスサイズからフルサイズ画面になった時の決戦だ!感が最高だった。
ちなみに製作費は、9000万ドルと、ホラー映画にしては意外と高予算な映画。
タイトルなし(ネタバレ)
最後、老いたサミーとスタックの「今でもあの夜の恐怖で週に一度は起き上がれない、けどあの日は人生で最高の日だった」「人生最後の太陽」「自由だった」って会話はめちゃくちゃグッときた。結果が最悪だと幸せだった時間をむしろ恨んだりするからね、そう思えるのは本当にかけがえのないどんなことが起きても価値が変わらない瞬間があったんだなと。
ブルースで琵琶法師が後世に伝承する平家物語を彷彿
私には理解不能でした
変人たち
真面目なフロム・ダスク・ティル・ドーン
双子の黒人兄弟が田舎町でバーを始める。当然邪魔も入るし、真っ当な商売じゃない。力業も必要、差別の強い時代のお話だから理解など望むべくもない。
買った場所も、「掃除した跡がある」と言ってるから血なまぐさい場所なのは明白。
それでも必要なこの場所を買っていく。
兄弟の姿は粋で怖く格好良い姿で描かれており、この位苛烈に生きねばチャンスは無いとばかりの雰囲気だ。
勿論、そんな成り上がりに興味があってこの作品を観ている人は居ないと思う。しかしそんな所にやって来るのだ。ちゃあんと吸血鬼のルールに乗っ取って、家に招かれないと入れない奴らが。
主人公達の経営するバーに入れてくれと3人の白人がやって来る。KKK団もある時代だから白人など信用出来ない彼等は店に入れない。バーの経済的な問題もありアニーは白人(吸血鬼)と話に行くが呆気なく毒牙に掛かり、スモークとスターク兄弟の地獄が始まる。吸血鬼を物語でしか知らない仲間と群れと化した吸血鬼達に向かい合うが、吸血鬼は知識や意識を共有出来るので知り合いの弱点を突きまくってくる。心の弱い人なら、吸血鬼になって不死身になるのも悪くない、吸血鬼の家族になって安心したいと言う気持ちが湧いても不思議じゃない。
吸血鬼もイギリスの事について歌っている様子だったが、何故吸血鬼が一匹でアメリカに辿り着いているのかは解らない。
上手くやればイギリスはおろかヨーロッパ全域まて拡がりそうな超能力なのに追われてアメリカに来たのか?
ラストただ1人生き残った青年が実家の教会と帰りギターを捨てるよう諭されるが、ギターを選ぶのは当然か。
黒人兄弟の生き様も生き残った若者のその後も妙に格好良いので新手の吸血鬼ドラマとして評価したいが何だろう、カッコつけすぎじゃなかろうか?と思ってしまう。
ライアン・クーグラーの特製闇鍋
実話ベース、名作その後、アメコミなどで才を発揮し、すっかり現ハリウッドきってのヒットメーカーとなったライアン・クーグラーのニュープロジェクトは、完全オリジナル。
これまでのどの作品とも違う。何処にこんな引き出しあったのかと驚く。
斬新さと野心さ。一つのジャンルに括る事や説明するのが難しい。
双子の黒人が故郷に帰る。西部劇ムードも漂う、古き良きアメリカ映画…?(でないのは雰囲気から明らか)
双子の片割れはかのアル・カポネの下で働いていた。禁酒法時代、双子は酒場を開こうとする。犯罪映画…?
双子の弟分な青年サミー。ラストも(老年期の)彼で締めたり、実はなかなかキーキャラ。彼のアイデンティティー…?
常連マイケル・B・ジョーダンが一人二役。個性的な登場人物や軽妙な会話のユーモア要素、妻や元恋人との再会の恋愛要素、哀愁漂うドラマ要素をスパイス。
印象的な味付けに当時の黒人差別への訴え。黒人を隔離する“ジム・クロウ法”が背景になっている。ブラック・ミュージックを歌う酒場や黒人アウトローはそのアンチテーゼにも捉えられる。
遂にオープンした酒場。人々が集い、大い賑わう。音楽映画…?
宴に誘われてやって来たのは、一見流れの白人ミュージシャンたち。追い返すが、彼らの正体は…。
賑わう宴の夜は、恐怖と惨劇の夜へ。
ジャンルごちゃ混ぜのメインディッシュは、ヴァンパイア・ホラーだった…!
