でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男のレビュー・感想・評価
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上司の悪魔の囁きには要注意
実話なので、内容に関してどう考えても、鑑賞者の感じ方ですので、私の採点は、芝居の上手い俳優さんを、適材適所にキャスティングした事に対してです。綾野剛さん、柴咲コウさん、小林薫さんをはじめ、皆さん上手いですね!
殺人教師と呼んだマスコミ
ルポルタージュによるとても見応えのある法廷劇でした。
この映画とても腹の立つシーンが多い。
常軌を逸したモンスター・ペアレント。事なかれ主義の学校組織と教育委員会。かなり適当な精神科医。商業主義で人権無視のマスコミ。
一方で、主人公の家族と事件を担当した弁護士の存在には救われた気持ちになりました。
それにしても週刊誌やテレビ局などのマスコミの罪は重い。ペンは正義にもなるが、凶器にもなりますね。
マスコミ関係の方にはこの映画と「フロントライン」をぜひ全員に観てほしい。
真実は藪の中では無い‼️❓人生は戦争のようなものだ‼️❓
異色の裁判劇
実話の重みをヒシヒシと感じました
本当にこんなこと
見応えはあった。見ても無いでっちあげのAiレビュ-はマジ許すまじ!
カラスがさ~異常に最近夕方増えてて。これって南トラ今年7月のアレのせいか。
トカラ列島地震、悪石島。早速回避の為か根拠無き7月5日が報じられて。
時は同じくして中東の核施設へのミサイル攻撃。
そして名古屋の教師盗撮コミュニティ・・・偶然か奇遇か この映画公開。
この社会は常に混沌としている。 そして 早くも梅雨明けしていくのであった。
あっちぃいぞ! ホントにもう (@_@;)
そんな中 涼しい映画館へ 今日も行く~
今日は「でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男」観に行きますたよ。
中々興味もって最後まで見れました。
この映画、 是枝監督の”怪物”(2023年 脚本は坂元裕二さん)の出だしのエピソ-ドがそのまま別作品として切り出したような内容。ちょっと流れ展開が凄く似てる。
でっちあげ作品の方は、原作:福田ますみ氏(2007年:『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』新潮社)となってます。
時系列から こちらが最初かなと感じますが。
この似すぎた点。如何なものかと 私は素直に感じました。
しかし、でっちあげは 裁判が主であり、あくまでモンスター親子との戦い。
中盤~終盤までは 全く違いますのでご安心を。
実際に有った話のようで リアリティをとても感じ得ました。
裁判に9割勝訴、ここの結果が心にひっかかり残ります。
残る1割の教師が児童をイジメた点を巡って何度も何度も控訴。10年かかって事実無根を勝ち取る所が ホントに心を打った。
-------中々いい味してた役者陣-------
・薮下誠一(主役):いつもヤンチャな役が多い 綾野剛さんが演じる。
この役処は凄く良かったと思います。中々な 真面目な先生ぶり。
両極端な性格を上手く演じ切っていたと思います。素晴らしい。
・氷室律子(原告 母親):柴咲コウさん。コワイ、コワイ 心が無い母親像を真に捉えて出してますね。怖さがイイ感じでした。
・湯上谷年雄(心ある弁護人):小林薫さん。もう待ってましたよと言わんばかりの好演。とっても正義感と安心感が漂っててズバ抜けた配役と思います。
・薮下希美(薮下の奥さん):木村文乃さん。夫を懸命に支える。もうどん底に落ちた夫が離婚を申し出るが きっぱりと断る。遣ってもいない事は認めちゃダメ。絶対に。 ここの夫を心から支えて行く真の強さ(愛)を感じましたわ。
監督:三池崇史さん
どんな味付けで作品を仕上げられるのか楽しみにして居りました。
監督らしい 風味(スパイス)が随所にしていたと思います。
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(感じた事)
・薮下が教師になるきっかけが、金属加工の町工場勤めから 先生を目指したように成ってましたが あれは?本当にそうだったのかしらと。
ちょっと無理が有る感じがしました。
・喫煙場面に違和感。モデルの教師は本当に喫煙されていたんでしょうか?
