「身体・心理的暴力も性被害も連鎖する」ファミリア talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
身体・心理的暴力も性被害も連鎖する
クリックして本文を読む
当事者の息子が書いた自叙伝の映画化。1998年から2008年のイタリア。妻に暴力をふるう夫も被害を受ける妻も、その様子に耐えていた息子二人、特に弟のジジも複雑で繊細で多面的で光もあれば影もある(照明が印象深く効果的)存在として描かれている。その点が単なる暴力親映画と一線を画していた。最後のシーンで、父親がジジに言う言葉:「俺はもう変われないんだ。やれ!」には思わず涙が流れた。
今でも女性が3日に一度の割合で殺されるイタリア。その背景には根深い家父長制がある。被害者の問題はストックホルム症候群やグルーミングなどの名称で分類して済むことではない。物事の本質を見えなくする。女性や若い人間にとっての経済的自立の困難さという社会構造も大いに関係している。日本では、大人の女性や女の子・男の子への性被害があまりに凄まじい。この映画でテーマになっている心理的・身体的暴力行使と同様に性被害も連鎖される。
父親を殺すことで暴力の連鎖から抜け出たジジは、9年間の服役中に勉強し教養を身につけ今は多国籍企業でIT技術関連の仕事をしている。
この映画では右翼、ファシストの台頭による世界の分断にも触れている。才能ある若い監督の登場を心から喜びたい。本作の日本での映画館公開は是非とも実現して欲しい。(イタリア映画祭2025 )
コメントする