脱走のレビュー・感想・評価
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語る言葉に重みがあった
脱走する者にも追う者にも自由、平和、希望など
それぞれ複雑な想いが…
スコープで狙う者を見据える眼差しには
決意が感じられ気持ちが高揚し、
息子の安否を尋ねた母親につく嘘には切なくて
たまらなかった。
いろいろ考えさせられた。
失敗するために脱走する
主人公は北朝鮮の兵役軍人であるが、韓国への脱北を目論んでいた。同僚の軍人が逃走を試みたところでストーリーは進展していく。
ストーリー自体は至ってシンプルであり、逃走者と捕獲者という構図。脱走のアイデア的にはこれといって新しいものは出てこない。むしろ、定番どころをすべて使いまわしている感がある。
本作の最も重要なシーンは最終盤に訪れる。それは、主人公が地雷を踏みかけたシーンでの少佐との会話である。少佐は、なぜ脱北などするのか、韓国で成功することなどどうせできないだろう、と言う。それに対する主人公の言葉こそ、本作の伝えたいメッセージそのものになっている。これは、他国から見る北朝鮮の息苦しさの正体を端的に言い表しているように感じる。
本作を、北朝鮮の方々が気兼ねなく鑑賞できる日は来るのだろうか。その日が来るころには、本作の持つメッセージ性は希薄になっていることだが。
日本では当たり前な、「失敗」出来る事のありがたさ
【イントロダクション】
自由を求めて韓国へ脱北を試みる兵士と、彼を追う将校との追走劇を描いたアクション・スリラー。脱北を試みる兵士をイ・ジェフン、北朝鮮の将校をク・ギョファンが演じる。
監督、イ・ジョンピル。脚本にクォン・ソンヒ、キム・ウグン。
【ストーリー】
朝鮮半島の軍事境界線付近の駐屯基地。10年の兵役を終え、除隊を目前に控えていたイム・ギュナム(イ・ジェフン)軍曹は、毎晩兵士達が寝静まった後、基地を抜け出していた。彼は1日30分という時間制限を設け、地雷地帯に仕掛けられた地雷の位置を把握、手製の地図に場所を書き記しては、韓国への亡命準備を進めていたのだ。
いよいよ計画実行を目前に控えたある日、偶然にもギュナムの計画を察知した下級兵士のキム・ドンヒョク(ホン・サビン)は、韓国に住む母と妹の身を案じており、母の誕生日にプレゼントを渡したいとして、ギュナムに共に連れて行ってくれと懇願する。しかし、ギュナムはこれを拒否。すると、ドンヒョクはギュナムより先に脱出しようとし、それを止めようとしたギュナムと共に脱走兵として逮捕されてしまう。
脱走兵の捜査で部隊にやってきた国家保衛部のリ・ヒョンサン(ク・ギョファン)少佐は、幼なじみだったギュナムを脱走兵逮捕の英雄に仕立て上げ彼を助ける。更に、師団長直属の補佐官としてギュナムの生活をサポートしようとする。だが、ギュナムはあくまで自由を求めて脱北する意思を曲げず、囚われていたドンヒョクを救出して逃亡を企てる。
ギュナムの意思を確認したリ少佐は、部下を率いて追跡を開始する。
【感想】
予告編を観た印象では、「真夜中に脱北を試みた兵士と、彼を追う軍上層部役員との追跡劇」といったワンシチュエーションを、94分というコンパクトな尺でスリリングに描く作品かと思っていた。しかし、実際には次から次へと事態が思わぬ方へ転がって行き、「次はどうなる!?」という緊張感を保ちつつ進む作品であった。
展開に御都合主義感は否めないが、短い時間の中で絶えず状況が変化し、自由を求めて奔走するギュナムの姿に最後まで釘付けとなった。
ギュナム役のイ・ジェフンの演技が良く、漏れ出た車の油を顔に塗りたくって死亡を捏造する必死さや、自分達を保護してくれた放浪者の一団を救う為に囮になるという彼の愚直な性格には、素直に好感が持てた。ライフルのスコープで狙ってくるリ少佐を見つめるスコープ越しのシーンも印象的。脱北後の髪型よりも、兵士時代の短髪姿の方が似合っていたと思うのは私だけだろうか。
そんなギュナムを追うリ少佐は、体制に迎合せざるを得なかった冷酷なリアリストだ。かつては賞を総なめにする有望なピアニストだったが、軍人家系故に夢を諦めるしかなかった。ピアニスト時代のライバルとの間には親密な関係があった様子で、電話帳にも“かつて愛したクソ犬”と登録している。だが、この同性愛要素についてはそれ以上の掘り下げもなく、特に活かす気もないのであれば不要だったようには感じる。恐らく、北朝鮮では同性愛も認められておらず、それ故にリ少佐はピアニストとしての“未来”だけでなく、彼との“愛”も諦めざるを得なかったという事なのだろうが。
音楽の盛り上げ方が良く、絶えず変化し続ける状況を効果的に、緊張感を持たせていた。
【失敗出来るという事のありがたさ】
「挑戦して失敗して、また挑戦して失敗してー。俺は失敗しに行くんです。ここでは失敗も許されない」
ギュナムが韓国との国境付近で、リ少佐に放ったこの台詞が素晴らしい。「成功する」のではなく、「失敗する」というのが良い。そして、失敗の許される日本という国に生まれたありがたさを噛み締めた。私は失敗し続けてきたが、今日もこうして生きている。
しかし、すぐ近くの彼の国では、失敗は許されず、個人としての自由や尊厳が無視され、従う事を強要される。その苦痛を考えると、リ少佐の「諦めて受け入れるしかない」という思いも理解出来る。だが、彼もかつては夢と希望を抱き、ギュナムに贈ったアムンゼンの本に「無意味な人生を過ごすなbyピアノ兄貴」と記していた。過去の自分が贈ったその一文は、まさに今、体制に迎合せざるを得ず、あらゆる事を諦めながら生きてきるリ少佐に刺さった事だと思う。過去の自分が、今の自分に「目を覚ませ」と言っているのだ。
そして、ラストでギュナムは自由と夢を手に、新しい世界を謳歌している。まだ見ぬ「失敗」へ向けて、彼の人生は進み始めたのだ。
【総評】
コンパクトな尺でテンポ良く描かれる、自由を追う者と阻む者の追走劇。日本では当たり前の「失敗」というありがたみを噛み締め、明日を生きる背中を押してくれる作品だった。
つまらなくはないがオススメもしにくい
映画としての完成度は申し分ない上に画の切り方が面白い!
