脱走のレビュー・感想・評価
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DPロスのあなた!ギョファンのドSに酔いしれろっ
ネトフリのDPと同じような展開でギョファンファン向けな感じ。ノンストップ90分ではなかった。もっとアクションかと思ったら、まんまDPだった。DPではおちゃらけギョファン。今作では執拗にドS発動!女子ノックアウト!これはギョファンのドSに酔いしれる90分。ピアノのシーンの電話の相手は恋人?家族?そこがよく分からなかった。腐女子向けシーンか?足手纏いになる後輩を庇い脱北を試みて、死んだ後輩の母に誕生日プレゼントを渡す。脱北目前に母へのプレゼントを拾い死ぬ所も予定調和。ピアノ兄貴からの冒険本を励みに脱北を目指してたという伏線もアツい。ラストはドSギョファンが見逃して、昔聴いてた韓国ラジオに投稿する伏線も、韓国モノにありがちだったけど、予想より面白かった。上映時間も丁度良い。脱北モノの王道だった。
贈られた言葉をどのように咀嚼するかで、人生の目的地は変わってしまうもの
2025.6.26 字幕 MOVIX京都
2024年の韓国映画(94分、G)
南北国境線付近から脱北しようとする北朝鮮兵を描いたスリラー映画
監督はイ・ジョンピル
脚本はクァク・ソンフル&キム・ウグン
原題は『탈주』、英題は『Escape』で、ともに「脱走」と言う意味
物語の舞台は、2000年前後の北朝鮮・韓国国境付近の非武装地帯
民警部隊としてそこに赴任している小隊長のイム・ギュナム軍曹(イ・ジェフン、幼少期:ホンゴン)は、脱北を企てていて、夜になると脱出ルートの精査に出かけていた
鉄条網をくぐる場所、地雷原の地図などを作成し、あとは決行あるのみと言う段階になっていた
だが、分隊員のドンヒョク(ホン・サビン)に知られてしまい、彼は雨が降る前に実行しようと考えていた
ドンヒョクはギュナムからそれを奪って脱走を企てるものの、ギュナムは危険だからと止めに入った
そして、その揉み合いの最中に警務部に見つかってしまい、二人とも脱走の罪で捕まってしまった
脱出用のメモを誰が作ったのかと詰問されるものの、ギュナムは固辞し、ドンヒョクは彼を庇うように「自分が作った」と答えた
その知らせは本部保衛部にも知れ渡り、リ・ヒョンサン少佐(ク・ギョファン)が現地に赴くことになった
ヒョンサンは現場に残された物的証拠などから、ドンヒョクの単独犯でギュナムはそれを止めた英雄であると結論づけた
物語は、その後ヒョンサンとともに行動するギュナムが描かれ、二人が旧知の仲だったことが仄めかされていく
ヒョンサンはギュナムを本部要員に抜擢するものの、ギュナムは除隊までに北朝鮮を脱出しようと考えていた
その考えが見抜かれていたのか、ヒョンサンは半ば強引に自分の監視下にギュナムを置くことを決め、移動届を出させた
映画は、なかなか脱出に至れないギュナムが描かれるものの、ヒョンサンからの申し出を利用する形で通行証を偽造したり、身分証を偽ったりする様子が描かれていく
宴会で酔っ払った将軍(イ・ホチョル)を介抱するフリをして宴会場を抜けるなどの機転を効かしつつも、あっさりと見つかって尋問を受けたりする
最終的には警務部が管轄する収容所に出向いてドンヒョクを助けるものの、さらに放浪民たちに捕まったりもしてしまう
放浪民の仲間が捕まっていることで、それを奪還するための戦闘があったり、執拗に最後まで追ってくるヒョンサンの執念深さと言うものも怖い
最後までハラハラとできるので、スリラー好きにはたまらない展開になっていると思った
映画のラストでは、「執念の探検かアムンゼン」と言うギュナムが大事にしていた本が登場し、そこに「あること」が書かれていた
なぜか字幕表記がなかったのだが、あの本には「ピアノ兄貴からギュナムに向けた言葉」が書かれていて、内容は「死ではなく、意味のない人生を恐れよ。誕生日おめでとう」と書かれていた