まるでクーグラー版『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のような。
不穏さと何処かシュールさを漂わせ、ヴァンパイア乱入辺りから一気に畳み掛ける。
怖さは無いが、意外とバイオレンスなアクション。
そこに異様な高揚感の音楽の力。白人たち(実はヴァンパイア)のカントリー・ミュージック風の曲はなかなか聞き惚れ、一部ミュージカルのような装いも。
ヴァンパイア・ホラー×アクション×音楽。下手すりゃ支離滅裂になりそうなものを、クーグラーはしっかりエンタメに昇華。
その上でメッセージ性やドラマもそつなく。
双子のスモークとスタック。固い絆で結ばれていたが、ヴァンパイアになってしまった元恋人のメアリーにスタックが噛まれてしまう。自分の半身を失い悲しむスモークに、ヴァンパイアになったスタックが揺さぶりを掛ける。
人間か、ヴァンパイアか。傍目には分からない。疑心暗鬼になったりユーモア孕んだり。
外にはヴァンパイアの集団。スモークらは酒場内に閉じ籠る。
酒場の面々は黒人やアジア人。行き場が無い。
ヴァンパイアは主に白人。圧を掛ける。
この意味するものは…?
ヴァンパイアのリーダーにも横暴や傲慢が見受けられる。
襲い来るもの、退治するものはヴァンパイアではなく、人種差別。クーグラーの訴えは強烈だ。
全米ではオスカーノミネートも有力視される絶賛と初夏のサプライズ大ヒットだが、合わない人も多いだろう。
かなりブッ飛んだ題材。バイオレンスやグロ。ポリコレ。…
濃いように思えて、一体何だったんだ?…とも。
珍味で旨味もある刺激的なライアン・クーグラー特製闇鍋をご堪能あれ。
ラストシーンから察するに、続編も出来そうな…?
あの2人が現代で…って感じで。
そうなれば『ブラックパンサー』や『クリード』以上にライアン・クーグラーのライフワークになったりして…?
観るのが辛い人種差別作品と違って、斬新で面白かった。KKKは許せな...
観るのが辛い人種差別作品と違って、斬新で面白かった。KKKは許せないけどね。音楽の歴史に詳しかったらもっと楽しめたんだろうな〜。マイケルbジョーダン、カッコよ✨兄さんが用意してた武器って、最初からこの使い方しようと思ってたのかな?ヴァンパイアになるなら、20代が良いよねと「インタビューウィズヴァンパイア」で思った。
ミュージカル?
何か展開が軽いと云うか…
上辺だけの人種差別な感じで妙な雰囲気の世界観。
見終わった感想としては、一度観たらもう二度観ることは無い作品。
YouTubeで結構予告を観ていて、期待していたが
予告の展開そのままで大した感動も無いあっさりした
ストーリー展開で、所々で変な演出が…
途中で気が付いたが一人二役なんだなと…
「MICKEY17」は性格の違いが色濃くて分かり易い
感じだったが、この作品の双子はパートナーが黒人と白人と
いう、その違いだけで判別が付きにくく、只昔に比べて
技術面で違和感無く映像が作れるというだけで、演技が微妙だと
面白みが全く無く、自己満足にしか見えない。
前置きが長く本題が短くてアッサリした作りで満足出来ない。
二人の出世に絵の描写が無く、会話のみの断定的では無い曖昧な
会話で進行するので腑に落ちない。
友人関係も過去の描写、幼少期とか青年期というシーンが無いので
薄っぺらい。黒人と白人のハーフらしいが白人にしか見えない。
これは危険だ皆帰れと帰すが、全員吸血鬼になってて合唱して
何だコレ状態…。殺される→吸血鬼で性格も全く吸血鬼寄りに全振りで
泣ける。人が殺されると皆動揺しまくりの錯乱状態で収拾が付かない展開も
見てて面白く無く、毒蛇をサッと片付けて、掻っ払いに躊躇無くブッ放す
兄弟に期待させて置いて、この体たらくは何なんだろう……
最後に歌のうまい主人公?の老後に二人がやって来るが、何コレ?
吸血鬼全振りの性格は何処へ行ってしまったんだ?