また 家の中で吸ってた?あんな風に?
実際は違うのではと感じます。
・10年後の先生続けている風格が、もう少し歳行ってる感じの方が
良いのではと感じた。ちょっと若い感じかなと思う。
・モンスタ-親子の行方はどうなったのか。何処に行っても周囲は戦々恐々と思う。
最後の最後、10年経って 事実無根がやっと認められる。
この安堵感、やっとの思い。
この深い感情は当人にしか 決して分かる事は無いだろうと そう感じます。
ご興味御座います方は
是非、劇場へどうぞ!!
えっ、と驚く演出
日本で初めて教師による児童への体罰事件を題材にした、福田ますみの、でっちあげ 福岡殺人教師事件の真相、を映画化した作品。
2003年、小学校教諭の薮下誠は小学4年生・氷室拓翔への体罰が有ったと母親の氷室律子から告発された。しかもその内容は、教師によるいじめ、もしくは傷害事件とも言えるほどの酷いものだった。最初は新聞で匿名報道され、それを週刊春報の記者・鳴海三千彦が実名報道に踏み切り、過激な見出しの記事は世間を震撼させた。マスコミの標的となった薮下は、誹謗中傷や嫌がらせ、家への張り紙、さらには停職と、絶望の底へ突き落とされた。世論も律子を擁護する声が多く、550人もの大弁護団が結成され前代未聞の民事訴訟となった。裁判では、誰もが律子側の勝利を確信してたが、法廷に立った薮下は、すべて事実無根のでっちあげだ、と完全否認した。そして・・・という事実に基づく話。
このニュースは聞いた事有ったかもしれないが忘れていた。
恐ろしい捏造事件であり、律子の目的がよくわからなかった。
拓翔も小学校4年生だから何か意図して嘘をついたのだろうが、その目的がなんだったのだろう?
1番知りたかった所はいまだに明らかになっていないという事なんだろう。
最初保護者側の映像が流れ、酷い教師というイメージが植え付けられた後に、教師側の映像が流れ、何が真実なのかわからなくなった。そこが狙いなんだろうし、混乱したが面白かった。
薮下役の綾野剛は流石で、酷い役もオドオドした役も上手かった。保護者・律子役の柴咲コウは冷たい感じが良かった。
薮下の妻役の木村文乃は強いなぁ、良い妻だなぁ、と感心して観てた。
その他、光石研や小林薫の素晴らしい演技が堪能できた。
面白かった。
白雪姫殺人事件も観なおしたくなった
主役2人の演技は圧巻!!