あの本はヒョンサンからギュナムに贈ったプレゼントで、彼はその言葉を胸に頑張ってきたのだと思う
ヒョンサンはピアノの夢を捨てて軍部で成り上がることを考えてきたが、ギュナムはその言葉を胸に「失敗を繰り返せる場所」を目指していた
向かう先は違うものの、ヒョンサンはギュナムの執念を買って、あえてトドメを刺さなかったのではないだろうか
いずれにせよ、まさかの同性愛設定があったので、ヒョンサンがギュナムに向けていた視線はそっちの視線だったのかな、とか余計なことを考えてしまった
北朝鮮にあんな感じの貴族がいるのかはわからないが、そこらへんは韓国から見たファンタジーということで良いのだろう
それよりも、軍事境界線にあんな電話があるという方が驚きで、そのあたりも含めて勉強になるなあと思った
イ・ジェフンの全力疾走
韓国に脱走しようと夜な夜なみんなが寝静まった後に抜け出して経路を探索し地図を作っていたギュナム。そろそろ実行って時に下級兵士のドンヒョクに先を越される。でもドンヒョクひどいよね。ギュナムの地図を勝手に持ち出すんだから、、、挙句失敗。ギュナムも銃殺の危機。ギュナムがひとりで実行していたらきっと成功してたんだろう。
幼馴染のヒョンサンに助けられて銃殺を免れたが、退役どころか出世させられそうになりやはり脱走を試みる。でもこのヒョンサン、なかなか手強い。ちょっと強烈な性格なんだが仕事が出来る。部下にテキパキと指示ができ、ギュナムを追い込む。
きっと逃げ切れるんだろうと想像はついたけど、沼に沈みかけた時はひょっとして意表をついて失敗?とちょっとハラハラした。
上官として脱走兵は捕まえなければいけないが、ヒョンサンは幼馴染としてギュナムを助けたい思いもあったかも。最後は、なんか三苫の1ミリ、、だね。北朝鮮側に引き返すヒョンサンの後ろ姿が印象的。
幼馴染で上官のヒョンサンが独特な、強烈な個性で、昔話をする時は昔を懐かしんでもいたりと、キャラクターが良く、この映画をさらに面白くしている。
2人が昔話をする時に、ギュナムのお父さんがタクシー運転手?「復讐代行人模範タクシー」ってドラマを観ているので、なんかクスッとした。
ラストの(話の中でも流れたが)歌がとてもお話に合っていて良かった。
本日鑑賞した
追う者と追われる者、交錯する両者の思い。
自由のない北朝鮮での暮らしの中でかつて少年たちは夢を抱き続けた。一人は幼い頃探検家を夢見て、そして家族を失いもはやこの国で失うものもなくなった彼は脱北を決意する。一人はその高い地位に縛られるがゆえにピアニストへの夢をあきらめ、そして裏切り者を捕らえるために脱北を阻もうとする。
追う者と追われる者を描いた傑作は過去にも多い。「アポカリプト」や「ザ・ハント ナチスに狙われた男」のように追われる主人公を執拗なまでに追跡する追手の脅威。観客はその息をもつかせぬ追跡劇に、その疾走感に酔いしれる。
その点では本作は追跡劇が後半に固まっていて、予告編から想像していた「哀しき獣」や「アポカリプト」のようなノンストップアクションを期待していただけに少々期待外れではある。
本編が始まってすぐさま脱走するかと思わせてのその展開の速さに驚かされたが、それは単なる脱走の下見。地雷原の地雷の位置をマーキングしたりと逃走経路を周到に準備する徹底ぶりにこの後の展開に期待が膨らむ。
しかし、脱走を知った部下から同行を懇願され、脱走計画は水の泡となりもはや処刑を待つ絶望的状況に。その後も思いもよらない展開が繰り広げられていく。
中盤、主人公たちを助ける流浪の民として出てきた反政府組織みたいなグループ、いままでそんな存在は聞いたことがない。確かに「新朝鮮」なる反体制活動家グループがいるとは聞いたことあるが、あんな立派な銃で武装した連中がいるとはとても思えない。野盗みたいなものなのだろうか、その点では少しリアリティに欠けるような気もしないでもない。
