「最先端技術の引用と危険性喚起のリアルタイムストーリー」DROP ドロップ HGPomeraさんの映画レビュー(感想・評価)
最先端技術の引用と危険性喚起のリアルタイムストーリー
ラスト20分の見ごたえは有りましたが、全体的にはごく普通の「巻き込まれ系・考察系」エンタメ作品でした。
面白かったとの印象は残念ながら持てなかった。
レストランの高級感ある故のリラックスした音楽や空間と、緊張感のある状況のバランスがうまく融合せず、眠気にも襲われてしまいました。
残念な理由は主に以下の通りです。
まず、「ドロップ機能」を理解していないと、感情移入するまでに無駄な考察を抱えながら見続ける時間が有った。
そして、バイオレットを「暗殺」の実行者として確定した犯人側の危機管理があまりにも曖昧だった。
標的(バイオレットもヘンリーも)が一般人だったら、思い通りに動かない不測の事態の危険性が大きすぎるはずだし、バイオレットの抵抗方法と抵抗の諦め方(いったん冷静になる)も、ヘンリーの気が付く範囲と気が付かない範囲(命が狙われる危機意識が薄すぎた印象)のバランスなども不可思議に思え、犯人の脅しも緊迫感や恐怖が曖昧で観入ることができなかった。
過去のトラウマと人質がバイオレットのすべて(危機意識の向き方やどう行動するか)をコントロールする要とし、犯行を完遂しうると結論付けたブレインがあまりに無謀だし、対処方が杜撰だと思えた。
同時に、一般人でしかも過去の出来事から息子を命よりも大事にしている人物像の人間が、事態に対してあまりに冷静に(意識ではなく行動そのもの)様々な対応をしていたことに疑問が生まれた。その行為はITに支配された現実感ではあまりにも普通な試みなので、犯人にばれるリスクが高すぎる。
「錯乱」で処理しては成立しない物語だし、そんな人物だったら「救援要請」がことごとく失敗してしまったら、暗殺実行をすると思う。なので、そんな主人公を上手く牽引する第二の主人公的な登場人物が必要だったかもしれないと思えました。
本来ならあっさり息子が殺されててもおかしくは無かったと思えるが、結局そんな事態に度々直面した犯人側の行動がどこまでも優しすぎたので、標的以外殺したくない気持ちが強すぎるような気がする思いが私の中で強く芽生えてからは、物語の緊迫感がさらに薄れてしまった。
似たような作品では私の中では「ニックオブタイム」を連想しました。
「ニックオブタイム」の方が、巻き込まれる理不尽や犯人の目を盗んで必死に抵抗を繰り返す手法と見せ方、犯人側の人質の扱い方、フィクションなりの理にかなった行動やラストの緊張感が上手かった。
もう一つは「フォーンブース」。
「フォーンブース」も絶賛するほどの緊張感や臨場感が有ったわけでもないのですが、小空間のクライムサスペンスとしてはまだ「フォーンブース」の方が緊張感は有ったと思えます。
妹は途中で報復として殺されたのかと思いきや気絶していただけだし、その妹の回復の時間軸も都合がよすぎだし、最後の最後に犯人が息子と妹を手にかけようとしたラストの息子の逃亡や妹の対応、犯人の射撃の下手さ、バイオレットの救出に向かう時間的に到着が間に合うのかどうかの問題や危機感も、ちょっと勢いまかせで臨場感が無かった。
結論的には、あの小空間(レストランと自宅)で、最先端の技術や機器を犯人に支配されていた状況下のクライムサスペンスとして物語の構成をうまく成立させる事が、かなり難しかったのかもと思えました。
犯人考察に対するネタばらしも、「実はそう見せていた」を思い起こさせ驚かせるような映像がひらめかなかった。
なので、ご都合的な展開に見えてしまいました。
暴露阻止をする巨大組織?としての犯人側の関係者人数や最先端機器による支配的な知能犯行を思わせる描写も物足りなかった。
ラストのアクションや見せ方は面白かったので、あくまでエンタメのよくあるクライムサスペンスとしては、面白いかもしれません。
個人的には、普通のエンタメ物語でした。
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