だからこそ、2人の子供の演技がなぁ。。
ドラマだったら許せるけど、映画だからもう少し演技できておくれや…
話は実話だからこその恐怖と
私もマスコミにしっかり踊らされるタイプだから
終始ぶん殴られる感覚を味わいながら観てましたw
しいていうなら、もっとサイコパス感ほしかったのと
柴咲コウの過去編は見たかったのと
旦那が謎に黒いの何w
綾野剛さん最高すぎる
とにかく綾野剛さんの演技最高すぎる。映画で見れてよかった。演技に引き込まれた。事実だったというのが本当に胸糞悪いけど映画自体は良かった。そして、もろ地元で笑ったwwww
よくもまぁ映像化できたものですね。
20年も昔の話だからこそ、実話ベースとはいえ映像化できたのでしょうね。
2025年現在なら、ネットでバズるでしょうし、仮にこの主人公が無罪だったとしても、ずっと彼は「いじめ教師」の烙印を押されたままかもしれません。
この事件はウィキペディアに「福岡市「教師によるいじめ」事件」として詳しく書かれていますが、わたしもこの福田ますみ氏著のドキュメンタリーを読んだうえで鑑賞しましたが、やはり原作のほうが強烈でした。しかし冒頭の原告側の主張を映像化したものがあまりにも恐ろしい映像だったのも事実です。
ただ、よくこの話を映画化したなぁと驚きました。この事件の関係者たちはこの映画をどういうふうに感じているのでしょう。少年は30歳前後ですし。
問題提起の映画と見るなら難易度が高すぎてこれはきついか
今年150本目(合計1,691本目/今月(2025年6月度)13本目)。
内容そのものは何ら行政書士持ちとは関係のない映画なのですが、展開が見事なまでにそれら試験で学習するような内容がどんどん出てくるので、ある程度の知識がないと理解で詰まるというタイプかなという印象です。ドキュメンタリー映画ではないですが、実際の事件を参照にして作られているため、一部ドキュメンタリー映画という側面もあり、また実際の裁判展開などは原則そのままなので(あまりに難しい内容はカットされている)、ここの知識で、問題提起型の映画とは考えても理解にかなり差がでます。
そこそこの理解を要求する映画なので、ある程度理解の助けになる部分は以下に書いておきます。
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(減点0.8/内容がそこそこ高度であり理解が難しい)
法律系ネタ映画といえば、「シャイロックの子供たち」(不動産登記法ほか。行政書士のお隣の司法書士という職業が扱う不動産の登記を扱う趣旨)を頂点に難易度高めな映画が多いですが、こちらの作品もなかなかで、一般のテレビ他の刑事ドラマで扱うような内容ではないので(後述)、かなりの理解が求められます。ある程度の知識がないと「理解の面において」返り討ちにされそうな気がします。
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(減点なし/参考/映画内で描かれている展開全般について)
まず、大半を占める裁判に関する部分は、国家賠償法によるものです(行政事件訴訟法ではない)。このため、民事訴訟法の適用があります(※)。この点、民訴法までフルフルに理解するのはそこそこ難しく(行訴法は規定が少なく、「規定がないものは民訴法による」とあるため、資格持ちはある程度は知っている程度)、そもそも「民訴の話か刑訴の話か」の部分で理解がつまります。
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(※) 国家賠償訴訟は、国・都道府県等の違法な行為や不作為(知っていて状況を放置すること。例えば、薬に重大な副作用があることを知っていてそのまま放置する等)に対して国の責任を問う意味で、「行政と個人との関係での裁判」になりますが、適用されるのは、私人間のトラブルを解決する民事訴訟法です。
(参考/国家賠償法4条)
国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。