しかし本作の特筆すべきところは否応にも追う者と追われる者という立場に置かれた両者の人間関係を描いたところにある。作品は主人公ギュナムとヒョンサン両者の思いを軸に展開していく。
追われるギュナムは自分を追うヒョンサンをかつては兄貴と慕い、ヒョンサンもギュナムを目にかけていた。そのためにヒョンサンはギュナムに恩赦を与えたのだがしかしそれでもギュナムの脱北の決意は固い。そしてその彼の意志を強固にしたのがヒョンサン自身であった。
「無意味な人生を送ることを恐れよ」、探検家の伝記に記されたその言葉はヒョンサンがギュナムに贈った言葉であった。そしてそれはヒョンサン自身の思いを記した言葉とも思われた。
高位の軍人の家庭に生まれたヒョンサン。かつてはロシアへ留学し、ピアノの腕を磨いた。しかし彼の生まれがピアニストになる夢を奪った。彼はこの国ではなんの不自由もない暮らしができるエリート層ながら皮肉にもその地位が彼の夢を阻んだ。
逆に貧しい庶民の出のギュナムは家族もいない天涯孤独の身。彼の夢を阻むものはなかった。脱北を阻む軍による追跡をのぞけば。
目にかけてやった自分を裏切り脱北をはかるギュナムを執拗に追うヒョンサン。しかし、ヒョンサンはギュナムをいくらでもとらえるチャンスがありながらもすんでのところで取り逃がしてしまう。
彼には常にためらいがあったはずだ。逃げようとするギュナムの姿に自分を重ね合わせていたはずだ。自身を縛り付ける地位も家庭もなければ自分も夢を追って脱北していたかもしれない。しかし彼の生まれがそれを阻んだ。自分が脱北すれば自分の家族はどうなる、高い位にいる父の立場は、生まれてくる子供は。彼がそれを捨てて脱北することはかなわぬ夢であった。
だからこそ失うものもない夢だけを追い求めることができるギュナムに自分の思いを託していたのかもしれない。逃げるギュナムを追い続ける中で彼の心はどこかで逃げおおせてくれという思いと逃してはならないという思いで板挟みにあっていたはずだ。いつしか逃げる彼の姿に自分を重ね合わせていたはず。俺は全力で追う、その追跡から見事に逃れてみせろ。そんな思いがヒョンサンから終始感じられるようであった。
軍事境界線に辿り着き、もはや韓国の領土が目の前というところでギュナムの前に立ちはだかるヒョンサンは銃を向けて言う。南はお前の思ってるような国ではない。夢のような楽園ではないんだ。
確かに韓国とていまや経済格差によりけして誰もが何の不自由もない暮らしができるわけではない。しかしそれはおそらくヒョンサンが自身の脱北への思いを封じるために自分を納得させるために言い聞かせてきた言葉であったはずだ。
そしてギュナムはヒョンサンに答える。それでも南では失敗することができる。何度失敗しようが命までは奪われることはないんだと。その言葉に返す言葉もないヒョンサン。
トンネルを抜けて境界線を越えようとするギュナムを撃つヒョンサン。しかし最後のとどめを刺すことはやはりできない。
失敗しに行けと言わんばかりに彼はその場を立ち去る。もう一人の自分ギュナムに彼は自身の希望を託したのだろう。ヒョンサンはギュナムを自由にしたことで彼自身を縛りつけていた何かから少し解放された気がしたに違いない。
追う者と追われる者、それはけして敵同士ではなく同じ思いを抱きあう同志たちだった。共に自由を奪われた者同士のそんな切ない追跡劇は幕を閉じる。
主人公を演じたイム・ギュナムも良かったが、よく脇役で見かけるリ・ヒョンサンがとてもいい役を演じていた。声に特徴がある役者さんなので名前がわからなくてもすぐ彼だとわかる。
この日に見た映画はすべて韓国映画でどれも面白かった。拾い物としては「プロット」がおすすめ。ここの評価低めだけどかなり完成度の高い作品。
夢を捨てた「ピアノ兄貴」の行く末は?