只、英語、英会話は出来ませんが確かに歌は旨いと思う所。
やり過ぎ? だが
キリスト教に弾圧されたケルトをヴァンパイアにして"キレイな"音楽で善人の顔で近づく だが 彼らは店の承認がなければ入れない これは今の日本じゃ作れない いつの間にか"人種差別"は日本の方が厳しくなった それは良くなってるのか それともホワイトウオッシュがより進んでしまったのか 後半はフロム ダスク ティル ドーンか?になるが 前半はグリーンブックのパロディのようなロードムービ-か 車に乗りながらのギターや酒場でのアフリカルーツからの現在をのシーンは最高 最後はなんとバディガイが登場で 彼の伝記映画?とも思わせてくれる だが設定は1932年第一次世界大戦から14年後だから バディガイはまだ生まれてはいない 途中インディアン(ネイティブ アメリカン)は「インディアン嘘つかない」の役で登場 荒唐無稽だが歴史を用いて、やり過ぎだが 現在のホワイトウオッシュ化を皮肉とエンタメで昇華させようとしている そもそも エンタメとはファンタジー アイロニー リアリティならば これは完璧な映画か? もう一度観て観るか
ホラーではなく抜群に素敵な音楽映画なのかもしれない
予想外のところに連れて行かれた作品
全く前情報を入れずに観たので、「まさかこんな展開になるとは…」と驚いたが、エンタメ作品として、充分に楽しく観られる。
「罪人たち」という邦題から、自分は「犯罪者」の話かと思っていたので、原題の「sinners」というタイトルが指す「罪人(つみびと)」の意味が今ひとつピンときていない自分にとって、「キリスト教(特にカトリック)の知識があればより楽しめたのに」という無念さを感じた。
ただし、知らない人は蚊帳の外という訳ではなく、普遍的なテーマが重層的に描かれているので、観た人それぞれに、違ったものが心に残る作品だと思った。
<あまり展開には触れないが、内容に関わって考えたことの備忘録>
・ここでもKKK。
・華僑の逞しさ。
・白人に見えても血筋が問題にされて差別の対象になる不条理は、そのまま日本の同和問題や逆に天皇家に関わる議題にもつながる話。
・「白人はブルース好き。作り手の黒人が嫌いなだけ」という言葉の重さ。
・過去からだけでなく、未来からも何物かを召喚してしまうという発想に驚くが、音楽の普遍性の表現としてうまい。
B級映画としてみないと
自由への渇望
永遠の魂
想像していたものと違う作品でした
「なんだなんだ、一体なんなんだこの映画は!?」でした。
タランティーノ張りの内容を期待していたのですが、まさかバンパイヤが出てくるとは! 最近は、映画はできるだけ前情報なしで観るようにしていますが、今回ほどびっくりこいだのはないです。で、内容ですが、バンパイヤが出てくるまでは会話とかよかったし、そのあとの展開に期待持てたのですが、バンパイヤ出現後は他のホラーと変わりばえない感じ。最後のKKK襲撃のシーンでバンパイヤとKKKを重ね合わせているのかなあって思った程度。
とにかく期待外れでした。
自分らしく、人間らしく生きることの大切さを描く傑作ブルースホラームービー
今年のアカデミー賞を総なめするんじゃないかと言われてる、ブルースホラー映画。
自分の夢を叶えるためには何かを犠牲にしなくてはいけないという神話の時代からの物語を否定的にとらえ、自分らしく生きることこそが美しいと力強く描く傑作。
映画公式サイトがジュークジョイントのこと、全く文化的センスなく、ダンスホールって訳してて、字幕大丈夫かなとドキドキしてみてましたが、サラッと酒場って訳しててまずはホッとしました。
前半ヒューマンドラマ、後半ホラーときいてましたが、そういう先入観持たない方が楽しめるんじゃないですかね。映画的な仕掛け、伏線からの回収などがしっかり地続きで、単純にエロくてカッコいい、デートムービー向けホラーでした。
まあ、ホラー映画ですよと言われると、ホラー初心者向けって感じで物足りないのもわかります。心霊とかじゃないからあんまり怖くないし。まあセックスしたら死亡フラグみたいな懐かしさはあるので、昔のホラー映画ぽい感覚ですね。ホラー苦手な方もまあ大丈夫なレベルかと思います。