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ラスト以降の採決による取消しは、これはわかりにくいですが、行審法(行政不服審査法)になります(こちらも行政事件訴訟法ではない)。この部分はかなりマニアックで、行審法自体を深く扱うことが一般の方は少ないし、不服のあるものは行政事件訴訟法で争えますから(行審法による採決の取消しは、行政機関による「準司法作用」にあたりますから、それを終審とすることは禁止されます(換言すれば、不服があるものは必ず裁判所による裁判を受けられる。日本国憲法参照))、ここはきちんとした理解がないと詰まるのですが、実はこの法律はその事情があるため(不服があるものは行政事件訴訟法で争えるため)、行審法「のみ」を扱った最高裁判例は数が極めて少なく(地裁・高裁判例も少ない)、条文をひたすら暗記するだけのドライな分野です。
このあたり、一般的な刑事ドラマで扱う内容ではおよそないし(見たことがない)、全般的に内容がどうみても行政法分野に偏りすぎで、理解が難しいかなぁ…(資格持ちにとっての常識は、そうでない方の常識ではおよそない。ズレているケースが大半)といったところです。
かといって、国家賠償法は時々ニュースで取り上げられる一方で行審法が出てくることはレアであり(2025年6月時点の、日本郵便に対する配達トラック等の使用禁止は、行政処分であり、これは「行政手続法」という別の法律から発動する「不利益処分」。混同注意)、こりゃまぁ6月も終わりかけのところで超マニア展開だなぁ、といった印象です。
少なくとも、
・ 民事訴訟法と刑事訴訟法の違い(常識ライン)
・ 国家賠償法とは何か
・ 裁判所とは異なる「行政不服審査法」に基づく「審査会」といったものがあること
…等は頭の中に入れておかれたほうが良いかなと思います。
(減点なし/参考/被害者が、教育委員会の個人を訴えることはできるか)
この点触れている方もいらっしゃいますので触れておきます。結論からいうと「不可能」です。
これらの職員は公務員ですが、公務員の職務に対するトラブルは個人を被告にとって裁判を起こすことはできません(業務と離れて、自宅でアルコールトラブルで人を殴った等は、単なる個人間トラブルなので民事訴訟で争うことは可能)。これは、国・地方自治体が公務員を雇用している以上、その公務員個人ではなく、その雇用した国等が「責任を代位する」という考え方であり(「代位責任説」というもの)、これにより、公務員の軽微な過失まで問われないようになっています(このことは重過失・故意であっても同じ。あくまでも責任を取るのは雇用主である国・地方自治体。もちろん、故意によるものは裁判の確定とともに、責任を取って辞職してね、ということはあり得ます)。
本当の悪は教育委員会にいる
子ども同士のケンカでも、子ども自身によるケガでも、学校の対応が気に入らないと教育委員会に訴えたり、裁判による解決をチラつかせたり、実際にそうしたりする保護者は普通に存在する。氷室母のように、幼少期にネグレクトがなくても、虚言癖がない人間でもだ。また、よく調べもせず、教員に聞き取りをしても、結局は親の言いなりになる教育委員会も存在する。例え匿名であったとしても、「知らない人が呟いているんだよ」という、ACジャパンのCMの決め付けデカのように。訴えられた方が悪いという考えでは、子どもにも、同僚にも満足な指導は出来ない。校長や教頭が事なかれ主義の人のように描かれているが、問題を早期に解決させないと、再任用や校長昇任にも影響する。その評価をするのは教育委員会だからだ。本当にマトモで熱心な教員ほど被害者になり、学校を去っていく構造を、教員委員会が作っている。本作では、氷室親子の訴えを鵜呑みにし、薮下の声をしっかりと聞こうとしなかった教育委員会の責任は重い。トカゲの尻尾切りは、政治や企業のトップだけではない。10年後に停職処分が取り消されるが、教育委員会が守りたいのは、学校や教員、子どもではなく、自分たちの立場だったのではないか。薮下だけでなく、教え子も被害者であることを、教育委員会は分かっていないのではないか。薮下が教育委員会を相手に訴訟をしたら、氷室親子に支払った300万円の10倍は取れるだろう。
この映画は、全国の教育委員会の教育長に見てほしいと思う。