Reframing
脱北映画でめちゃめちゃスリルを感じられそうという考えでの鑑賞。
特典はポストカードでした。
命懸けの大脱走、地雷原を駆け抜け、なんとかして逃げ出す様子にヒリヒリさせられました。
短い尺だからこそ絶えることのない緊張感、希望と絶望の応酬、魅力な軍人サイドとキラリ輝くものばかりでした。
思っていたよりかは走りは少なく、脱北に関してのドラマが多めに描写されますがそれはそれで良かったです。
脱北しようとした部下を止めたと認識され英雄扱いされる主人公、部下を助け2人で脱北しようと良い具合に組織に潜り込んでいくという前半パートから、部下を救出して勢いそのままに駆け抜け韓国へ向かうスポーツパートの後半と違う面で楽しめるのも良かったです。
主人公の行動がとてもキレッキレで、死んだふりをする度胸だったり、迷わず走り出すところだったり、囮になってみたりととにかく肝が据わっていてカッコよかったです。
部下も従順ながら軽口を叩いてみたりと憎めないキャラに仕上がっていましたし、コメディ部分の多くを担当していてほのぼのさせられるシーンがあったのもよかったです。
対する少佐は冷酷だけれど、どこか人間味のあるといったキャラになっており、オンとオフの差が激しく、激昂した時なんかは手がつけられないくらいの暴れっぷりとこれまた魅力的なキャラになっていました。
ちゃんと主人公サイドの違和感に気づいてマークをしてくる軍人もいるのでヒヤヒヤしますが、紙一重のタイミングでお互いの警戒がMAXになって車中バトルが勃発してからの看板突っ込み大横転はど迫力でした。
全体的にうまいこといきすぎているところはしょうがないとはいえそこそこあり、全然銃弾当たらんやんと思ったら、めっちゃ命中率が当たったり、何故か追いかけてこない舐めプな時間帯があったり、うまいタイミングで女性の一族がやってきて助けになってくれたりと違和感は感じますが、脱走側にめちゃ感情移入してしまっているのでそんなのは些細な問題です。
失敗を恐れずやり続ける、失敗をして成長していくという日本人が好きなやつ〜!とセリフが飛び出てきた時はグッときましたし、主人公もその失敗を目指してひた走っていくので応援しがいがありました。
ラストシーンも最後までハラハラさせてくれますし、少年漫画のような激アツなワンカットに惚れ惚れさせられました。
熱さを秘めた韓国映画、テイストとしてはかなり珍しいタイプなので、少し変わった韓国映画が観たい方におすすめしたい一本です。
鑑賞日 6/24
鑑賞時間 11:50〜13:30
ガツンと❗️
最初はコメディタッチかと思えばじわじわ緊張感が増し最後にはガツンと来るのはさすが韓国映画。
北に残ればある程度までは出世出来ても失敗する自由はなく飼い殺し。
北を批判しつつも南にはまだ自由がある。
弟分の部下がいるからこそ脱北する意味がより強く描かれラストにはホロりと。
追う側の人間も理由があり決して冷酷無比では無いのも上手い❗️
脱北する兵士の覚悟を!