劇中、ブルース音楽が好きな方にはおなじみの黒人特有の文化的なキーワード(キャットフィッシュ、モジョなど)や差別的なスラングは日本語訳でやわらかい表現になってるため、少しわかりづらいのかも知れませんが、ボクが観た回は、初日ということもあり場内外国人のお客さんが多くて、言葉わかるからかめちゃくちゃウケてました。1番うけてたの、ち○こ映るとこだけどな。
とにかく音楽と編集がすごいので気軽に楽しんでいただき、ブルースってカッコいいなーくらい思ってもらえたら、いちブルースファンとしてこんなにうれしいことはありません🙇
※ちなみにボク自身は70年代の日本のブルースブームはあとで知った世代で、80年代後半くらいから、リスナー、プレイヤーとして、ライブ活動やブルースセッションでの交流など、わりかしどっぷりブルースにハマってきたタイプの人間です。とは言え、誤りがありましたらコメント欄でご指摘いただけましたらうれしいです。
まず、バンパイヤを呼び寄せるきっかけになった中盤のあのシーンについて。ここで、ブラックパンサーから継続したアフロフューチャーリズムが早くも登場します。
※アフロフューチャーリズムというのは、テクノロジー、未来、宇宙と黒人文化が結びついた、アフリカ系のアーティストが表現するユートピア思想のこと。例えば黒人によって作られたエジプト文明が滅ばずに今も最先端のテクノロジーとして発展する世界線、みたいなことです。
頭のショットで突拍子もない衣装で黒人がギター弾いてますが、あの衣装は明らかパーラメントとかEW&Fといったグループのコンセプトだったアフロフューチャーリズムを表現してるものです。ライアン監督の好きなヒップホップだとアフリカ・バンバータとかも初期は同様のアプローチでしたね。
ここ、なんでジミヘンじゃないか?というところがポイントなんですよね。特定のミュージシャンじゃないのは、明確にアフロフューチャーリズムの普遍性を表現したかったんでしょう。ご丁寧に頭とおしりで2回も彼が登場します。
ブラックミュージックの継続性も表現してますが、関連のない京劇もいれてるのは、監督が、やっぱりアフロフューチャーリズムが大好きなだけなんじゃないかと思ってしまいますね。せや、ここに入れとこ!みたいな😆
音楽的な表現としては、最後に全部持っていくのが、年老いたサミーを演じる、レジェンドブルースマンのバディガイなのが痛快なのですが、これは後ほど。
ブルースは、個人の孤独や失恋を歌ってるイメージがあるかと思いますが、実は元々はえげつない下ネタソングも多いし、つまりは欲望、願望をストレートに歌ってるわけです。そこがゴスペル側からみたら悪魔の音楽ってことなんですよね。
この映画では劇中のブルース曲はシリアスなテーマに振ってるので、性的な欲望は、セリフやお芝居で表現してるんですね。
ここのところは、悪魔と契約してブルースを手に入れたというクロスロード伝説とは、少し距離を置いて考える必要があるように思いました。
この映画はクロスロード伝説をちらつかせつつ、かなり周到に、クロスロード伝説の主人公のロバートジョンソンのように安易に魂(自己)を差し出して、才能や富や名声を得るという誘惑にのるということを否定しているように受けとめました。
その証拠に劇中でもロバートジョンソンじゃなくてチャーリーパットンの名前出してますし、おまけ映像で冒頭のゴスペルの曲をブルースにアレンジして演奏して、サミーの音楽の根っこがゴスペルにあると示し、ゴスペルとブルースの関連性なども伝えてるのかと思います。
むしろ、映画ラストの年老いたサミーが、バンパイヤになれば永遠の命が手に入るという提案をされますが拒否し、人間として死ぬことを選ぶこと。ここをクロスロードと逆の構図にして、人間らしく生きることの大切さを伝えているのかと思います。
映画では描かれないサミーの生き様を想像させるような感動のラストシークエンスだと思いました。
2020年代にスクリーンの大画面でバティガイのギター弾き語りの一発撮り!録音マイクから周りのピーンと張り詰めた空気伝わりました。監督、ありがとうございます。あんた、最高だよ。
バディガイは、あのブルースブラザース に対してのオリジナルブルースブラザース と呼ばれたコンビの片割れです。ボクは60年代くらいシカゴブルースで活躍してた頃のバディガイが一番好きです。