ピノキオ、アンパンマン、ミッキーマウス
火付け役は朝日新聞である。平成15年6月27日の西部本社版に、「小4の母『曽祖父は米国人』教諭、直後からいじめ」という大きな見出しが踊った。その時点ではまだ、単なるローカルニュースに留まっていた。
これを一気に全国区にのし上げたのは、同年10月9日号の「週刊文春」である。
「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』」。目を剥くようなタイトルと教師の実名を挙げての報道に全国ネットのワイドショーが一斉に飛びつき、連日、報道合戦を繰り広げる騒ぎとなった。
(以上、新潮文庫の原作ドキュメンタリー『でっちあげ』の冒頭から抜粋。)
このモンスター母の証言は矛盾だらけでアメリカ人というのも曽祖父だったり祖父だったり、コロコロ変わる。
原作を読む限り、下記のようなことが客観的に確かめられている。
①原告のモンスターペアレンツは虚言癖と言えるほど、平気でバレるような嘘をつく
②校長、教頭ともモンスターペアレンツの剣幕に押され、苦情内容の事実検証を行うことなく、穏便に事態を済ませることしか考えない無能な事勿れ主義者
③PTSDの診断をした医師のCAPS検査はかなり杜撰でPTSDの判断自体が誤り
④各種メディアとも書きっぱなし、放映しっぱなしで、のちに検証や謝罪を行なっていない(冤罪を受けた教師への直接的な謝罪だけでなく、他の保護者へのヒアリングなど基本的な裏付けも行わないまま、センセーショナルに煽るような報道を行なったことへの公的な検証結果の振り返り報道等はたぶんなされていない)
この映画は、自分が社会的にどの程度他者への影響力があるのか、自分が身の処し方を間違えたらどのような悪影響をどう広げてしまうのか、という認識や自覚によって、何をどう戒めとして受け取るのか、相応に変わってくると思います。
※原作に出てくる体罰三種
ピノキオ…鼻をつまんでぐいぐい引っ張る
アンパンマン…両方の頬をグリグリする
ミッキーマウス…両方の耳を引っ張り宙に浮かす
校長、教頭、杜撰な医師、無責任に煽った記者…
「さて、ピノキオ、アンパンマン、ミッキーマウス。
お前はどれにする?」
将来、閻魔大王からそう選択を迫られることになるかもしれないですね。
映画の演出として、ひとつ気になったこと。
モンスターペアレンツの家庭訪問の時と別の保護者宅でインターホンを鳴らした時。どちらもあんな暴風雨は必要無かったと思うのですが…こんな異議は監督から却下されるのかしらん。
「正義」の名のもとに
作品は裁判のシーンから始まる。原告の意見陳述、そして被告の意見陳述と。当然主張は真っ向から対立するからその内容は相反するもの。その極端に異なるさまを演者が見せてゆくあたりが映画としてうまい。
原告側の主張である「殺人教師」を演じる綾野剛の魚の死んだようなうつろな目から受ける印象はいじめを受けている児童とシンクロするくらいにゾッとさせられる。明らかに児童側が一方的な被害者というイメージを観客に植え付ける。
そして転じて被告側薮下の主張を基にしたエピソードがつづられていく。そこには「殺人教師」とは程遠い善良な教師の姿が。この役どころの演じ分けは役者冥利に尽きるだろうし、観客も綾野剛の演技力を堪能できる。本作はそのショッキングなテーマもさることながらまさに綾野剛の芝居に魅了され続ける二時間と言える作品である。彼の芝居の凄さに思わず涙した。
監督の作品の出来は当たりはずれがあるので心配していたが、序盤から当たりの方だと確信したので安心して鑑賞できた。後は座席に身を任せて役者陣の素晴らしい演技を堪能するのみ。
原作はルポルタージュで読みやすくななめ読みしただけだけど、忠実な映画化だと思う。ただ、映画を盛り上げるためか柴咲コウ演じる律子を殊更に危険な人間として描きすぎ、薮下を善良に描きすぎな気もしないではないが、原作によるとご本人も映画に描かれた通りのかなり生徒思いの先生だったことは間違いないようだ。土砂降りの雨の中に突っ伏すあたりはやりすぎな気もするけど。
本作で描かれた事件は二十年以上前のものだが、まさに今の現代社会で日々起きていることを連想させる。