しっかりエンタメとして描く韓国映画はエライ
タイトルがスバリ「脱走」。
予告やキーアート、そして本編のオープニングから、ハラハラドキドキはするが単調な展開の映画になる予感。
しかしながら、そんな展開なの?な展開。
閉鎖的な部隊からの脱出劇と思わせて、もっと大きな脱出劇へ展開し、過去の人間関係もからんでの派手なアクション活劇へと変貌。
設定や展開の無理矢理感も、韓国映画特有の力技で納得(?)させ、男と男の闘いで終わるエンタメ魂。
ならば最後の付け足しなんか無しで、男らしくハードボイルドに終わったらと思う。
語る言葉に重みがあった
失敗するために脱走する
主人公は北朝鮮の兵役軍人であるが、韓国への脱北を目論んでいた。同僚の軍人が逃走を試みたところでストーリーは進展していく。
ストーリー自体は至ってシンプルであり、逃走者と捕獲者という構図。脱走のアイデア的にはこれといって新しいものは出てこない。むしろ、定番どころをすべて使いまわしている感がある。
本作の最も重要なシーンは最終盤に訪れる。それは、主人公が地雷を踏みかけたシーンでの少佐との会話である。少佐は、なぜ脱北などするのか、韓国で成功することなどどうせできないだろう、と言う。それに対する主人公の言葉こそ、本作の伝えたいメッセージそのものになっている。これは、他国から見る北朝鮮の息苦しさの正体を端的に言い表しているように感じる。
本作を、北朝鮮の方々が気兼ねなく鑑賞できる日は来るのだろうか。その日が来るころには、本作の持つメッセージ性は希薄になっていることだが。
日本では当たり前な、「失敗」出来る事のありがたさ
【イントロダクション】
自由を求めて韓国へ脱北を試みる兵士と、彼を追う将校との追走劇を描いたアクション・スリラー。脱北を試みる兵士をイ・ジェフン、北朝鮮の将校をク・ギョファンが演じる。
監督、イ・ジョンピル。脚本にクォン・ソンヒ、キム・ウグン。
【ストーリー】
朝鮮半島の軍事境界線付近の駐屯基地。10年の兵役を終え、除隊を目前に控えていたイム・ギュナム(イ・ジェフン)軍曹は、毎晩兵士達が寝静まった後、基地を抜け出していた。彼は1日30分という時間制限を設け、地雷地帯に仕掛けられた地雷の位置を把握、手製の地図に場所を書き記しては、韓国への亡命準備を進めていたのだ。
いよいよ計画実行を目前に控えたある日、偶然にもギュナムの計画を察知した下級兵士のキム・ドンヒョク(ホン・サビン)は、韓国に住む母と妹の身を案じており、母の誕生日にプレゼントを渡したいとして、ギュナムに共に連れて行ってくれと懇願する。しかし、ギュナムはこれを拒否。すると、ドンヒョクはギュナムより先に脱出しようとし、それを止めようとしたギュナムと共に脱走兵として逮捕されてしまう。
脱走兵の捜査で部隊にやってきた国家保衛部のリ・ヒョンサン(ク・ギョファン)少佐は、幼なじみだったギュナムを脱走兵逮捕の英雄に仕立て上げ彼を助ける。更に、師団長直属の補佐官としてギュナムの生活をサポートしようとする。だが、ギュナムはあくまで自由を求めて脱北する意思を曲げず、囚われていたドンヒョクを救出して逃亡を企てる。
ギュナムの意思を確認したリ少佐は、部下を率いて追跡を開始する。
【感想】
予告編を観た印象では、「真夜中に脱北を試みた兵士と、彼を追う軍上層部役員との追跡劇」といったワンシチュエーションを、94分というコンパクトな尺でスリリングに描く作品かと思っていた。しかし、実際には次から次へと事態が思わぬ方へ転がって行き、「次はどうなる!?」という緊張感を保ちつつ進む作品であった。
展開に御都合主義感は否めないが、短い時間の中で絶えず状況が変化し、自由を求めて奔走するギュナムの姿に最後まで釘付けとなった。
ギュナム役のイ・ジェフンの演技が良く、漏れ出た車の油を顔に塗りたくって死亡を捏造する必死さや、自分達を保護してくれた放浪者の一団を救う為に囮になるという彼の愚直な性格には、素直に好感が持てた。ライフルのスコープで狙ってくるリ少佐を見つめるスコープ越しのシーンも印象的。脱北後の髪型よりも、兵士時代の短髪姿の方が似合っていたと思うのは私だけだろうか。
そんなギュナムを追うリ少佐は、体制に迎合せざるを得なかった冷酷なリアリストだ。かつては賞を総なめにする有望なピアニストだったが、軍人家系故に夢を諦めるしかなかった。ピアニスト時代のライバルとの間には親密な関係があった様子で、電話帳にも“かつて愛したクソ犬”と登録している。だが、この同性愛要素についてはそれ以上の掘り下げもなく、特に活かす気もないのであれば不要だったようには感じる。恐らく、北朝鮮では同性愛も認められておらず、それ故にリ少佐はピアニストとしての“未来”だけでなく、彼との“愛”も諦めざるを得なかったという事なのだろうが。