自分は韓国映画などは一切見た事無かったのですが、この映画は予告編を見て画が何か独特な切り方をしている風に感じて見に行きました。
結果として大当たりの大満足でした。
まず前提として映画そのものの完成度は非常に高いです。後述する画の切り方の他にも脚本はまったくだれず、緩急緩急がしっかりと続いています。
引きも完璧で。長ったらしく序章をやったりはなく、もう本当にパッパッパッという形で観客に見せるという事を意識してしっかり脚本が作られているなと感じました。
音楽に関しても非常に完成度が高く、映像のテンポに合うようにしっかりと組み込まれていて作品としての一体感を感じました。
俳優陣の演技もバラエティー俳優とかじゃなくて(自分は韓国の俳優さんをあまり知らないのであくまで主観です。)没入感のある演技をしてくださった一流の方々だったと感じました。
そして、自分がこの作品を何よりも推したいのはこの映画の恐らく独特ともいえる画の切り方です!これが自分には何よりも面白かった。
あくまで主観的な感想になりますが、この映画の画の切り方は実写映画の切り方というよりは恐らく漫画やアニメといった作品の切り方に近いと感じます。
予告編を見てもらえれば分かりますが、(ネタバレではなく予告編にある映像で例えます)例えば追っ手の捜索隊が森の中で捜索するシーンで一列に並んで一斉に銃の構えを移動するといったシーンがあったりします。自分の体験だと、なかなかこういう風に実写で画を切る人はいないと感じました。
一般的な実写の切り方で言えば、追っ手を後ろから撮ったり前から撮ったりして緊迫感を演出するものだと思いますが、この映画ではそのようにあえてリアルさを捨てて(恐らくいくら北朝鮮兵士であっても森の中で一斉に整列してそのように人を探す事はないのではないかと思います)映像の一種の記号化というか、有り体に言ってしまえば漫画やアニメで多用するような伝える為の画みたいな画の切り方をしているように感じました。
主人公の脱北シーンでも、主人公のアップを多用するよりも常に広く右側から撮り続けるといった画が多用されており、これは実写映画ではなかなかみない画だと思わされるのと同時にこの映画ではそれがしっかりと活きていて作品の緊迫感や独特の雰囲気を作り出す事に成功しているように思います。
北朝鮮兵士の脱北するというある種単純で単調な話を、シナリオ、テンポ、音楽、画の切り方という映画そのものの要素を使って表現しきった「傑作!」と自分は感じました。
とてもよかったです!
韓国映画の真骨頂
優しい嘘。
除隊間近の軍曹ギョナムが韓国へ逃げようと脱北を計画する話。
脱走計画が部下ドンヒャクにバレ、綿密に調べた脱走ルートの地図を奪われたが失敗するドンヒャク、失敗の場に居合わせたギョナムも銃殺刑かと思ったが、幼馴染みでもある保衛部小佐ヒョンサンから幸か不幸か「脱北者捕らえた英雄」と祭り上げられ計画が狂うギョナムだったが…。
超ドシンプルで分かりやすくて面白い!
あの脱走ルートの地図は完成までにどのくらいの期間を費やしたのだろう、銃殺免れ幸か不幸か直属の部下とか想定外な展開と観てる側としては面白い。
計画成功までもうちょっとでの“底無し沼”、境界線手前で撃たれて残念な展開と思ったもののホッとした。
脱北してから1年後、脱走中は鬼の形相だったギョナムだったけど、普通の生活を手に入れあんなにも優しい顔に変化してく表情部分もよかった。作品としても面白い!観てよかった。
脱北映画ですが、結末が読めてしまうのは仕方ないか!