たとえば本作で描かれた事件を全く知らない状態で新聞やネットで「教師による生徒へのいじめ、自殺強要か」という見出しの記事を目にしたら人はどのような反応を示すだろうか。
私を含めて多くの人がなんてひどい教師がいたものだ。子供がかわいそうだ。こんな教師はすぐさまクビにしろという思いを抱くのではないだろうか。そのセンセーショナルな見出しに気を取られてこれは本当のことなんだろうかと疑問を抱く人は少ないのではないだろうか。それだけこの見出しが人の中にある正義感バイアスを引き出すからなんだろう。
誰もが持つ正義感。それは時としてもろ刃の剣となる。その剣が正しい方向に向けられれば正義は成し遂げられ、間違った方向に向けられれば罪のない人を不幸にもする。本作の教師薮下のように。しかし価値観の多様性が叫ばれる中でこの「正義」というものさえ、いまは相対化されている時代ではある。
人がバイアスを持っているのは進化の過程で身に着けてきたものであり、それが生存には不可欠なものだったからだ。人間の脳内での情報処理には限界があり時には直観に頼る判断が求められる。災害時に過去の経験からその場を離れて九死に一生を得るような感じで人間は生き延びてきた。そんな一見合理的でない直観的判断を人間は生き抜くうえで身に着けてきた。だから人間は生きていくうえでバイアスをけして避けられない。
直観的判断は時には有益な面もあるがそれは弊害ももたらす。確証バイアス、先入観、同調圧力などといったバイアスにより冤罪は生み出されてきた。
本作で薮下を糾弾した報道陣、彼を訴えた弁護団には確証バイアスがかかっていた。また被害者のPTSDの検査をした医師も同様に。
本来守られるべき子供を守るべき教師が虐待していたという許しがたい事実。彼らは皆が正義感に燃えていて、薮下が「殺人教師」であることを信じて疑わなかった。それは先述の記事の見出しを読んで我々が抱いた印象と同じく。
クレーマーの保護者が嘘をついてるとは露ほども思わない。バイアスにより自分たちが信じた事実を反証するような証拠や証言は無意識に排除されてしまう。
これがいかに難しい問題なのか、彼らは自分たちがしていることが正義と疑わない。正義のためならどんなことでもして見せる。550人もの大弁護団結成がその証拠だ。彼らはほとんどが手弁当であり報酬目的ではない。人権派弁護士として社会正義をなすためにここに集まったのだ。それは正義感に燃えて薮下を取材していた記者も同じだった。
そしてアンケートに答えた生徒たちも薮下による体罰があったと公表された後でそれに答えたために同調圧力や先入観が加わり八割近くもが彼の体罰を肯定した。これらのバイアスが合わさり薮下を追い詰めていった。
思えば陳腐な出来事だ。ただの虚言癖のある主婦による噓が全ての発端なのだから。確かに学校側が毅然とした態度で臨まず、事なかれ主義で薮下に全面的に非を認めさせて安易に事を治めようとしたことも原因の一つだが、その後のマスコミの加熱報道、そして弁護団の圧力による教育委員会の初の教師によるいじめの認定がお墨付きを与えてさらに火に油を注いだ。そして被害児童のPTSDという噓が加わり訴訟へと薮下をさらに苦しめた。
これは今ではSNS上に流されるデマが発端になりネットリンチが行われたり、陰謀論など誤った事実により世論形成がなされる現代社会の姿そのものだ。
この事件は20年以上前の出来事だが薮下の家の前に群がる報道陣や無数に張られた中傷ビラはまさにネットの書き込みそのものを連想させる。
当時から報道被害により人生を奪われる人はいたが、いまではそんな報道の役割をSNSが担っている。マスメディアは噓ばかりでネットにこそ真実があるらしいから。
ネットの情報は匿名で流されるためさらに深刻な事態になっている。報道機関が誤報などした場合は責任の所在がはっきりしてるがネットはその匿名性から誹謗中傷の歯止めが効きづらく誰もが「正義」を気軽に振りかざしやすい。今の時代、日々多くの「殺人教師」が生み出されている。
本作はただの異常なクレーマーにより一人の人間が陥れられた恐怖というだけではなく、そのクレーマーによりなぜここまで被害が拡大したのか。周囲の人間たちがなぜこうも巻き込まれてしまったのか、これは現代社会において普遍的な意味を持った事件と言えるだろう。