音楽の盛り上げ方が良く、絶えず変化し続ける状況を効果的に、緊張感を持たせていた。
【失敗出来るという事のありがたさ】
「挑戦して失敗して、また挑戦して失敗してー。俺は失敗しに行くんです。ここでは失敗も許されない」
ギュナムが韓国との国境付近で、リ少佐に放ったこの台詞が素晴らしい。「成功する」のではなく、「失敗する」というのが良い。そして、失敗の許される日本という国に生まれたありがたさを噛み締めた。私は失敗し続けてきたが、今日もこうして生きている。
しかし、すぐ近くの彼の国では、失敗は許されず、個人としての自由や尊厳が無視され、従う事を強要される。その苦痛を考えると、リ少佐の「諦めて受け入れるしかない」という思いも理解出来る。だが、彼もかつては夢と希望を抱き、ギュナムに贈ったアムンゼンの本に「無意味な人生を過ごすなbyピアノ兄貴」と記していた。過去の自分が贈ったその一文は、まさに今、体制に迎合せざるを得ず、あらゆる事を諦めながら生きてきるリ少佐に刺さった事だと思う。過去の自分が、今の自分に「目を覚ませ」と言っているのだ。
そして、ラストでギュナムは自由と夢を手に、新しい世界を謳歌している。まだ見ぬ「失敗」へ向けて、彼の人生は進み始めたのだ。
【総評】
コンパクトな尺でテンポ良く描かれる、自由を追う者と阻む者の追走劇。日本では当たり前の「失敗」というありがたみを噛み締め、明日を生きる背中を押してくれる作品だった。
つまらなくはないがオススメもしにくい
映画としての完成度は申し分ない上に画の切り方が面白い!
自分は韓国映画などは一切見た事無かったのですが、この映画は予告編を見て画が何か独特な切り方をしている風に感じて見に行きました。
結果として大当たりの大満足でした。
まず前提として映画そのものの完成度は非常に高いです。後述する画の切り方の他にも脚本はまったくだれず、緩急緩急がしっかりと続いています。
引きも完璧で。長ったらしく序章をやったりはなく、もう本当にパッパッパッという形で観客に見せるという事を意識してしっかり脚本が作られているなと感じました。
音楽に関しても非常に完成度が高く、映像のテンポに合うようにしっかりと組み込まれていて作品としての一体感を感じました。
俳優陣の演技もバラエティー俳優とかじゃなくて(自分は韓国の俳優さんをあまり知らないのであくまで主観です。)没入感のある演技をしてくださった一流の方々だったと感じました。
そして、自分がこの作品を何よりも推したいのはこの映画の恐らく独特ともいえる画の切り方です!これが自分には何よりも面白かった。
あくまで主観的な感想になりますが、この映画の画の切り方は実写映画の切り方というよりは恐らく漫画やアニメといった作品の切り方に近いと感じます。
予告編を見てもらえれば分かりますが、(ネタバレではなく予告編にある映像で例えます)例えば追っ手の捜索隊が森の中で捜索するシーンで一列に並んで一斉に銃の構えを移動するといったシーンがあったりします。自分の体験だと、なかなかこういう風に実写で画を切る人はいないと感じました。
一般的な実写の切り方で言えば、追っ手を後ろから撮ったり前から撮ったりして緊迫感を演出するものだと思いますが、この映画ではそのようにあえてリアルさを捨てて(恐らくいくら北朝鮮兵士であっても森の中で一斉に整列してそのように人を探す事はないのではないかと思います)映像の一種の記号化というか、有り体に言ってしまえば漫画やアニメで多用するような伝える為の画みたいな画の切り方をしているように感じました。
主人公の脱北シーンでも、主人公のアップを多用するよりも常に広く右側から撮り続けるといった画が多用されており、これは実写映画ではなかなかみない画だと思わされるのと同時にこの映画ではそれがしっかりと活きていて作品の緊迫感や独特の雰囲気を作り出す事に成功しているように思います。
北朝鮮兵士の脱北するというある種単純で単調な話を、シナリオ、テンポ、音楽、画の切り方という映画そのものの要素を使って表現しきった「傑作!」と自分は感じました。
とてもよかったです!
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