かつて朝鮮半島の南北軍事境界の板門店で北朝鮮兵士が韓国側に逃げ込んで撃たれる事件が起きました。
脱北には命の危険が伴うことは昨年のビヨンドユートピアと云うドキュメンタリーでも見ました。
今回は飽くまで映画ですので現実とは乖離しているとは思いますが、ストーリーはほぼ想定していた感じでした。
兵役中の北朝鮮の軍人が脱北を試みようと奮闘する北朝鮮目線の作品。 本年度ベスト級。
国家に忠誠を誓う軍人と自由を求め脱北を試みる兵役中の軍人の熱い作品って感じだった。
ただ脱北を試みる作品と思いきや、色んな出来事が満載で楽しめた。
軍事境界線を警備する兵役中のギュナム。
脱北を計画。
脱走する準備として夜な夜な施設を抜け出し兵舎の周辺に埋め込まれた地雷の位置を地図に印し脱北のタイミングを図って行く感じ。
大雨が降ると地雷の位置がズレてしまう設定。
大雨が降る前に脱走を決行する展開。
北朝鮮の追手の人数がハンパ無い!
夜中に脱走兵を追う兵隊達が持つライトの数が凄かった。
脱走したギュナムを追う少佐のヒョンサン。
かつては幼馴染みだった2人が敵対する仲になってしまったのが泣ける。
ヒョンサンがギュナムが逃げる先を地図で先読みし、兵隊に指示を出す姿が印象に残る。
ラストの韓国との境界線のシーン。
鑑賞客を泣かせようとさせる演出が見え見えで涙が流れなかったのは残念(笑)
この手の作品であるあるだけど、主人公が銃で撃たれてもなかなか当たらなかったり、地雷原を走っても爆発しなかったりするのは想定の範囲内でした( ´∀`)
失敗したい
決死の脱北…。
2日間という限られた時間のなかで命懸けの脱北に挑む軍人の闘いを、緊...
2日間という限られた時間のなかで命懸けの脱北に挑む軍人の闘いを、緊迫感たっぷりに活写した韓国映画。
軍事境界線を警備する北朝鮮の部隊。もうすぐ兵役を終える軍曹ギュナムは韓国への脱走を計画していたが、ついに決行しようとした矢先、部下の下級兵士ドンヒョクに先を越され失敗してしまう。さらにギュナムの幼なじみである保衛部少佐ヒョンサンが、脱走兵ドンヒョクを捕まえた英雄としてギュナムを祭り上げ、前線から平壌へ異動させようとする。タイムリミットがあと2日に迫るなか、ギュナムはヒョンサンの目を盗んで決死の脱出を試みるが、思わぬ困難が立ちはだかる。
テレビドラマ「シグナル」のイ・ジェフンが脱北に挑む主人公ギュナム、Netflixドラマ「D.P. 脱走兵追跡官」のク・ギョファンが彼を追撃する軍少佐ヒョンサンを演じ、「このろくでもない世界で」のホン・サビン、テレビドラマ「ナビレラ それでも蝶は舞う」のソン・ガンが共演。「サムジンカンパニー1995」のイ・ジョンピル監督がメガホンをとった。韓国のシンガーソングライター、Zion.Tが挿入歌を担当。
脱走
2024/韓国
配給:ツイン
ツボをおさえた脱走映画
タイトル通り、ちゃんと脱走映画の勘所を押さえた作り。隠した身分がバレるバレないとか、追っ手の中に紛れ込むとか一通りやって90分。
このくらいうまく作ってあれば多少のご都合主義(タイミングよく川に落ちすぎとか)は問題なし。こちらが見たいものを見せてくれ、満足して映画館を出た……
……ただ、どうしてもがまんできない点が三つある。
① 冒頭で部下が主人公を庇うところ。あれは無理がある。多少世話になってたからといって庇うわけがない。なので、部下は偶然「地図」を発見し、誰が計画したか知らずに計画をパクって脱走するという展開、こうでないと不自然だ
② 話が終わったあとの「一年後」の描写。あれは完全に蛇足。トンネルのところで終わるべき
③ エンドロールの時に流れる甘ったるい主題歌。クソダサい。余韻も何もあったもんじゃない。
とは言え、面白くみてたのは間違いない。払った映画代に見合った内容だ。
全然脱走させてもらえない(笑)
2025年劇場鑑賞179本目。
エンドロール後映像無し。
失敗したら即死亡というキャッチコピーだったのでもうひたすら2時間弱走り続ける映画かなと思っていたのですが、なんか色々起こって全然脱走始めさせてもらえません。主人公の父親が昔運転手をしていた、上流階級のお坊ちゃんが色々親切にしてくれるのですが、顔がわからなくなりがちの韓国映画では珍しく顔がはっきり区別がついて助かりました。というか大東駿介を白くしたみたいだなぁとずっと思っていました。どっちもねちっこい演技をさせたら抜群ですね。
邦画やハリウッド、インド映画なんかは主人公が助かる確率は95%を超えますが、韓国はキャラの命をなんとも思っていないので助かるかどうか本当に分からずハラハラできました。実際どうかはご覧ください。
全61件中、21~40件目を表示
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