近年立て続けに報道される冤罪事件、その実態を知らされてそのあまりのことに驚かされる。本作とは違い刑事事件が主なものだが根底には同じ問題が潜んでいる。
検察は自分たちの思い描いたシナリオ通りに捜査を進める。容疑者を特定してその容疑者が犯人である証拠だけを集め犯人ではないという証拠は無視をする。典型的な確証バイアスだ。裁判手続きにも不備が多く検察側が入手している無実を証明する証拠を弁護側が強制的に開示請求できる法律も存在しないから、無実の証明が困難になる状況にありそれがより冤罪を増やしている。
日本で冤罪が繰り返されてきた原因の一つに冤罪が裁判で確定されてもその事案について再調査されることはないのだという。冤罪を作り出した検察もけしてその事件を振り返ることもなければ、再発防止の措置も取られないのだ。これでは同じことが当然繰り返される。
村木事件、プレサンス事件、大川原化工機事件など相変わらず検察は冤罪を世に生み出し続けている。これではいつ誰が冤罪の被害者になるか。いつ自分が薮下になるかわからないのだ。
さすがに法律家の間で冤罪被害防止のための組織イノセントプロジェクトジャパンが発足されてはいるがこれは民事事件まではカバーしていない。
その取り組みの中ではどんなに優秀な法律家でもバイアスがかかることから、必ず一方的な証言だけを鵜吞みにしない、客観的な事実を集める、思い込みをしてないか常に自分に問うなど、法律家自身がバイアスにかからないように防止策が練られているという。しかし検察側がそのような取り組みをしているということは聞かれない。
本作の事件で大きな役割を果たした報道各社も同様に本来彼らは報道の真実性を担保するためにダブルチェックを怠らなかったはずだが、購買部数やら視聴率競争にさらされて本来の義務を怠った。この経験を生かして猛省されるべきだろう。
この事件に大きくかかわった報道や法律家たちには自浄能力は期待できてもやはり深刻なのはこれからも予想されるSNSによる被害だろう。匿名性やら法規制が及ばないネットの世界では今後も薮下のような被害者が生まれ続ける。法による規制強化が待たれる。
本作はその取り上げたテーマもさることながら、550人の弁護団というもはや強大な権力に匹敵する相手にたった一人の弁護士だけを味方につけた被告が勝利を勝ち取るまでを描いた闘いの記録でもあり、最終的には教育委員会による日本初の不名誉である教師によるいじめ認定が取り消されるまでを描いていてその得られるカタルシスも大きいものである。エンターテインメント作品としてもすぐれた作品だった。
柴咲コウが怖い
当事者でも無い連中が誰かの金儲けや悪意の元書かれた情報を鵜呑みにして
正義を掲げて見知らぬ誰かを叩く
その異常性をもっと皆、理解した方がいい
2025年現在も似たような騒動は常に起こるけど
情報ってヤツは疑え
映画については柴咲コウが恐ろしい
何故そんな事をするのかが一切明かされないからマジで不気味過ぎる
最後の陳述は原文そのままなんだろうか?
面白かったけど
映画館でやる必要あったのかは疑問?
まぁでも二時間ドラマなんかでやったら
その辺のドラマに埋もれちゃうから
そういう意味では映画館でやらないといけない作品なのかもな
間違った情報を流し続けたメディアも
間違った情報を鵜呑みにして嫌がらせを続けた善良な一般人も
特に反省も後悔もしないまま
今後も次の攻撃相手を探し続けては同じ事を繰り返すんだろうな
これじゃない感!!
原告のサイコ女への制裁を期待してたけど、まさかの制裁ゼロ!!!
たぶん観客の8割は、あの女ぶち〇したいと思ったんじゃないかな?
保護者へも先生へも配慮した無難な終わり方だったね。
ノンフィクションに拘りすぎか?サイコ女の正体とか結局わからんかったし、勝手に映画内で素性の決めつけはできないってわけか。
全316件中、241~260件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
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