90年代にはジェフベックらゲストミュージシャン入りのアルバムでグラミーもとりましたが、その頃の日本でのライブは、観客に媚びすぎで、ライブに一緒に行った友人達と今の言葉でいうとオワコン認定するほどでした。まあ、ファンに感謝してファンが喜ぶことを優先させちゃう、人の良さ、それがバディガイというブルースマンの魅力であり、欠点といいますか。
そんな風にキャリアがめちゃくちゃ長い、バディガイ。セリフでも、あんたのアルバム全部持ってるけど、生ギターのやつが最高だぜ、の流れから弾き語りになりますが、実際のバディガイもアコースティックギターの音源はたしかアルバム1枚しかないし、(ジュニアウェルズと共同のものも1枚しかないかも)、キャリア的にはエレキギターメインのブルースマンなのです。
映画内の残された時間はわずか、というところでバディの実年齢が90歳に近いとこで、リアリティがありすぎてどうしても泣いてしまいます。このシーン、ヘイリーが自分のおじいちゃんを見てるみたいな切ない、いい顔するんですよね。
ちなみに弾き語り前のライブシーンのエレキギター弾くところの実際の音源は、バディガイの横でギター弾いてるキングフィッシュか、エリックゲイル(ズ)じゃないかというのが、ボクの見立てです。バディ以外のミュージシャンが画面に登場しないけど、ここはバディの謙虚さでキングフィッシュの登場となったんじゃないかなと予想。バディとしては有望な後輩にここから先のブルースシーンを託してる意味もあるんだと思います。
気になってたもうひとりのブルースマン、ボビーラッシュは、ハーモニカの吹き替えだけで、出演はなかったように思いました。吹き替えてる役者さんが微妙にボビーラッシュに似てて、まさかねーとは思わされましたが。
この映画、大ヒットした音楽映画「はじまりのうた」に対するアンサームービーの意図もあるような気がしました。
「はじまりのうた」はブラックミュージックをけなしてる構図になってます。
中盤のあのシーンで未来といいつつ、今のブラックミュージック見せたりもそのためだし、「はじまりのうた」のプロデューサーの娘を演じたヘイリーを本作のすごく重要な役で登場させてるのはそうことじゃないですかね。しかもクレオール(雑にいうと黒人と白人のクォーター)って設定が憎い。
音楽的にもアイルランド勢が活躍してるとこはケルト、黒人勢の見せ場はブルース、とシームレスに繋ぐという、ものすごいことやってました。このあたりもアカデミー賞でも評価されるんじゃないですかね。
検証してないので話半分で聞いてもらいたいのですが、サムの歌のハミングのところの音階が、冒頭のアニメのアフリカ呪術の音と一致。この音階がブルース最大の発見であるブルーノートスケールをなぞってるんじゃないかなと。
音楽評論家の方のnoteでサミーがやってる「Travelin'」とバディガイのは、コードが違うという話からの、サミーのはカントリーとのミクスチュアを意味してるという内容を読みました。
たしかに若いサミーの時代は、年老いたサミーが弾いたコード(いわゆるブルース進行)のものが実は少ないということもわかりますし、ブルース進行は、50年代以降のシカゴブルースから一般化したのですよね。
若いサミーの時代はブルースが実際にはブルースとカントリーは影響しあったことももちろんわかりますが、ここはゴスペルとブルースのミックスを示してると考えてた方がこの映画的にはしっくりくる気がしましたね。
具体的には先日亡くなったスライの名曲、スタンドをサウンドオブブラックネスがカバーしたあたりから、ゴスペルのアルバムにソウルやロックのミュージシャンが参加したりと、リアルではゴスペル自体もミクスチュアが進行しているように受けとめております。
と考えていくと、黒人が迫害された歴史や音楽が白人に盗用されたメタファーとして、白人のパンバイヤが襲ってくるという受け止め方は、どうもそこじゃないんだよな、という気がしてます。そんな差別、迫害メインでここまでアメリカでヒットするわけないしなと。
音楽好きの方なら、いやいや黒人も白人もミュージシャン同志は、お互いリスペクトして影響しあってきたやんということもご存知のはず。はい、なのでホラーパートは、はっきり言うとゴスペル、ブルース、カントリー(劇中ではアイルランド民謡)が、影響しあうミクスチュアを刺激的に表現してるというのが結論です。
全176件中、1~20件目を表示














